医療ニュース

2013年7月14日 日曜日

2010年11月4日(木) 妊娠中のDHA摂取で早産リスクは低減するが・・・

 DHA(ドコサヘキサエン酸)が健康にいいと言われて随分長い年月が過ぎたように思われます。DHAは魚油に含まれる不飽和脂肪酸で、サプリメントとしても広く摂取されています。

 DHAは中性脂肪(TG)を減少させることが分かっており、結果として心筋梗塞など心血管系疾患の予防となります。日本や南欧で心疾患が少ないのは、青身の魚をよく食べることでDHAがたくさん摂取できているからではないかとしばしば言われます。

 妊娠中にDHAを多く摂取すると早産が少なくなる・・・

 これは、医学誌『JAMA』2010年10月20日号に掲載されたオーストラリアの研究です(注)。

 もちろん、これはDHAの有用性を示した”嬉しい”研究ではありますが、この研究のメインは他のところにあり、こちらは”残念な”結果に終わっています。それは、

 妊娠中にDHAをたくさん摂取しても産後うつ病や子供の認知力向上には関係しない・・・

 というものです。今回の研究では、妊娠21週未満の女性2,399人を対象とし、DHA800mgを含有する魚油サプリメントを毎日摂取するグループと、DHAを含有しない植物油カプセルを摂取するグループに分け、出産まで摂取を継続してもらっています。そして出産後、客観的な指標を用いて、母親のうつのレベルと出生時の認知力を調べています。

 その結果、母親のうつ、子供の認知力ともに有意な差は認められなかったそうです。

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 この研究をみて、まず私が感じたのは、魚油をたくさん摂る地域(日本や南欧など)では、産後うつが少ないとか、生まれてくる子供の頭がいいとか、そういった疫学的調査があるのか、という疑問です。

 一方、DHAが中性脂肪を下げて心血管系疾患を予防することは分かっているのですから、妊婦さんがDHAを摂取すると心血管系のバランスが良くなり、早産のリスクが低下するというのは理にかなっています。

 これまでもDHAがうつを改善したり頭をよくしたり、といった”説”はありましたが、私には、どうも世間がDHAに過剰に期待しすぎているように思えてなりません。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「Effect of DHA Supplementation During Pregnancy on Maternal
Depression and Neurodevelopment of Young Children」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://jama.ama-assn.org/cgi/content/abstract/304/15/1675?maxtoshow=&hits=10&RESULTFORMAT=&fulltext=Maria+Makrides&searchid=1&FIRSTINDEX=0&resourcetype=HWCIT

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2013年7月14日 日曜日

2010年11月15日(月) 白いご飯で糖尿病のリスク上昇

 以前、白米を玄米に替えれば糖尿病のリスクが下がるというアメリカの研究について報告したことがありましたが(下記医療ニュース参照)、国立がん研究センターも似たような研究結果を医学誌『The American Journal of Clinical Nutrition』10月27日号(注参照)に発表しました。

 1日に白いご飯を3杯以上食べる日本人女性は糖尿病の発症率が高い・・・

 これが今回の研究の結果です。同センターは、岩手、長野、茨城、沖縄など8県在住の45~74歳の男女約6万人(男性25,666人、女性33,622人)を対象とし、1990年代の初めから5年間にわたり追跡調査をおこなっています。対象者のなかで1,103人(男性625人、女性478人)が糖尿病を発症しています。

 白いご飯の摂取量との関係を調べたところ、女性の場合、1日に茶碗3杯を食べるグループは茶碗1杯のグループに比べると糖尿病の発症リスクが1.48倍に増加しており、これが茶碗4杯以上になると1.65倍にもなるという結果がでたそうです。 ただし、肉体労働や1日1時間以上のスポーツをおこなっていれば、摂取量と発症率に関連はなかったそうです。

