医療ニュース
2017年3月6日 ヘディングは脳振盪さらに認知症のリスク
アメリカンフットボールなどのコンタクトスポーツが脳にダメージを与え、将来認知症や人格変貌、さらに自殺をも招くことがある、ということはここ数年注目されており、このサイトでも何度か取り上げました(注1)。この脳にダメージをおこす疾患のことを「慢性外傷性脳症」(以下「CTE」)と呼びます。コンタクトスポーツと言えばサッカーを思い浮かべる人も多いでしょう。では、サッカーのヘディングはどうなのでしょうか。
ヘディングをよく行う選手は、あまり行わない選手に比べて脳震盪を起こす可能性が3倍以上…。
医学誌『Neurology』2017年2月1日号(オンライン版)にこのような研究が報告されました(注2)。
研究の対象者は、ニューヨーク市のアマチュアサッカークラブの成人男女の選手222人。調査はオンライン上でおこなわれました。調査期間の2週間でヘディングを行った回数は、男性平均44回、女性は27回でした。また、「偶発的な頭部への衝撃」が男性の37%、女性の43%にありました。そして、ヘディングや偶発的な衝撃により20%の選手に何らかの症状が認められています。
これらを分析した結果、ヘディングをよく行う選手は、あまり行わない選手に比べ脳振盪を起こすリスクが3倍以上、偶発的な衝撃を2回以上受けた選手は、受けていないい選手と比較し6倍以上となっていました。
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この論文では、ヘディングが脳振盪を起こしやすいとは言っていますが、CTEのリスクとなるかどうかについては検討されていません。しかし一般紙がこれに言及しています。英国の新聞「The Telegraph」はこの記事を取り上げ、ヘディングとCTEのリスクについて、イングランドの元ストライカーJeff Astle氏を取り上げてコメントしています(注3)。Astle氏は若くして認知症を発症し2002年に59歳の若さで他界しています。
Astle氏の若すぎる死とサッカーの関係についてはBBCも取り上げています(注4)。BBCは、氏の娘のDawnさんがラジオ番組でコメントした次の言葉を紹介しています。
「サッカーが原因で認知症が起こったことを示す証拠は以前からありました。にもかかわらず真剣に検討されなかったのは”許されないこと”かつ”不可解”なことです」
注1:下記を参照ください。
はやりの病気
第137回(2015年1月) 脳振盪の誤解~慢性外傷性脳症(CTE)の恐怖~
医療ニュース
2016年10月14日 コンタクトスポーツ経験者の3割以上が慢性外傷性脳症
2015年5月9日 脳振盪に対するNFLの和解額が10億ドルに
注2:この論文のタイトルは「Symptoms from repeated intentional and unintentional head impact in soccer players」で、下記URLで概要を読むことができます。
http://www.neurology.org/content/88/9/901.short?sid=2346c46a-d26b-49a8-942b-bd585e28f60e
注3:この記事のタイトルは「Demand for new study of heading and concussion(ヘディングと脳振盪の新たな研究が望まれる)」です。下記URLを参照ください。
http://www.telegraph.co.uk/football/2017/02/01/demand-new-study-heading-concussion/
注4:この記事のタイトルは「Jeff Astle’s daughter: Dad’s job killed him(Jeff Astle氏の娘が語る~父の仕事が父を殺した~)」です、下記URLを参照ください。
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