関西の外国人医療を考える会(2023年2月5日に解散します)
The Meeting for Medical Staffs Seeing Foreign Patients in Kansai
As many foreigners point out, there are very few clinics or hospitals who see foreign patients in Kansai. We established this meeting for the purpose of increasing the number of medical staffs who are able to see foreign patients. We welcome not only doctors, nurses, or pharmacists but also receptionists or any other staffs working at medical facilities.
【設立趣旨】
現在、関西(特に大阪市)の外国人医療が適切におこなわれているとは言い難い。短期旅行の訪日外国人のみならず長期滞在し企業などで勤務している外国人の間からも関西の医療機関に対する不満の声は多い。「何とかしなければならない」と考えている医療者は少なくないが、これまで問題を共有する「場」がなく、クリニック/診療所、病院、保健所、行政、NPOなどで抱えている問題の種類も異なる。今後、訪日外国人がさらに増加するのは間違いなく、現状のままではますます問題が大きくなるのは必至である。この問題を解決することを望む者たちが集い、改善策を探ることを本会の目的とする。本会は2018年6月に津市で開催された第9回日本プライマリ・ケア連合学会の外国人医療のシンポジウムがきっかけで発足した。
【設立年月日】2018年7月1日
【代表者】谷口恭(太融寺町谷口医院)
日時:2023年2月5日(日)15:00~17:00
会場:AP大阪梅田東Mルーム 及び ZOOM (いずれの場合も事前申し込み必要)
(注意:会場の定員は30名を予定しています。会場を希望される方は早めにお申し込みください)
受付:14:50から開始
参加費:無料
テーマ:「外国人に対する感染症対策」
① 谷口恭(太融寺町谷口医院)
「外国人に対する行政の問題」
② 末光伊芙季(株式会社barca代表取締役)
「外国人目線で考える日本の医療の壁」
③ 澤田真弓(メディフォン株式会社代表取締役CEO)
「日本全体としての外国人医療の見通し・展開(仮)」
④ 未定(浜松医科大学学生)
「日本の外国人医療と感染症(仮)」
⑤ 李祥任(公益財団法人結核予防会結核研究所 臨床・疫学部 研究員)
「外国出生者・移民の結核対策における最新の取組み」
◆第6回関西の外国人医療を考える会の報告
日時:2022年6月26日(日)
於:オンライン
① 谷口恭(太融寺町谷口医院)
「ポストコロナの外国人医療対策案」
② 末光伊芙季(Globalitator)
「ウクライナ避難民医療支援からみえた外国人医療の課題」
③ 堀成美(看護師・感染対策コンサルタント)
「コロナ騒動の2年で何が変わったか、変わらずにいるか」
④ 形岡洋光(浜松医科大学病院・山口国際クリニック)
「静岡県在住外国人の災害対策」
⑤ 阿慶田眞之輔(浜松医科大学学生)
「静岡県西部在住外国人のコロナワクチン接種率の状況」
⑥ 松村実祐(浜松医科大学学生)
「ケニアのリプロダクティブヘルス」
<総括>
前回(第5回)を開催した2021年11月は、まだ日本ではオミクロン株が流行しておらず、コロナの終焉がまったく見えない時期でした。「コロナ禍でも外国人医療の需要はある」ということを各演者が伝えたわけですが、今回(第6回)は、異論はあるものの「ポストコロナに入ったのではないか」と思われるタイミングで開催しました。谷口は太融寺町谷口医院の過去15年の経験から「クリニックでは医療通訳は不要であり、日常会話の英語ができる受付スタッフがいればそれで何の問題もない」という自論を紹介しました(参加者から「病院ではそうはいかない」という意見もでました)。Globalitatorの末光さんは、現在別府で取り組まれているウクライナ(避)難民の支援について実体験を話されました。