 また、男性の場合は、摂取量と発症率に統計学的な有意差は認められなかったものの、やはり白いご飯をたくさん食べる人は糖尿病を発症しやすい傾向にはあったようです。

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 この研究結果は世論の関心が高いためか、各マスコミも報道しています。しかし、なぜか報道に少し違いがあり、例えば共同通信は、11月12日の記事で対象者の追跡期間を5年ではなく10年としています。また、11月12日の毎日新聞は糖尿病発症のリスクを1.65倍でなく1.81倍としています。いずれもさほど大きくない差で、研究結果そのものが変わるわけではないのですが、なぜこのような報道の差がでるのか不思議です。

 ところで、この研究をみるとご飯だけが悪者のようになっていますが、パンではどうなのでしょうか。参考までに、ご飯は茶碗1杯で約250kcal、6枚切りのトースト+マーガリンでも約250kcalです。しかし、ロールパンは1個で300kcal、クロワッサンになると1個450kcalとなります。

 この研究結果に影響を受けて、ご飯1膳の朝食をクロワッサンに替えたりしてしまえば、余計に糖尿病のリスクが上がるように思えるのですが・・・。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは「Rice intake and type 2 diabetes in Japanese men and women」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://www.ajcn.org/cgi/content/abstract/ajcn;ajcn.2010.29512v1?maxtoshow=&hits=10&
RESULTFORMAT=&fulltext=white+rice&searchid=1&FIRSTINDEX=0&resourcetype=HWCIT

参考:医療ニュース2010年6月20日「白米→玄米で糖尿病のリスクが低下」

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2013年7月14日 日曜日

2010年12月6日(月) ノロウイルスが大流行

 最近、感染性胃腸炎の患者さんが増えているなと感じていたのですが、やはり統計にも表れていました。

 国立感染症研究所感染症情報センターの集計によりますと、下痢や嘔吐などの症状を呈する感染性胃腸炎の小児科定点医療機関(全国約3千ヶ所)当たりの患者報告数が、11月15~21日の週は10.64で、前週から2.94ポイント増加しています。これで5週連続の増加になるそうです。

 同センターは、今シーズンの感染性胃腸炎の原因のほとんどがノロウイルスとみています。

 ノロウイルス性の感染性胃腸炎は2006年に大流行しましたが、今年は過去10年間でその2006年に次いで多いようで、昨年の3倍程度になるそうです。

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 だいたいノロウイルス性の感染性胃腸炎は12月にピークがきます。これは気候がノロウイルスに適していることよりも、忘年会やパーティなど集団で食事をする機会が増えるからではないかと思われます。

 小児の場合は、嘔吐と下痢で一気にぐったりして点滴が必要になることが多いですから流行すれば小児科の外来はあふれることになります。成人の場合も、発熱はほとんどないものの嘔気が強く水分補給の目的で点滴が必要となることもあります。

 予防するにはもちろん手洗いの励行です。ノロウイルスはアルコールでは死滅せず、そのため医療機関やホテルなどの清掃では次亜塩素酸ナトリウムを用います。しかし、手指に次亜塩素酸ナトリウムを使用することはできませんから、感染予防は流水下での手洗いをしっかりとするしかありません。

(谷口恭)

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2013年7月14日 日曜日

2010年12月17日(金) ポリオ不活化ワクチンを求め患者団体が署名提出

 ポリオ(小児まひ)の患者団体「ポリオの会」は12月15日、ワクチンが原因でポリオを発症する問題をなくすため、「不活化ワクチン」を早期に日本に導入するよう約35,000人分の署名をまとめ、細川律夫厚生労働相宛てに提出したそうです。(報道は12月16日の共同通信)

 報道によりますと、署名提出に対応した岡本充功政務官は不活化ワクチンの導入に否定的だったそうです。

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 現在ポリオのワクチンは、「生ワクチン」といってウイルスを弱毒化したもので、市町村で無料で接種できますが(飲むタイプのワクチンです)、およそ450万人に1人の割合で、ポリオに感染したときと同じようなまひ症状が出現すると言われています。また、下痢や発熱といったワクチンによる副反応も数パーセントで起こります。

