医療ニュース

2013年7月10日 水曜日

2011年2月2日(水) 夜間の明るい照明が高血圧や糖尿病のリスク

 日没から夜間にかけて明るい人工照明にさらされると、睡眠の質が低下し、高血圧や糖尿病のリスクが増大する・・・

 これは、米国ブリガム&ウィメンズ病院のJoshua Gooley氏らの研究内容で、医学誌『Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism』の2010年12月30日号(オンライン版)に掲載されています(注参照)。

 研究では、18歳から30歳の健常者116人を、照明が明るい部屋のグループと暗い部屋のグループに分けて、5日連続で就寝前の8時間、各部屋で照明に曝露してもらっています。部屋滞在中は、睡眠に関わる脳内ホルモンであるメラトニンのレベルを30分から60分おきに調べています。

 その結果、明るい部屋のグループでは、暗い部屋のグループに比べ、メラトニン産生時間がおよそ90分も短いことがわかりました。さらに、就寝している時間も明るい照明を曝露した実験では、照明がないときに比べてメラトニンの産生が50%以上抑制されていることがわかりました。

 メラトニンは、脳の松果腺(松果体)で夜間に産生されるホルモンで、睡眠をつかさどり、さらに血圧と体温の調節に関わることが知られています。

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 この研究では、夜間の人工照明がメラトニン産生を低下させることを明らかにしているだけですが、メラトニンの分泌が不十分であれば高血圧や糖尿病のリスクになることが以前から知られています。また、メラトニンの産生低下は、ガン(特に乳ガン)のリスク上昇につながることが指摘されています。

 ということは、夜間、室内灯に長時間さらされるシフト勤務者は、こういった疾患のリスクにさらされているということになるのかもしれません。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「Exposure to Room Light before Bedtime Suppresses Melatonin
Onset and Shortens Melatonin Duration in Humans」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://jcem.endojournals.org/cgi/content/abstract/jc.2010-2098v1?maxtoshow=&hits=
10&RESULTFORMAT=&author1=Joshua+Gooley&searchid=1&FIRSTINDEX=0&sortspec=
relevance&resourcetype=HWCIT

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2013年7月10日 水曜日

2011年2月4日(金) 1日1万歩で糖尿病のリスクが低下

 毎日1万歩歩けば週5日3千歩歩くより糖尿病のリスクが低下する・・・

 オーストラリアでウォーキングと糖尿病の関連性についての研究がおこなわれ、このような結果がでたようです。詳細は医学誌『British Medical Journal』2011年1月13日号(オンライン版)に掲載されています(注1参照)。

 この研究では、オーストラリアの成人男女592人が対象とされ、2000年及び2005年に調査がおこなわれています。対象者は調査開始時に健康状態に加え食生活や生活習慣をチェックされ、万歩計が与えられています。

 5年間の経過観察をした結果、1日の歩行数が多ければ多いほど、BMI(注2)もウエスト/ヒップ比も小さく、またインスリン抵抗性(注3)が良好であることがわかりました。これらは、食生活、喫煙、飲酒などの影響を取り除いた後でも同様の結果となっています。

 具体的には、毎日1万歩を歩けば、1日3,000歩を週に5日歩く場合に比べ、インスリン感受性が3倍向上することが算出されたとのことです。

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 1日1万歩と言われてもウォーキングに馴染みのない人にはわかりにくいと思いますので少し解説してみます。

 おおまかに言えば、やや早歩きの状態で1分間に80メートルくらい歩くことになります(分速80メートル、時速なら4.8キロメートル)。歩幅は性別や身長で差が出ますが、だいたい65cmくらいとすると、1分間に123歩歩くことになります。85分間この歩幅・スピードで歩いたとすると10,455歩となりますから、やや早歩きで1万歩歩くにはおよそ85分間のウォーキングをすればいい、ということになります。

 ついでに消費カロリーもみてみましょう。時速4.8キロメートルでウォーキングをすれば消費カロリーはだいたい1分間で3.5Kcal程度になることがわかっています。85分間このスピードでウォーキングを続けると297.5Kcal(≒300Kcal)となります。

 だいたい白いご飯1杯やや軽盛りで300Kcalですから、1日1万歩=85分のウォーキング=ご飯1杯のダイエット=糖尿病予防、と覚えてみてはいかがでしょうか。

(谷口恭)

注1:この論文のタイトルは、「Association of change in daily step count over five years with insulin
sensitivity and adiposity: population based cohort study」で、下記のURLで全文を読むことができます。

http://www.bmj.com/content/342/bmj.c7249.full?sid=a40271ba-dc39-4cb4-9172-ae2b9280eacf