堀看護師は周知のように過去2年間でコロナ対策に尽力されていたわけですが、その経験から「(コロナに関わらず)医療者が忘れてはならない外国人医療対策」について話されました。後半3名は浜松の外国人医療事情の紹介となりました。最後の演題は浜松医科大学が取り組んでいるケニアへの支援活動についてで、これは「ポストコロナ」とは直接関係のないことかもしれませんが、ケニアの貧困地区に関する他では得られない情報に加え、豊富な写真も紹介されていて「日本人としてなにをすべきか」ということを改めて考える機会を得ました。この会は第1~4回までは会場でおこない、終了時刻が過ぎても意見を述べるために手を挙げる人がやまないほど盛り上がっていましたから、それを再現したいと考えているのですが、ウェブ形式ではその盛り上がりを実現するのは困難なようです。次回はハイブリッド形式での開催を検討しています。(谷口恭)
◆第5回関西の外国人医療を考える会の報告
日時:2021年11月14日(日)
於:オンライン
① 谷口恭(太融寺町谷口医院)
「難民申請中で医療が受けられないHIV陽性のアフリカ人」
② 末光伊芙季(Globalitator代表)
「いま医療に必要な’’つながり’’とイノベーション」
③ 澤田真弓(メディフォン株式会社代表取締役CEO)
「コロナ禍における遠隔医療通訳の利用状況」
④ 形岡洋光(浜松医科大学病院・山口国際クリニック)
「救急に外国人が来た!」
⑤ 久保田恵(くぼたこどもクリニック)
「before, with, and after covid-19の外国人医療」
<総括>
Covid-19の影響で会合が開けず、長い間延期していた本会をオンラインの形で開催しました。無事開催できたのが、今回からスタッフに加わってくれた「Globalitator」の末光伊芙季さんのおかげです。末光さんは看護師の経験をお持ちで、現在は在日外国人のサポートに尽力されています。その末光さんの発表の他、メディフォンの澤田さんからはコロナ禍での外国人医療の総論のような話がありました。形岡先生は、浜松で多くの外国人の診療に従事している経験からの話をされました。久保田先生は大阪市生野区で小児科クリニックの院長をされており、地域の住民のみならず以前から外国人医療に積極的に取り組まれています。2021年11月の時点では来日する外国人はかなり少数ですが、いずれコロナ禍が終焉し再び大勢の外国人がやってくる日が必ず来ます。今後も本会は続けていきたいと思います。
◆第4回関西の外国人医療を考える会の報告
日時:2020年2月16日(日)
於:大阪市立大学医学部学舎4階小講義室2
テーマ:「各施設での工夫」
① 谷口恭(太融寺町谷口医院)
開会の挨拶及び「日本語も英語もできない中絶希望のネパール人」
② 澤田真弓(メディフォン株式会社代表取締役CEO)
「医療通訳をめぐる最近の動向」
③ 堀成美(国立国際医療研究センター)
「患者・通訳・アプリ・デバイス:みんなを救う「やさしい日本語」」
④ 鈴木尚美(大野記念病院)
「観光地にある二次救急医療機関における外国人患者対応の実情」
⑤ フランシア・カンポス(榛原総合病院)
「外国人患者さん及びその家族の医療と健康における支援活動 – 経験の共有による理解の向上」
<総括>
今回も様々な立場の人から発表があり「幅広い内容」になったと思います。まず特筆すべきは堀さんの「やさしい日本語」です。すでに東京、特に新宿界隈では英語ができない外国人が当たり前のように暮らしているそうです。もちろん「やさしい日本語」ですべてのコミュニケーションがとれるわけではなく、最終的には医療通訳を使わねばならないケースも多いそうですが、受付や会計のスタッフも含むすべての医療関係者が学んでいく必要があることがよくわかりました。尚、「やさしい日本語」に興味を示す医師はまだまだ少数だとか…。鈴木さんの発表は、実情がよく分かりとても興味深い内容でした。通訳が苦労されていること工夫されていることがよく分かり多くの医師に聞いてもらいたい内容でした。講演が終わった直後には「鈴木さん、がんばれ!」と言いたくなったのが私だけではなかったことは会場の拍手の大きさから明らかでした。フランシア先生の内容は、さすが外国人の立場からというもので説得力がありました。