 さらに、生ワクチンは成人には接種できないという問題もあります。

 世界的な観点でみると、生ワクチンではなく、ウイルスの毒性をなくした不活化ワクチンが主流になりつつあり、世界約40ヶ国で使用されています。

 現在、HPV、Hib(インフルエンザ桿菌)、小児用肺炎球菌の3つのワクチンが無料化となる流れにありますが、なぜこの3つなのかという議論が大きくなってきています。B型肝炎ワクチン、風疹ワクチン、ムンプス(おたふく風邪)ワクチンは現在でも多くの自治体で補助がなく高額ですし、ポリオの不活化ワクチンも優先順位が高いように思われるのですが、行政はどのような基準で決めているのか不思議です・・・。

(谷口恭)

参考:
医療ニュース2010年10月27日「3つのワクチンの無料化は完全でない可能性」

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2013年7月14日 日曜日

2010年12月17日(金) ワクチン公費負担の署名は270万人

 今年(2010年)9月から約1ヶ月間に渡って、日本医師会が中心となり、全国でワクチンの公費負担を求める署名がおこなわれましたが、最終的に2,699,019人の署名が集まり、12月16日、細川厚生労働大臣に退出されました。

 (この署名は、太融寺町谷口医院の受付カウンターでもおこない、数十人の方に協力いただきました。この場でお礼申し上げます)

 署名で公費負担を求めたワクチンは、B型肝炎、インフルエンザ桿菌(Hib)、小児用肺炎球菌、ヒトパピローマウイルス(HPV)、水痘(みずぼうそう)、ムンプス(おたふく風邪)の6種類です。

 署名および要望書を手渡した日本医師会副会長の羽生田俊氏は「多くの国民が,地域や経済の格差に関係なく希望する子供すべてが公費でワクチン接種を受けられるよう望んでいる」と説明したと報じられています。また、関係者は、短期間でこれだけの署名が集まったのだから期間を延長すれば1,000万人もありうる、と話しているそうです。

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 政府は今年度の補正予算で自治体が実施するHPV、Hib、小児用肺炎球菌のワクチン接種事業に、特例交付金を設けて財政支援策を講じました。ところが、B型肝炎、水痘、ムンプスについては対象からはずされており、日本医師会はこれら3つも含めるように要望しています。

 なぜ、6つのワクチンのうち3つだけが選ばれたかについて、充分な説明があるとは言えず理解しがたいと言えます。

 さらに(私個人の考えですが)、これら6つにロタウイルスとA型肝炎ウイルスとポリオの不活化ワクチンを付け加え、また、インフルエンザや麻疹(はしか)、百日咳などは年齢に関係なく誰でも無料にすべきだと思います。

(谷口恭)

参考:メディカルエッセイ第90回(2010年7月)「理想のワクチン政策とは・・・」

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2013年7月10日 水曜日

2011年1月9日(日) 飲酒→睡眠→運転はキケン!

 飲酒後に睡眠を取ると、アルコールの吸収や分解が大幅に遅れる・・・。

 これは国立病院機構久里浜アルコール症センターと札幌医科大の共同研究により導かれた結果です。(報道は1月6日の読売新聞)

 報道によりますと、この研究は、札幌医科大で2010年3月、20代の男女計24人を対象におこなわれています。体重1キロ当たり0.75グラムのアルコール(注)を摂取してもらい、直後に4時間の睡眠をとるグループとまったく睡眠をとらないグループにわけて呼気中のアルコール濃度を計測しています。

 その結果、睡眠をとったグループの呼気中アルコール濃度は、睡眠をとらないグループのものに比べ約2倍もあったそうです。これについて研究者らは、「睡眠により、アルコールを吸収する腸の働きと分解する肝臓の活動が弱まった可能性が高い」、と分析しています。

 また、海外の研究では、「アルコール分解後、少なくとも3時間は運転技能が低下する」というものがあるそうです。今回の研究者らは、「飲酒後に、仮眠を取ったから大丈夫、と考えるのは危険。酔いがさめても、すぐには正確な運転ができない」と指摘しています。