注2:BMIはBody Mass Indexの略で、体重(キログラム)を身長(メートル)の2乗で割って算出します。例えば、体重88キログラム、身長2メートルの人であれば、88÷2の2乗=88÷4=22となります。

注3:インスリン抵抗性とは、わかりやすく言えばインスリンの効きやすさ(効きにくさ)のことです。糖尿病(もしくは糖尿病予備軍)の人は、せっかくインスリンが分泌されても(あるいはインスリンを注射しても)血糖値がなかなか下がってくれません。今回の研究では、しっかり歩けばインスリンがよく効いて血糖値が下がりやすくなる、といっているのです。

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2013年7月10日 水曜日

2011年2月4日(金) 2月3日は「不眠の日」

 2月3日は日本記念日協会が認定する「不眠の日」だそうです。同協会は毎月23日も「不眠の日」に認定しているようで、ということは、今月(2月)は不眠の日が同月に2回もあることになり、なんだかありがたみがないような気がするのですが・・・。

 2011年2月3日、エスエス製薬が「睡眠改善委員会」というウェブサイトを立ち上げました。このサイトでは「かくれ不眠」という言葉が使われており、同サイトによりますと、「慢性的な不眠ではなく、専門的な治療をする必要はないけれど、睡眠に悩みや不満を抱え、日常生活に影響がある」ような不眠のことをいうそうです。

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 「睡眠改善委員会」のURLは、http://www.brainhealth.jp/suimin/ です。

 同サイトには、「かくれ不眠チェックシート」なるものもありますので、関心のある方は一度試してみればいかがでしょうか。

 このサイトはエスエス製薬によるものであり、「かくれ不眠」とは”専門的な治療をする必要はないけれど”とありますから、(穿った見方をすれば)同社の睡眠改善薬「ドリエル」の宣伝ツールなのかな、と感じてしまいますが、そうであったとしても多くの人に睡眠に関心を持ってもらえるのはやはりいいことだと思います。

(谷口恭)

参考:
はやりの病気2010年10月号 「新しい睡眠薬の登場」
医療ニュース:
2008年6月30日 「睡眠不足はダイエットの強敵!」
2010年4月2日 「睡眠障害の自殺リスクは28倍」
2010年9月14日 「男性の睡眠不足は短命に・・・」
2010年11月4日 「睡眠不足は脂肪を蓄積」

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2013年7月10日 水曜日

2011年2月14日(月) 新規エイズ患者がまたもや過去最多

 厚生労働省のエイズ動向委員会は2月7日、2010年のHIV新規感染者、エイズ発症者などを発表しました。

 同省によりますと、新たにエイズを発症した患者(HIV感染が発覚したときにすでにエイズを発症していた患者、いわゆる「いきなりエイズ」)が453人で過去最多となります。2008年と2009年はいずれも431人で過去最多でしたが、2010年はさらに増えて記録を塗り替えたというわけです。

 まだエイズを発症していないHIVが新たに判ったケースは1,050人で、2009年の1,021人より増加しています。(2008年は1,126人)

 保健所などでの無料抗体検査を受けた数は130,930件で、2009年は150,252件ですから約13%減っています。2008年は177,156件ですから、2年間でみると実に26%も減少していることになります。

 感染経路は同性愛の性的接触によるものが63%と最多ですが、異性間での感染も少なくはなく、さらに「不明」としているものも目立ちます。また、2010年は4年ぶりに母子感染が2例報告されています。母子感染は適切な対策で防げるはずなのに、です。

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 上記をまとめると、①検査数や相談数が大きく減少、②新規感染者は微増、③いきなりエイズは過去最多、④4年ぶりに母子感染が発覚、となり、いかに、HIVに対する関心が薄れているかということがわかります。

 実は最近、当院でも2010年にHIV感染が発覚したケースをまとめてみたのですが、なんと新たにHIV感染が判った症例の半数以上が、検査のときに「患者さん自身はまさか自分がHIVに感染しているとは思っていなかった」というケースです。つまり、原因不明の皮疹、リンパ節腫脹、かかっている病気がなかなか治らない、などの理由で、こちらからHIVの検査の必要性を説明し同意を得て検査をおこなったというケースなのです。

 当院では2007年と2008年は、患者さんの方から「HIVの検査をしてください」といって感染が発覚するケースの方が多かったのですが、2009年にはちょうど半数が「患者さんが希望したのではなくこちらから検査をすすめたケース」で、ついに2010年にはこの割合が過半数を超えたというわけです。