「外人」でなく「移民」と呼ぼうと提唱されたことは印象深く、自身も「移民」として大勢の外国人を診られている経験からの内容で興味深いものでした。守秘義務についても言及され、我々日本人が学ばねばならないことが多数あることを認識しました。澤田さんはいつものように情勢の変化について話されました。最も特筆すべきことは2020年4月より医師会A会員であれば年間20件まで電話の医療通訳が無料で使えるサービスが始まることだと思います。電話通訳は時間がかかるのは事実ですが(私見では通常の診療の3倍はかかります)、このような無料のサービスが普及すれば”診療拒否”は大きく減少するのではないかと期待しています。私(谷口恭)は当院より2例の症例報告をしました。1つは「日本語も英語もできない中絶希望のネパール人女性」もう1例は「中国帰りというだけで他院で拒否され続けていた中国人の咽頭炎」です。双方に外国人医療に伴う様々な問題が含まれています。後半のディスカッションでは多くの意見・コメントをいただきました。この会を開くと、毎回「外国人医療に興味を持っている医療者も少なくないんだ」と嬉しくなるのですが、日ごろの診療ではまだまだ問題が山積みであることを認識しています。第5回は9月6日に開催予定です。
◆第3回関西の外国人医療を考える会の報告
日時:2019年7月21日
於:大阪市立大学医学部学舎4階小講義室2
演題:
①谷口恭((医)太融寺町谷口医院)
「日本語も英語も困難なHIV陽性のアジア人」
②澤田真弓(メディフォン株式会社代表取締役CEO)
「医療通訳をめぐる最近の動向」
③オーストラリア:ジュリア・クネゼヴィチ(英語医療通訳者)
④フランス:加納信子(フランス語医療通訳者)
⑤ロシア:アナスタシーア・オーゼロヴァ(ロシア語医療通訳者)
⑥中国:白川忍(中国語医療通訳者)
⑦全体討議:会場にいる全員 40分
<総括>
今回は各国の医療事情を、実際に現場に関わられている講師陣に講演いただきました。参加者はもともと外国人医療に詳しい人が多かったのですが、それでも「初めて聞くことがあった」「日本とあまりにも違うことに驚かされた」という感想を多数いただきました。個人的には、白川さんの講演で「中国ではカルテや画像は患者のもので患者が持ち帰る」ことや「紹介状という概念がない」ことを聞き、改めて”文化”を知らねば外国人医療ができないことを痛感しました。また、加納さんが紹介されていた「来日直後に旅行者血栓症を発症し長期入院せざるをえなくなったフランス人女性」の症例は印象的でした。言葉、食べ物、文化などが医療の”障壁”になることを改めて認識しました。ロシアの医療事情についてはほとんど予備知識がなかったためにアナスタシーアさんの講演も勉強になりました。ジュリアさんの講演は狭義の外国人医療のみならず、diversity, sexual minorityなどにも話が及び、改めて「本来の医療」の総論を学ぶことができたと感じています。ディスカッションの時間には参加者からたくさんの質問をいただき、演者と共に議論することができました。澤田さんからは最近の行政の動きを学び、また参加いただいていた南谷かおり先生(りんくう総合医療センター)からは「医療通訳士認定制度」についての最新の情報をお聞きしました。今後ますます外国人医療が複雑化していくことは間違いなく、我々医療者に求められるものが多岐化・高度化していくと思われます。万博が開催されるまでに、もっと多くの医療者に関心を持っていただき、なにわの”おもてなし”ができるよう努めたいと考えています。(谷口恭)
◆第2回関西の外国人医療を考える会の報告
日時:2019年1月27日
於:あべのメディックス8階会議室
下記はすべて谷口恭の責任で書いています。疑問点・ご意見などがあれば本サイトの「医療従事者用専用フォーム」からご連絡いただきたくお願い申し上げます。
〇前半の演者の講演内容は下記の通りです。
①谷口恭((医)太融寺町谷口医院)「当院での多言語対応について」
自称”通訳”を連れて来院し困惑した中国人男性の1例を紹介。本症例は1時間以上当院スタッフと”揉めて”結局診察を受けずに帰ってもらった。英語での他院紹介に難渋した3例を紹介し「医療機関検索システム」を利用しても95%で断られることを指摘した。