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 飲酒後は眠たくなるという人は少なくありません。もしも飲酒後、数時間起きていて、「酔いが覚めたから車で帰ろう」とすると、運転中に眠たくなる可能性があります。一方、今回の研究が示しているように、飲酒後に眠るとアルコールが分解されずに運転技能が低下する、とすると・・・。

 結局のところ、お酒を飲んだ後は、起きていようが寝ようが、充分な時間(半日くらいは必要でしょうか)が経過するまでは運転はすべきでない、ということになります。

注:例えば、体重60キロとすると、60x0.75=45グラムとなり、これはビールであればおよそ1リットル、日本酒であれば1.6合に相当します。

(谷口恭)

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2013年7月10日 水曜日

2011年1月14日(金) 2時間以上のテレビやパソコンは心臓病のリスク

 テレビやコンピュータなどの余暇で1日に2時間以上を過ごすと全死亡と心血管疾患のリスクが大幅に高まる。しかも、そのリスク上昇は運動をしていても変わらない・・・。

 このような研究がロンドン大学より発表されました。(論文は医学誌「Journal of the American College of Cardiology」の2011年1月18日号で発表されています。下記注を参照ください)

 この研究は英国在住の35歳以上の男女4,512人(そのうち男性は1,945人)を対象としており、余暇で画面を見る時間が、2時間未満、2~4時間、4時間以上の3つのグループに分け、さらに中強度から高強度の身体活動を行っているかどうかも調べています。また、体重や、コレステロールなどの値、喫煙の有無、糖尿病や高血圧などの有無が影響を受けないように調節して解析を加えています。

 調査期間中に死亡したのは325例、心血管疾患(心筋梗塞など)に罹患したのは215例でした。これらを分析した結果、運動の有無には関係なく、画面を見る時間が4時間以上のグループは、2時間未満のグループに比べて全死亡で1.48倍、心血管疾患は2.25倍にもなっていることがわかりました。2~4時間のグループも2時間未満に比べると有意にリスクが上昇しているようです。

 この結果を踏まえて、研究者らは、心血管疾患予防のためには身体活動の改善に加え、余暇の坐位時間を制限するガイドラインを含んだ推奨を早急に行う必要がある、と提唱しています。

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 運動しているかどうかに関係なく、画面の前に長時間座っているだけで心血管疾患のリスクが上昇するというのは意外なような気もします。運動の効力を過信しすぎてはいけないのでしょう。

 尚、同じような研究結果を過去に紹介したことがあります。その研究でも、運動に関係なく長時間のテレビが寿命を縮めるという結果が導かれています。下記の医療ニュースを参照ください。

 今回紹介した論文で分かりづらいのは、何をもって「余暇」とするかです。原文では、Screen-Based Entertainment Timeとなっていますが、インターネットを使って調べ物をするような時間は「余暇」に含まれるのかどうかが分かりません。例えば、インターネットを使って夏休みに訪れる旅行先の情報を調べるのは「余暇」なのでしょうか。一方、仕事で必要な情報をインターネットで収集するのは余暇ではなく「仕事」だと思いますが、では、「余暇」と「仕事」は厳密にどうやって区別するのでしょう。

 もしも「仕事」でインターネットを閲覧することも心血管疾患のリスクになるとすれば、多くの人が仕事内容を見直さなければならなくなるかもしれません。

谷口恭

参考: 医療ニュース2010年1月25日「テレビの見すぎが寿命を縮める?」

注:この論文のタイトルは、「Screen-Based Entertainment Time, All-Cause Mortality,
and Cardiovascular Events」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://content.onlinejacc.org/cgi/content/abstract/57/3/292?maxtoshow
=&hits=10&RESULTFORMAT=&fulltext=Emmanuel+Stamatakis&searchid=1&FIRSTINDEX=0&resourcetype=HWCIT

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2013年7月10日 水曜日

2011年1月21日(金) 朝食をしっかり摂れば太る?!

