医療ニュース
2013年9月30日 月曜日
2013年9月30日 デキサプリンを飲まないで!
ダイエット目的の危険なサプリメントがときどき問題になりますが、最近注目されているのが「デキサプリン」です。
2013年9月17日、厚生労働省は各地域の衛生主管局宛てに「健康食品(デキサプリン)の取り扱いについて」というタイトルで注意喚起をおこないました(注1)。
厚労省は、オランダ食品・消費者製品安全局(VWA)からの情報に基づき注意喚起をおこなっています。VWAによりますと、デキサプリンを服用し重篤な副作用が生じた例が受理しただけで11例にのぼるそうです。副作用は、動悸、胸痛、嘔気、頭痛などですが、なかには心停止もあるそうです。
****************
ダイエット効果を謳ったサプリメントに危険なものが少なくないことは過去にもお伝えしたことがあります。それらに含まれていたのは、国内未承認の医薬品成分「シブトラミン」や甲状腺ホルモンである場合が多く、大変危険であるのは明らかでした。
今回オランダの当局が発表した「デキサプリン」が薬理学的にどのようなものなのかよく分からないのですが(正式な文書はオランダ語で書かれています・・)、報告された副作用が動悸、嘔気、頭痛などであることを考えると、シブトラミンや甲状腺ホルモンに似たようなものではないかと推測できます。これら以外の副作用としては、発汗過多やイライラ感、不眠なども起こりうるでしょう。
心停止になった人がそのまま死亡したのかどうかは厚労省の文書からは分かりませんが、このようなサプリメントを摂取すると命の危険が脅かされることもあるということは充分に知っておく必要があります。
(谷口恭)
注1:厚労省の注意喚起は下記で閲覧することができます。
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/hokenkinou/dl/dexaprine.pdf
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|2013年9月13日 金曜日
2013年9月13日 ロドデノールの被害に対する”誤報”
塗ると色が白く抜ける「白斑」を起こすという理由で、カネボウなどの化粧品会社が自主回収を開始したというニュースは先日お伝えしました。(下記医療ニュース参照)
自主回収は2013年7月上旬から始まり、2ヶ月経過した9月上旬で、白斑を訴えている人が1万人を超えているそうです。
この事件については各マスコミも頻繁に取り上げており、特集番組も組まれているようです。しかし、マスコミの報道には偏りがあるようで、例えば2013年9月2日に放送されたNHKの「クローズアップ現代」では、視聴者に誤解を与える表現が少なくなく、ロドデノール含有化粧品の安全性に関する「特別委員会」が反論をおこないました。
「クローズアップ現代」の”誤報”に対する「特別委員会」の反論は以下のようになります。
①「1年経っても治らない」との報道について
多くは化粧品使用中止後8週間で明らかな改善がみられている。2年経過しても白斑が残っている症例が数例あるのは事実だが、これらも原因を突き止めて治療をおこなうことは可能。
②「2割の患者しか治らない」との報道について
現時点でのカネボウ社の見解では「完治に近い人が2割いる」であり、「2割の患者しか治らない」わけではない。現時点では化粧品を中止しきちんと経過を追えている症例数が少ない(ので統計的な数字は算出しにくい)。(化粧品自主回収から2ヶ月しかたっていないのですから当然です)
②「色をつくる細胞がなくなっている」という報道について
実際に皮膚を生検してみると、多くの症例で色をつくる細胞(メラノサイト)は残っている。(生検とは皮膚組織を一部採取して、どのような細胞が存在しているのか顕微鏡で調べる検査のことです)
現時点での治療について委員会では、ステロイドやタクロリムスの外用、トラネキサム酸やビタミン剤の内服、光線療法などについて言及しています(注1)。
***************
特別委員会の委員長は藤田保健衛生大学の松永佳世子先生です。私は皮膚科関連の学会などで過去に何度も松永先生のご講演を拝聴していますが、いつも深い感銘を受けます。松永先生は「茶のしずく」などの小麦アレルギーの調査の際にも大変ご活躍されています。(当院は「茶のしずく」については協力施設としてお手伝いさせていただきましたが、「ロドデノール」については現在パッチテストに対応していないことや光線療法の設備がないことなどから他施設を紹介させてもらっています)