 さらに(関心が薄れていることとは無関係かもしれませんが)、HIVに対する誤解・偏見は一向に改善されていません。何らかの理由でHIVの検査をすすめても、「陽性であれば結果を受け入れられない」「検査を受ける決心がつかない」などの理由で、患者さんが拒否するケースも依然として少なくありません。

(谷口恭)

注:厚生労働省の公表した内容は下記のURLで参照できます。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r985200000121rr.html

参考:医療ニュース2010年2月17日「検査件数減少で新規HIV感染者も減少」

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2013年7月10日 水曜日

2011年2月16日(水) 米国農務省のガイドラインでも厳しい塩分摂取

 AHA(American Heart Association、米国心臓協会)が発表した行動勧告(call to action)では、1日あたりの塩分摂取は3.81グラム未満とされているという衝撃的なニュースを先日お伝えしましたが、今度は米国農務省(USDA)が「米国人の食生活ガイドライン(Dietary Guidelines for Americans 2010)」を発表しました(注1)。

 そのガイドラインによりますと、1日あたりの塩分摂取量は5.84グラムとなっています(注2)。しかし、51歳以上の男女、すべての黒人、高血圧、糖尿病、慢性腎疾患を有しているすべての年齢の男女は3.81グラム未満とすべき、とされています。年齢、人種、現在のアメリカ人の高血圧などの有病率を勘案すると、全アメリカ人のおよそ半数が3.81グラム未満にしなければならないことになるそうです。

 このガイドラインをざっと通して見てみると、野菜・果物をたくさんとりましょう、砂糖は避けましょう、脂肪の摂り過ぎに注意しましょう、といった常識的に考えて納得しやすいことばかりが書かれていますが、この塩分の厳しい上限値には驚かされます。

 このガイドラインには現在の米国人の平均塩分摂取量が年齢・性別ごとに紹介されているのですが、例えば30代男性でみると、上限であるはずの5.84グラムのほぼ倍量を摂取していることがわかります。また、平均的な米国人は8.64グラム摂取しているとの記載もあります。

 参考までに、日本の厚生労働省が定めている1日あたりの塩分摂取量は男性で9グラム、女性で7.5グラムです。また、日本高血圧学会など生活習慣病に関する学会の多くは6グラム未満を推奨しています。一方、日本人の実際の塩分摂取量は1日あたり11~12グラムと言われています。

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 結局のところ、アメリカ人も日本人も推奨される塩分のラインを大きく超えて摂取しているのが実情であり、高い目標を掲げること自体は簡単ですが、目標に到達するにはかなりの努力が必要になります。

 健康な食事の代表のように言われている和食は、「塩分」という観点でみればよほど注意して料理しない限りは不合格となります。漬物、味噌、醤油などを普通に摂れば、6グラムなどすぐに超えてしまいます。米国のガイドラインの3.81グラムなど、和食を食べるなら塩分控えめで体にいいとされているメニューを選んだとしても、おそらく1食だけで上限ギリギリくらいになってしまうはずです。

 いったい我々は何を食べればいいのでしょうか・・・。

(谷口恭)

注1:このガイドラインは下記のURLで全文を読むことができます。
http://www.cnpp.usda.gov/Publications/DietaryGuidelines/2010/PolicyDoc/PolicyDoc.pdf

注2:原文では、ナトリウム2,300mgとなっています。ナトリウムと塩分の換算式は、ナトリウム量(ミリグラム)×2.54÷1000=食塩相当量(グラム)です。(この場合、2,300x2.54÷1,000=5.84となります)

参考:医療ニュース2011年1月23日「米国の塩分摂取基準は1日3.81グラム未満!」

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2013年7月10日 水曜日

2011年2月21日(月) リンゴ病がアウトブレイク!

 ほっぺたがまるでリンゴのように赤くなることから名づけられたリンゴ病、正式には伝染性紅斑と言いますが、この感染症が4年ぶりに猛威を振るっています。

 国立感染症研究所の発表によりますと、1月24~30日の全国約3千ヶ所の小児科定点からの報告が2,008人で、これは昨年(2010年)の同時期と比べて約6倍になります。前回流行したのが2007年ですから4年ぶりということになります。(その前は2002年に流行しました)

 リンゴ病は子供のありふれた病気でたいしたことがないと思われがちですが、実は成人に感染すると重症化することもあります。特に関節痛と高熱が強くなり、数日間寝込まなければならないという場合もあります。特効薬はなく、解熱鎮痛剤を飲む以外に対処方法はありません。
 
 皮膚症状としては、ほっぺたが赤くなる以外に腕や太ももに特有の皮疹がみられます。(これは「レース状」と表現されますが、実際には様々なかたちをとります)