 ダイエットをしたければ朝食はしっかり摂りましょう、と言われることが多いと思いますが、これに反対する研究結果がドイツの研究者らによって発表されました。

 1日のカロリー摂取量における朝食の比率は減らした方が減量につながる・・・

 ドイツ・ミュンヘン工科大学のVolker Schusdziarra氏らが結論づけたこの研究は、医学誌『Nutrition Journal』2011年1月17日号(オンライン版)に掲載されました。(注)

 この研究では、現在治療を受けている過体重および肥満者280例(男性75例・女性205例、平均年齢45歳、平均体重108kg、平均BMI36.6)に10日間食事記録をつけてもらい解析を加えています。一方、年齢や性を一致させた標準体重者100人(男性33例・女性67例、平均年齢42歳、平均体重67kg、平均BMI22.5)にも同様の食事記録をつけてもらって比較検討を加えています。

 その結果、朝食カロリー摂取量が増えるほど1日の総カロリー摂取量が有意に増加していることが分かり、この傾向は標準体重者でも同様の結果となったようです。
 
 研究者は、「朝食の摂取カロリーを抑えることが、日々の摂取カロリーバランスを改善させる簡単な方法となる」、と結論づけています。

 さらに研究者は、NWCR(The National Weight Control Registry、米国国立体重管理室)のデータでは、「減量に成功した78%が定期的に朝食を摂取しているとされているが、残りの22%は朝食を抜いて減量に成功していることから、朝食を摂取することが必ずしも減量に不可欠なわけではないことに注意すべき」、とコメントしています。

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 ダイエットの方法が語られるとき、たしかに「朝食はしっかり摂りましょう」と言われることが多いようです。おそらくこれは、「就寝前の食事は脂肪が蓄積されやすいのだから、同じカロリーを摂るなら活動前の朝食時にすべき」、という考えが前提にあるからです。

 もちろん、この考え方は正しいのですが、夕食を減らす、ということを実践できない人も少なくありません。仕事上の付き合いもあるでしょうし、食べることが好きな人は、慌しい朝ではなく時間のとれる夕食時に好きなものをゆっくりと食べたい、と考えるでしょう。

 今回の研究は、見方を変えれば当たり前のことで、昼食と夕食の摂取カロリーが変わらないなら朝食をたくさん摂ればカロリー過多になるのは当然です。

 私は、夕食がカロリー過多になりやすい患者さんに対しては、「では当日の(もしくは翌日の)朝食と昼食を加減して帳尻を合わせましょう」と助言することがありますが、これは1日もしくは2日全体でみたときの総摂取カロリーを適正にすれば、体重過多になることが防げるからです。(しかし、この方法は<乱暴な方法>であり、例えばすでに高血圧や糖尿病で治療を受けているような人には向きません)

谷口恭

注:この論文のタイトルは、「Impact of breakfast on daily energy intake – an analysis of
absolute versus relative breakfast calories」で、下記のURLで全文(PDF)を読むことができます。

http://www.nutritionj.com/content/pdf/1475-2891-10-5.pdf

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2013年7月10日 水曜日

2011年1月23日(日) 米国の塩分摂取基準は1日3.81グラム未満!

 2010年4月に改定された厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」で、塩分の適正摂取量が男性9グラム未満、女性7.5グラム未満と改定されました。これは、従来の日本人の塩分摂取量を考えれば随分と厳しい基準となっています。最近は健康志向が高まり、塩分の摂りすぎに注意する人が増えたとはいえ、それでも現在も日本人の塩分摂取量は11~13グラムはあると言われています。

 2011年1月13日、AHA(American Heart Association、米国心臓協会)が行動勧告(call to action)を発表しました。その勧告によりますと、ナトリウムの摂取目標は1,500mg未満となっています。これは塩分摂取量で言えば、1日あたりわずか3.81グラム未満ということになります(注1)。

 AHAは2020年までに全米国人の心血管障害や脳卒中による死亡を20%減らすことを目標としています。AHAのガイドラインは、心血管の健康状態を理想状態に保つには、血圧を120/80mmHg未満とし、ナトリウム摂取量を1,500mg/日未満に抑えることが重要としています。