「クローズアップ現代」への反論で松永先生が最も強調されているのが、患者さんに対する「不安にならないで!」というメッセージです。反論の文書の冒頭に「(マスコミの心ない)言葉に深く傷付き、不安になられたのではないでしょうか。心配しております」と記載されています。何よりもまず患者さんの立場にたった視点から対処されていることが伝わってきます。
ロドデノールの被害に会われた方は大変つらい思いをなさっているかと思いますが、委員会の先生方や、実際に患者さんを診ている専門の先生方は一生懸命に取り組まれていますのでどうか不安にならないでください。
(谷口恭)
注1:これらの治療は患者さんの判断でおこなうのではなく医師の指導の下でおこなうべきです。現在当院では対応していませんが、適切な医療機関を紹介しますので、当院にかかりつけ医の方でロドデノールの被害に会われた方は相談ください。(メールで相談されてもかまいません。また適切な医療機関をご存じであれば当院への連絡なしに直接受診されてもかまいません)
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|2013年9月4日 水曜日
9/4 長時間1回と短時間3回、有効なウォーキングはどちら?(その2)
糖尿病(もしくはその予備軍)の人がウォーキングをするなら、長時間1回よりも短時間3回の方が有効である、という研究結果を以前紹介しました。(下記医療ニュースを参照ください)
ところが、これとまったく正反対の研究結果が発表されましたので報告します。(尚、この発表は学会での発表であり、まだ論文になっているわけではありません。しかし、最近ここでお知らせした結果とまったく正反対であるためにあえて取り上げることにしました)
1日に15分間の散歩を3回行うよりも1回45分間の持久運動の方が血糖値の改善に有効である・・・・。
これは2013年6月21日~25日に米国シカゴで開催された第73回米国糖尿病学会で、オランダMaastricht大学のJan-Willem van Dijk氏が発表した研究結果です。(この報道は医学系サイト「日経メディカルオンライン」2013年8月19日号に掲載されました)
この研究の対象となったのは、2型糖尿病の男性20例(平均年齢64歳、平均BMI 29.5、平均HbA1c 6.9%)で、コントロール日(ウォーキングなし)、毎食後15分間のウォーキングを3回する日、45分間の持久運動を1回おこなう日を設けて血糖値がどのように変動するかが測定されています。
日内血糖変動をみてみると、1日のうちで高血糖状態だった時間は、コントロール日では6時間51分だったのに対し、45分間の持久運動日では4時間47分と有意に減少しています。一方、毎食後15分間のウォーキングを3回する日では、6時間2分とコントロール日とほとんど差はなかったようです。平均血糖値でみてみても、45分間の持久運動日ではコントロール日よりも有意に減少したのに対し、毎食後15分間のウォーキングを3回する日ではほとんど下がらなかったようです。
しかし、食後の血糖値上昇の程度については、45分間の持久運動日だけでなく毎食後15分間のウォーキングを3回する日でも有意に減少したそうです。また、食後のインスリンの値も、コントロール日と比較すると、45分間の持久運動日でも毎食後15分間のウォーキングを3回する日でも有意に低下したようです。
これらの結果に対し、発表者は、「血糖コントロールの改善には、ある程度のまとまった量の身体活動が必要かもしれない」とコメントしたそうです。
***************
下記医療ニュースでお伝えした研究結果と丸々正反対であることが興味深いといえます。両方の研究とも対象者が10人、20人と少なく、現時点ではどちらが正しいとは言えないと考えるべきでしょう。
しかし、ひとつだけあきらかなことがあります。短時間の運動を繰り返すにしても、長時間の運動を一度だけやるにしても、まったく運動しないよりははるかに血糖値改善効果があるのは間違いないということです。
短時間を3回、長時間を1回などと決めてしまうのではなく、まずはどちらでもいいので長続きして楽しくできる方法を各自選べばいいのではないかと思います。そして、これは糖尿病(またはその予備軍)の人たちだけにあてはまるわけではなく、体重を減らしたい、あるいは健康を維持したいと考えているすべての人にいえることです。
(谷口恭)
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|2013年9月2日 月曜日
9/2 コーヒーの飲み過ぎで死亡リスク増加?
