医療ニュース
2013年7月7日 日曜日
2011年9月29日(木) 四半期で新規エイズ発症者が過去最多
2010年は年間エイズ発症者が過去最多となったということを以前お伝えしましたが(下記医療ニュース参照)、この傾向は続いているようです。
2011年9月27日、厚生労働省のエイズ動向委員会は、2011年4月~6月(正確にいうと3月28日~6月26日)に、HIV感染に気付かずにエイズを発症した症例(いきなりエイズ)が、136人に上ったことを報告しました。これは、1984年の調査開始以来、3ヶ月ごとの集計では過去最多となります。(ちなみに2位は2010年4月~6月の129人です)
一方で、同時期に発覚した、まだエイズを発症していないHIV感染者は217人で、これは直前の3ヶ月(2011年1月~3月)と比較して減少傾向にあります。前年同期と比べると46人の減少となります。
感染経路をみてみると、(まだエイズを発症していない)HIV新規感染者の感染経路は、同性間の性的接触が148件で全体の68.2%、異性間の性的接触が39件で18.0%となっています。一方、すでにエイズを発症した症例(いきなりエイズ)では、同性間の性的接触が68件で50.0%、異性間の性的接触が43件で31.6%となっています。
同時期の保健所など公的機関で実施しているHIV抗体検査件数は31,553件で、前年同期の32,011件から減少しています。相談件数も38,784件で前年同期の40,181件から減っています。
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検査件数、相談件数の減少の原因として、関係者らは「3月の東日本大震災の発生が影響している可能性がある」とコメントしているようですが、果たしてそれだけでしょうか。
以前にも指摘しましたが、太融寺町谷口医院の患者さんをみてみても、発熱、下痢、皮疹などで受診して、患者さん自身がまさかHIVとは思ってもみなかった、という症例が増えてきています。2008年頃までは、当院でHIVが発覚した症例の半数以上は、患者さん自身がHIVを疑って受診した、というケースでしたから、東日本大震災とは関係なく、全国的にHIVに対する社会的関心が低下している、というのが私の考えです。
上の数字をみれば分かるように、まだエイズを発症していないケースでHIV感染が発覚している場合と比べ、いきなりエイズで発覚する症例は異性愛者の割合が多いという特徴があります。これは、すなわち同性愛者よりも異性愛者の方がHIVに無関心であることを示しています。そしてこの傾向は太融寺町谷口医院の患者さんにも当てはまります。つまり、異性愛者で危険な性交渉の経験がある人はもっと自覚を持たなければならない、ということです。
(谷口恭)
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|2013年7月7日 日曜日
2011年9月30日(金) RSウイルスがアウトブレイク
今年は「風邪」が多い年で、この傾向は年末まで続きそうです。このサイトで、リンゴ病(伝染性紅斑)と手足口病が過去最多の報告があるということを紹介しましたが、RSウイルスも過去最多を更新しているようです。
国立感染症研究所感染症情報センターの発表によりますと、RSウイルス感染症の小児科定点医療機関(全国に約3千ヶ所あります)からの患者報告数は6月下旬頃から増加傾向が続き、調査を開始した2003年以降で最多となっているそうです。
同センターの速報値では、9月12~18日の週の報告数は1,414人で、同時期で過去最多だった2008年の993人を大きく上回っています。都道府県別で見ると、大阪の205人が最多で、以下、宮崎160人、東京126人、福岡100人と続いています。
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RSウイルスは冬の風邪の代表的な病原体のひとつです。新生児では重篤化することもありますが、小学生以降の子供や成人ではさほど重症化しません。しかし特効薬があるわけではなく、特に日ごろ不摂生をしているような人が感染すると長期化することもあります。
RSウイルスには迅速診断キットがあるのですが、一般の診療所では保険適用がないために症状から疑うことになります。特効薬はなく、解熱剤、咳止めなどの対症療法しかありません。
ワクチンはありませんが、予防用の抗体はあります。ただし、適用は、早産で生まれた新生児や先天性心疾患を持つ小児に限られます。
(谷口恭)
参考:医療ニュース
2011年7月29日 「手足口病の勢い止まらず」
2011年6月25日 「リンゴ病が過去10年で最多」
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|2013年7月7日 日曜日
2011年10月6日(木) 禁煙で記憶力アップ!
