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2026年9月3日 木曜日

2026年9月3日 CTE(慢性外傷性脳症)をこれ以上無視すべきでない

 このサイトで初めてCTE=慢性外傷性脳症(以下「CTE」)の危険性を報告したのは2015年です。サッカーやアメリカンフットボールの経験者はかなりの高確率でこの疾患を発症し、いずれ認知症や人格崩壊で人生が大きく狂うことになります。実例を含めた詳しい話は下記の「参考」を参照してほしいのですが、今回は「いったいどれくらいの確率でCTEを発症するのか」について新しい論文が出たので報告したいと思います。

 その前に過去の「数字」についてみておきましょう。2017年のコラム「アメリカンフットボールの選手のほとんどがCTEに!」で紹介した医学誌JAMAに掲載された論文「アメリカンフットボール選手における慢性外傷性脳症の臨床病理学的評価(Clinicopathological Evaluation of Chronic Traumatic Encephalopathy in Players of American Football)」はCTEの有病率を次のように報告しています。

・元アメリカンフットボール選手202人のうち177人(87%)がCTE

・NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)の選手111人のうち110人(99%)がCTE

 アメリカンフットボールに本格的に取り組めば9割近くがCTE、プロになれば99%がCTEというこの数字、あまりにも衝撃的ですが、この報告に対しては冷ややかな視線もあります。それは「調べられたほとんどの患者がCTEを疑う症状が出ていたのだから、高確率になるのは当然」とする意見です。

 では、症状が出ていない人も含めて、どれくらいの人にCTEの脳の所見が認められるのでしょうか。それを検証した論文が医学誌「BMJ」2026年8月25日号に掲載されました。タイトルは「NFL選手における死亡時の慢性外傷性脳症(CTE)の有病率:2008~2021年の後ろ向き集団ベースコホート研究(Prevalence of chronic traumatic encephalopathy at death in National Football League players: retrospective population based cohort study, 2008-21)」です。

 研究の対象とされたのは死亡したNFL選手1712人で、そのうち、338人(19.7%)の脳が解剖され、そのうち315名(93.2%)にCTEの診断が認められました。したがって、死亡したNFL選手1712名全体における死亡時のCTE有病率は、18.5%から98.7%の範囲ということになります。脳の提供が最も頻繁に行われた2016年から2021年の期間において、死亡時の推定有病率は24.5%から97.7%の範囲でした。結論として、「2016年から2021年の間に死亡したNFL選手の少なくとも4人に1人がCTEを発症していた」とされていす。

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 この論文を報じたメディア、例えばScienceは「少なくとも4人に1人がCTE」という表現を使っていますが、これはかなり控えめな報道です。実際は、18.5%から98.7%、または24.5%から97.7%の間ですから、「少なくとも4人に1人」という表現は間違ってはいませんが、もっと高確率に発症すると考えるべきでしょう。

 一番いいのはCTEを生前に(死ぬ前に)診断することです。しかし血液検査でも画像検査でも現時点ではCTEを的確に評価する方法がありません。CTEの診断方法は「剖検(脳の死後解剖)」しかないのです。治療法として、アルツハイマー病に使う薬を用いる試みもあるようですが、奏功したという話は聞きません。予防法としては「はじめからコンタクトスポーツを避ける」とか「サッカーをやるならゴールキーパーにする」(ディフェンダーのCTE発症リスクが4.98倍なのに対し、ゴールキーパーは1.83倍。下記の医療ニュース参照)という対策を取るしかありません。

 CTEのリスクを抱えてコンタクトスポーツに取り組むのなら問題はないでしょう。ですが、これだけリスクがはっきりしていてエビデンスもあるのに、それを(特に子供に)知らせずにこういったスポーツを奨励することが続けられていいのでしょうか。

参考:
はやりの病気第137回(2015年1月) 脳振盪の誤解~慢性外傷性脳症(CTE)の恐怖~
医療ニュース2016年10月14日 コンタクトスポーツ経験者の3割以上が慢性外傷性脳症
医療ニュース2017年3月6日 ヘディングは脳振盪さらに認知症のリスク
医療ニュース2017年8月30日 アメリカンフットボールの選手のほとんどがCTEに!
医療ニュース2019年11月23日 やはりサッカーも認知症のリスク
医療ニュース2020年8月17日「小児のヘディングは禁止すべきか」
医療ニュース2021年4月27日 たった一度の頭部外傷で認知症リスクが上昇
医療ニュース2021年12月22日 サッカーは直ちにやめるべきかもしれない
医療ニュース2023年4月23日 やはりサッカーは危険
医療ニュース2024年11月22日 アメリカンフットボール経験者の3分の1以上がCTEを自覚、そして自殺
毎日メディカル2025年3月31日 スポーツ界にとって「不都合な真実」? 日本では周知されない脳へのダメージ
日経メディカル2024年2月21日 コンタクトスポーツによる慢性外傷性脳症リスクの周知を!

 

投稿者 医療法人 谷口医院 T.I.C. | 記事URL

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