コーヒーは、様々なガンの予防になり、高血圧や糖尿病のリスクを軽減させる、など、最近は「コーヒーは身体によい」という研究が相次いでいます。従来懸念されていた胃などへの悪影響もないという研究(下記医療ニュース参照)も発表され、コーヒーはいいことずくし、というような流れにありますが、米国でコーヒーの否定的な研究が発表されましたので報告いたします。
55歳未満の人は、1日4杯以上のコーヒー摂取で全死亡リスクが上昇する・・・
これは米国サウスカロナイナ大学公衆衛生学校のJunxiu Liu氏らによる研究結果で、医学誌『Mayo Clinic Proceedings』2013年8月19日号(オンライン版)に掲載されています(注1)。
この研究の対象となったのは、43,727人のアメリカの一般住民です。(年齢は20~87歳。男性33,900人、女性9,827人です) 調査期間は1971年2月から2002年12月で、コーヒーの摂取量を含む生活習慣、本人と家族の病歴などが調べられています。コーヒーの摂取量については、「摂取しない」「1週間に7杯未満」「1週間に8~14杯」「1週間に15~22杯」「1週間に22~27杯」「1週間に28杯以上」の6つのグループに分類されて解析されています。
調査期間中(中央値は17年)に死亡したのは2,512人(男性87.5%)で、そのうち32%が心筋梗塞など心血管系のものだったそうです。
コーヒー摂取量と死亡の関係を分析すると、55歳未満では、男女ともコーヒー摂取が週に28杯以上になると全死亡のリスクが有意に上昇していたようです。週28杯以上(1日4杯以上)摂取する55歳未満の男性の全死亡のリスクは、コーヒーをまったく摂取しないグループに対し1.56倍、女性では2.13倍とされています。
一方、55歳以上であれば、男女ともに摂取量と全死亡の間に有意な関連は認められなかったようです。
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コーヒーが身体によい、とする研究では、量が多ければ多いほどよい、とするものが多いようですから、この研究は過剰摂取に警告を鳴らすものとして注目すべきでしょう。しかし、週に28杯というのはかなり多いような気がしますが、米国では(日本でも?)週に28杯以上ものコーヒーを飲んでいる人はそんなに大勢いるのでしょうか。
ちなみに私もコーヒーは大好きでけっこう摂取している方だと思うので、週あたり何杯飲んでいるか振り返ってみました。平均すると、診療がある日が1日4杯、診療がない日で1日2~3杯で、だいたい週あたり25杯であることがわかりました。週に28杯以下ですから死亡リスクの上昇は考えなくていい、とみなしたいと思います。
たったひとつの研究に影響を受けすぎるのは問題ですが、コーヒーに関する研究はこれからもどんどん発表されていくでしょうから、みなさんも、日頃どれくらい飲んでいるのかを把握しておくのはいいかもしれません。
(谷口恭)
注1:この論文のタイトルは、「Association of Coffee Consumption With All-Cause and Cardiovascular Disease Mortality」で、下記のURLで全文を読むことができます。
http://www.mayoclinicproceedings.org/article/S0025-6196%2813%2900578-8/fulltext
参考:
医療ニュース2012年10月1日「コーヒーは消化管疾患と無関係」
医療ニュース2013年4月18日「コーヒーでも緑茶でも脳卒中のリスク低減」
医療ニュース2013年1月8日「コーヒーで口腔ガン・咽頭ガンの死亡リスク低下」
医療ニュース2012年12月3日「コーヒーも紅茶も生活習慣病に有効」
はやりの病気第22回(2005年12月) 「癌・糖尿病・高血圧の予防にコーヒーを!」
はやりの病気第30回(2006年4月) 「コーヒー摂取で心筋梗塞!」
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