昨年(2010年)の10月1日にタバコが大幅に値上げされ、その前後には禁煙治療希望者が一気に増え、全国的に禁煙治療薬のチャンピックスが品切れとなりました。しかし、この禁煙ブームの盛り上がりは次第に冷めてきたようで、年明け(2011年1月)あたりから禁煙治療希望者は減少傾向にあります。
現在禁煙を検討している人に対して朗報があります。
禁煙のメリットにはいろんなことがありますが、医学誌『Drug and Alcohol
Dependence』2010年12月1日号(オンライン版)に掲載された論文(注)によりますと、記憶力も向上することが明らかとなったそうです。
この研究は英国Northumbria大学により実施されています。喫煙者27人、元喫煙者18人、喫煙未経験者24人が対象となり記憶テストがおこなわれています。テストでは、対象者に与えられた課題を思い出してもらい記憶力を測定しています。その結果、元喫煙者は課題の74%、喫煙未経験者は81%を記憶していたのに対し、喫煙者で課題を記憶していたのは59%にとどまったそうです。
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この研究では、対象者の数が少ないように思われますが、それでも注目すべき内容でしょう。研究者によると、禁煙による記憶力への効果を検討した研究は今回が初めてだそうです。(過去にあってもよさそうな研究のように思われますので調べてみたのですが、私が調べた範囲では確かに記憶力と禁煙に関する研究は見当たりませんでした)
現在喫煙している人は、この研究結果を充分に吟味してみればどうでしょうか。この情報の記憶がなくなる前に・・・。
(谷口恭)
注:この論文のタイトルは、「Smoking and everyday prospective memory: A comparison of
self-report and objective methodologies」で、下記のURLで概要を読むことができます。
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0376871610002383
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|2013年7月7日 日曜日
2011年10月15日(土) 喫煙者率が男女とも過去最低に
JT(日本たばこ産業)は毎年、日本人の喫煙率を発表していますが、最新の発表(発表がおこなわれたのは2011年10月13日で、データはおそらく2010年のものだと思われます)では、男女を合わせた喫煙率が下記のように過去最低となりました。
男女合計21.7%(前年から2.2ポイント低下)
男性のみ33.7%(前年から2.9ポイント低下)
女性のみ10.6%(前年から1.5ポイント低下)
女性については、1年前の発表ではその前の年から喫煙率が増加していましたから、男女とも禁煙する人は着実に減少しているといえます。
喫煙者減少の原因として、JTは2010年10月の大幅なタバコ増税によるものと分析しているようです。喫煙人口は、22,790,000人で前年から2,160,000人減少しているそうです。
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JTは毎年5月にこのデータを公表していましたが、今年は震災の影響で遅れたのでしょうか。(遅れてもかまわないことですが)
2.2ポイント低下と言われてもよくわかりませんが、1年間で200万人以上の人が禁煙した、と考えると禁煙者は大幅に増加しているように感じます。
タバコに関しては、次々と身体や精神に有害であるという研究がでてきており、喫煙者を擁護するような論文は最近ではほぼ皆無です。「愛煙者を護れ」という動きもありますが、いかなる人も禁煙するにこしたことはないでしょう。
(谷口恭)
参考:医療ニュース
2010年8月16日 「喫煙率、男性は過去最低、女性は再び増加」
2010年10月1日 「受動喫煙で毎年6,800人が死亡」
2010年11月4日 「50代の大量喫煙はアルツハイマーのリスク」
2011年8月29日 「タバコの危険性は男性より女性」
2011年10月6日 「禁煙で記憶力アップ!」
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|2013年7月7日 日曜日
2011年10月24日(月) 夫婦の子供の数が初の2人未満に
夫婦が生涯に持つ子どもの平均人数が、2010年の調査で1.96人に・・・。
このような結果が、10月21日、国立社会保障人口問題研究所の「出生動向基本調査」で明らかになりました。