 また、妊婦さんに感染すると流産や早産のリスクが増大することが知られています。

 リンゴ病は通常の風邪と同じように飛沫感染しますから、日頃からうがい・手洗いが重要です。リンゴ病の流行は春から夏にやってきますから、今後しばらくの間充分な注意が必要です。尚、リンゴ病にワクチンはありません。

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 リンゴ病は子供に集団感染し、妊婦さんに感染させてはいけない感染症です。ですから、2番目の子供を妊娠中のお母さんが幼稚園に子供を迎えにいったときに感染、などといったケースには特に注意しなければなりません。

 もしもあなたの周りに妊娠している人がいれば、ただの風邪かな、と思っても充分な注意が必要です。

(谷口恭)

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2013年7月10日 水曜日

2011年2月28日(月) 低所得の高齢者はガンになりやすい?

 高齢者で所得の低い人は、所得が高い人に比べると、ガンで死亡する危険性が2倍高い・・・

 これは日本福祉大学などの研究グループがおこなった調査の結果です。(報道は2月17日の読売新聞)

 報道によりますと、この研究は、愛知県と高知県の65歳以上の高齢者で、要介護認定や、ガン、心疾患、脳血管疾患、呼吸器系疾患の治療を受けていない15,025人を対象としています。調査期間は2008年5月までで、最長4年間になります。調査開始時点にアンケートで得た、所得や教育年数などの情報と、死亡原因の関係性が調べられています。

 その結果、男性高齢者では、所得400万円以上の層に比べ、200万円未満の層では、ガンによる死亡のリスクが1.9倍高くなっています。また、教育年数が13年以上の層に対し、6~9年の層では、ガンによる死亡リスクは1.46倍高くなっています。(女性のデータについては読売新聞の記事には記載がありませんでした)

 この結果を受けて、研究者らは、「社会経済階層が低いほど、喫煙や過剰な飲酒などガンになりやすい生活習慣を持つ傾向にあり、健康意識が低い人が多い。病院にかかる金銭的な余裕がないことも重症化を招いていると推測される」と話しているそうです。

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 これは低所得がガンにつながるわけではなく、低所得の人は喫煙・過剰飲酒などガンのリスク要因を有していることが多く、また健康への関心が低いことが予想される、ということだと思います。

 低所得→ガン、と短絡的に解釈されてしまうことには問題がありますから、この手の議論をおこなうときには慎重になるべきだと思います。

(谷口恭)

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2013年7月10日 水曜日

2011年3月4日(金) 加工食品が子供のIQを低下

 脂肪分、糖分の多い加工食品を小児に与えると、知能指数(IQ)の低下をもたらす・・・

 これは、医学誌『Journal of Epidemiology and Community Health』の2011年2月7日号(オンライン版)に掲載された研究結果です。(下記注参照)

 この研究では、1991~1992年に出生した小児を対象としたイギリスの大規模研究(Avon Longitudinal Study of Parents and Children)のデータを収集し解析を加えています。3、4、7、8.5歳時の子供の食事に関する質問に親が回答し、8.5歳時に知能検査をおこないIQが測定されています。(知能検査には「ウェクスラー小児用知能検査(Wechsler Intelligence Scale for Children)」という方式が採用されています)

 食事の内容については、①脂肪、糖分、インスタント食品の多い「加工食品中心の食事」、②肉、野菜の多い「従来の食事」、③果物、野菜、サラダ、魚介類、米およびパスタの多い「健康を意識した食事」の3つに分類されています。

 その結果、3歳時に「加工食品中心の食事」を摂取していた小児は、「健康を意識した食事」を摂っていた小児に比べて8.5歳時のIQが低いことがわかりました。加工食品の摂取量が1ポイント増加する毎にIQが1.67ポイント低下したのに対し、健康的な食品の摂取量が1ポイント増加する毎にIQが1.2ポイント上昇したとされています。一方、4~7歳時の食事による影響は認められていません。

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 この研究の結論は、「子供にジャンクフードばかり食べさせると頭のいい子に育たない」ということなのでしょうが、私はこの論文を読んで、最近ミシェル・オバマ大統領夫人が取り組んでいる肥満対策「Let’s move」を思い出しました。

 オバマ大統領夫人は、子供の給食に野菜や果物を中心としたものを取り入れることに尽力しているようで、この論文がオバマ夫人の食育運動の味方になるかもしれません。

 この論文はイギリス発、オバマ夫人はアメリカですが、それでもなんとなく、医学と政治がつながっているのでは?と疑いたくなります。しかし、子供たちにジャンクフードではなく、栄養のあるものを食べてもらいたいというのは誰もが感じていることですから、私個人としてはこういった研究がおこなわれることにもオバマ夫人の行動にも賛成です。