②澤田真弓(メディフォン株式会社代表取締役CEO)「求められる医療通訳の多様性」
国が大きく動き出し医療機関において遠隔医療通訳が普及する可能性が見えてきた。それに対応できるようにメディフォンで取り組んでいる通訳の養成、評価方法などについて解説した。
③李裕美(多言語センターFACIL事務局長)「関西における医療通訳の現状―兵庫県での取組みを中心に」
過去数年間で医療通訳の存在が認知されるようになり通訳利用者が急増しているが、そのなかで様々な問題があることを指摘。外国人の診察に消極的な医療機関があること、医療機関によっては通訳に過剰な期待をしすぎること、需要のある言語に偏りがあり特にベトナム語の急増する需要に供給が追い付いていないことなどについて解説した。
〇後半は会場から様々な意見がでディスカッションをおこないました。いくつかのコメントを列記します。
・医療機関検索システムが実用的でないのは医師会に問題があるのではないか
・特に外科手術が必要な症例を他院に紹介するときに難渋する
・通訳は「言葉」の問題ではない。医療通訳にはその患者の背景となる「文化」や「風習について教えていただきたい。
・外国人診療に時間がかかるのは単に言葉の問題ではない。思いもよらぬ重症例や日本と母国の診療スタイルに「差」があることが大きい。
・外国人診療には時間がかかる。少数なら診られても人数が増えると経営的な観点からの考察が必要。
◆第1回関西の外国人医療を考える会の報告
日時:2018年7月29日
於:大阪市立大学医学部学舎4階小講義室
演題:
①谷口恭((医)太融寺町谷口医院)
「当院の外国人医療の実情と問題点、他施設に望むこと」
②白野倫徳(大阪市立総合医療センター感染症内科)
「病院からみた外国人医療の現実と問題点」
③堀成美(国立国際医療研究センター 国際診療部)
「新規患者の外国人が10%超えの医療現場で経験していること」
④青木理恵子(NPO法人CHARM事務局長)
「支援者から見た在住外国人医療支援の現状と課題」
⑤澤田真弓(メディフォン株式会社代表取締役CEO)
「mediPhoneを用いた遠隔での医療通訳について」
⑥木戸友幸(愛港園診療所)
「外国人診療でのMUSTS:NYC,Paris, 大阪での診療より」
〇参加者からの感想・意見
・講演の時間が余裕が無く残念だった。
→申し訳ございません。第1回ということで各方面からの意見を聞きたくて一人あたりの時間が短くなってしまいました。また、ディスカッションの時間が盛り上がりかけたときに終了となってしまいました。今回の反省点を次回にいかせたいと考えています。(谷口恭)
・関西全域で様々な職種や立場の人たち(医師、医師以外の医療職、通訳、病院職員、行政職員)が集まってそれぞれの立場から問題点を上げればよいのではないか。
→その通りだと思います。今後、様々な職種の人たちが集まり、それぞれの立場の意見を交換したいと考えています。(谷口恭)
・すでにトレーニングを受けた通訳を複数の医療機関が共有できる仕組みがあればよいと思う。
→貴重なご意見ありがとうございます。どのようなシステムが望ましいのか今後の課題として検討していければと考えています。(谷口恭)
・看護学校や他の医療系学生への教育が重要である。
→その通りだと思います。医学部も含めて考えていかねばならないと思います。いずれ、看護学校や医学部の英語教育を担当されている先生に講演を依頼したいと考えています。(谷口恭)
・他国の成功事例を教えてほしい
→そもそも医師がこれだけ英語を話さない国は日本くらいで、僕はそこが問題だと思っています。医学生の頃から英語をもっと勉強しなければならないと思います。(谷口恭)
〇その他いただいたご意見
・未収金防止の対策が必要
・海外の保険会社との連携が必要
・院内の他部署連携(巻き込み・周知・浸透)
・院内スタッフへの教育
・救急受入れ
・時間外受入れ
・宗教対応
・特定の疾患や症状の対応方法
・国別の医療事情や文化の紹介
・食事対応・栄養指導
・国別の医療事情や文化の紹介
・治療目的の訪日外国人の対応ついて(正規ルートと裏ルート)
・保健所との連携
・保育所 療育センター 母子施設 DVシェルター 学校 社会教育との連携
更新:2022年6月1日