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 食塩摂取量が増えると血圧は上昇し、高血圧が継続すれば、心血管疾患、脳卒中、腎障害などのリスクとなります。しかし、血圧の上昇は食塩摂取量を減少させることで予防することができます。いったん上昇した血圧を高価な降圧剤を服用して下げるよりも、初めから塩分を控えて高血圧を予防すれば、コストをかけずに国民が健康になれる、というのがAHAの考え方です。

 ちなみに、親子丼(並盛)を食べればそれだけで4.2グラムの塩分をとることになります。身体に優しいとされている幕の内弁当でさえも1食で4.2グラムの塩分が含まれています(注2)。ということは、我々日本人は和食を放棄しない限りは、1日あたり3.81グラム未満の塩分などというのは到底実現不可能ではないでしょうか。

(谷口恭)

注1:AHAの論文には塩分ではなくナトリウムの量が記載されています。一方我々日本人はナトリウムよりも塩分で表記する方に馴染みがあるでしょう。ナトリウムと塩分の換算式は、ナトリウム量(ミリグラム)×2.54÷1000=食塩相当量(グラム)です。

注2:どの食品にどの程度の塩分が含まれているかは、いろんなサイトでみることができますが、厚生労働省の下記のサイトがおすすめです。
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/seikatu/himan/meal.html

注3:この発表(論文)のタイトルは、The Importance of Population-Wide Sodium
Reduction as a Means to Prevent Cardiovascular Disease and Stroke:
A Call to Action From the American Heart Associationで、下記のURLで全文(PDF)を読むことができます。

http://circ.ahajournals.org/cgi/reprint/CIR.0b013e31820d0793v1?maxtoshow=&hits=10&
RESULTFORMAT=&fulltext=call+to+action&searchid=1&FIRSTINDEX=0&resourcetype=HWCIT

参考:はやりの病気第81回(2010年5月) 「慢性腎臓病と塩分制限」

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2013年7月10日 水曜日

2011年1月28日(金) マイコプラズマが急増!

 全国的にインフルエンザが猛威をふるっているようですが、国立感染症研究所の報告によりますと、マイコプラズマも急増しており、過去10年間で最多となっているようです。

 同研究所によりますと、マイコプラズマ肺炎は昨年(2010年)10月に入ってから報告数が急増し、今年(2011年)1月9日までの15週間で報告数は4,087人となっています。2010年1年間の報告数は10,333件で、いずれも過去10年間の同期比で最多となるようです。

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 まず、上記の「報告数」というのは特定の医療機関からの報告のみです。マイコプラズマの診断が付けば報告しなければならない医療機関(通常は小児科を有する医療機関)があらかじめ決められており、そこからの報告のみとなりますから、実際にマイコプラズマに罹患している人はこの数十倍から百倍以上になると考えられます。

 マイコプラズマは小児に感染すると、肺炎まで進行し入院を要することもしばしばありますが、成人の場合は咽頭炎や気管支炎にとどまることが多く高熱が必ずしもでるわけではありません。

 しかし、長引く咳に苦しめられ、夜間眠れないなど生活に影響がでてくることがありますし、咳により職場で集団感染するようなこともあります。

 マイコプラズマは、肺炎まで進行している可能性を考えれば、レントゲンを撮影しその所見だけで強く疑えることもありますし、血液検査で抗体(IgM抗体)を調べることもできますが精度がそれほど高いわけでなく、いつもいつもそう簡単に診断がつくわけではありません。

 治療については、マクロライド系の抗生物質が奏功することが多いため、マイコプラズマの診断が完全につかなくてもマクロライドを数日間処方することもあります。マクロライドは同じく長引く咳が特徴の百日咳にも効くことが多いので、「細菌性が強く疑われ長引く咳のある上気道炎にはマクロライドを投与すればなんとかなる」という、”荒っぽい”治療でもそれなりに有効なケースが多かったのですが、最近では、マクロライドが効かないマイコプラズマが増えてきており、治療に難渋することもあります。

(谷口恭)

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