 ところで、日本の子供の食事は大丈夫なのでしょうか・・・。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「Are dietary patterns in childhood associated with IQ at 8 years of age?
A population-based cohort study」で、下記URLで概要を読むことができます。

http://jech.bmj.com/content/early/2011/01/21/jech.2010.111955.abstract?sid=d449b678-a305-458c-a2fc-b38e7b3860d4

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2011年3月8日(火) 日本の自殺者、13年連続で3万人超

 3月3日、警察庁は昨年(2010年)1年間の全国での自殺者が、31,690人であったことを公表しました。1998年以来、13年連続で自殺者が3万人を越えたことになります。(注)

 総数は昨年を1,155人下回り、3.5%の減少ということになります。年齢別では、50代が5,959人(前年比8.2%減)と最多で、70歳代(0.1%増)を除く各世代で前年を下回っています。

 自殺の動機をみてみると、まず動機を特定できたのが23,572人。最多が「うつ病などの健康問題」の15,802人となっています。また、「就職失敗」「職場の人間関係」「仕事の失敗」の死者数が、動機別の統計を取り始めた2007年以降で最悪となっています。

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 「うつ病などの健康問題」が生じる理由に、「就職失敗」「職場の人間関係」「仕事の失敗」があることは想像に難くありません。ということは、現在の日本のこれほど悲惨な自殺状況の原因の多くが「労働環境」にあることは間違いなさそうです。

(谷口恭)

参考:医療ニュース2010年1月27日 「日本の自殺者12年連続で3万人超え」

注:厚生労働省のデータでは3万人を割っている年もあります。これは警察庁と厚生労働省で自殺者数のカウントの仕方が異なることが原因です。厚生労働省は、「死亡届」を基に人口動態の統計を取るのに対し、警察庁は、死亡届が出された後に、自殺と判明したケースも「自殺者」に含めます。

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2013年7月10日 水曜日

2011年3月11日(金) 日本の女子中学生の1.9%が摂食障害

 女子中学生の100人に2人は治療が必要な深刻な摂食障害である・・・

 これは厚生労働省の研究班が2011年3月1日に公表した内容です。(報道は3月2日の共同通信など)

 研究班は、2009年~2010年、関東地方と中国地方の36の中学の男女生徒約8千人を対象として調査をおこなっています。体形や食事への意識など合計28項目を尋ね、5,161人から有効回答を得ています。(女子2,604人、男子2,557人)

 その結果、女子の1.9%、男子の0.2%が、治療が必要な深刻な「摂食障害」と判断されたそうです。

 やせることを目的とした行為を具体的にみていくと、「下剤の使用」が女子1.1%、男子0.7%、「口に手をつっこんで吐いた」が女子1.4%、男子0.9%、「食事を抜いた」が女子3.6%、男子2.6%、「過度の運動をした」が女子6.8%、男子3.8%となっています。(いずれも過去4週以内に2回以上という条件での回答です)

 また、「むちゃな大食いを直近の4週間に8回以上した」女子は3.5%、男子は1.3%だったそうです。

 研究者によりますと、「摂食障害」と判断された女子の特徴として、①夜遅くまで起きている、②家族との食事は楽しくない、③家族から「もう少し痩せたら」と言われる、④気持ちを本当に分かってくれる人は誰もいない、などに当てはまる傾向があるそうです。

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 日本の摂食障害者の割合はときどき発表されていますが、1.9%というのは過去最高ではないでしょうか。この研究では中学生が対象とされていますが、私の印象で言えば、増えているのは中学生だけでなく、小学生や30代以降にも目立ちます。つまり、全体の総数が増えると同時に、低年齢化と高年齢化が同時に進行しているのです。

 それにしても摂食障害は本当にむつかしい病だと思います。まず「治さなければならない」と認識してもらうのに時間がかかり、やっと治そうという意識ができて精神科クリニックを紹介しても、「やっぱりダメでした・・・」と言って戻ってくる患者さんがいかに多いか・・・。

 摂食障害が怖いのは「死に至る病」だからです。最善の方法ではないかもしれませんが、小学校低学年のときに、「拒食症や過食症というのはとっても怖い病気なんですよ」ということを教育の現場で教えることが必要ではないかと私は考えています。

(谷口恭)

参考:はやりの病気第38回(2006年10月) 「本当に恐ろしい拒食症」

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