この調査は、同研究所が1940年から5年毎におこなっているもので、2010年が14回目となるそうです。妻の年齢が50歳未満の夫婦約9千組に調査票を配り、初婚同士の6,705組が集計されています。
1940年には子供の数が4.27人、50年代に入り3人台となり、60年代で2人台となったそうです。その後2人台は維持しており、2005年では2.09人でしたが、ついに2010年の調査で2人を下回ったということになります。
この調査では実際の子供の数だけでなく、アンケートもおこなわれています。
すべての夫婦に尋ねた「理想的な子どもの数」の平均は2.42人(2005年は2.48人)、「実際に持つつもりの子どもの数」が2.07人(2005年は2.11人)で、いずれも過去最低を記録しているそうです。
「実際に産むつもりの子どもの数が理想を下回る」と答えた夫婦はおよそ3割で、その理由(複数回答)を尋ねると「子育てや教育にお金がかかりすぎる」が60.4%と最多ではありますが、これは前回より5.5ポイント減少しているそうです。次いで「高年齢で産むのがいやだから」が35.1%ですがこれも前回より2.9ポイントの減少となっています。一方、前回よりも3ポイント増えているのが、「欲しいけれどもできない」で19.3%となっています。
全体で「不妊を心配したことがある(または現在心配している)」が5.3ポイント増加して31.1%にも昇っています。さらに、実際に不妊治療中、または治療したことがあると回答した夫婦も3ポイント増加で16.4%となるそうです。
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毎年厚生労働省から発表される子供の数は、合計特殊出生率といって1人の女性が生涯に産むと推定される子供の数を示しています。(2010年は1.39人でした) 合計特殊出生率は、結婚していない女性も含まれてしまいますが、上記の国立社会保障人口問題研究所のデータは結婚した女性だけを対象としていますから、子供を求めている女性の実態の数字に近いかもしれません。(しかし、結婚せずに子供を持つ女性もいますし、子供はいらないと考えている夫婦がいることも忘れてはいけません)
今回の発表で特筆すべきことは、「不妊症が増えている」ということではないでしょうか。出生率低下の話題になると、きまって「(社会が悪いから)子育てできる環境がないからだ」とか、「(景気が悪いから)教育費がかけられないからだ」という議論がでてきますが、そのような理由を挙げる夫婦はむしろ減ってきており、不妊を心配し、実際に治療をしている夫婦が増えているということがもっと注目されるべきで、なぜそのようなことが生じているかを分析していくことが重要だと思います。
参考:医療ニュース2011年6月3日 「出生率上昇、人口減12万人、自殺3万人以下に」
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|2013年7月7日 日曜日
2011年10月26日(水) 女性は中年期の適量の飲酒で高齢期が健康に
中年期に適量(moderate amounts)のアルコールを摂取する女性は、全く飲まない人に比べて高齢期の健康状態が心身とも良好・・・。
このような研究結果が医学誌『PLoS Medicine』2011年9月6日号(オンライン版)に掲載されました(注)。この研究では、1980年代に中年(中央値58歳)で、70歳以上まで生存した米国の看護師13,894人が対象となっています。元々、大酒家やアルコール依存のある人は対象から除外されています。高齢(70歳以上)になっても慢性疾患や心身障害のみられない対象者1,491人(全体の11%)を、何らかの疾患を抱えている対象者と比較しています。
その結果、高齢期に健康状態良好のグループでは、全く飲酒をしない人は22%にとどまり、62%の人が1日1杯の飲酒(アルコール15グラム)をたしなんでいたことが分かったそうです。また、約10%は1日1~2杯、3%は2~3杯の飲酒をしていたそうです。
飲み方については、習慣的に適量の酒を飲む方が、ときどきしか飲まないよりも有益であることがわかったそうです。
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アルコール15グラムというのは、ビールなら中瓶1本程度、日本酒なら1合程度、ワインならグラス1杯くらいと考えていいでしょう。
アルコールに関する調査は、有害とするものもあれば有益とするものもあります。アルコールの苦手な人がこの調査結果に影響を受けて、新たに飲酒を始める必要はありません。
アルコールを有益とする調査も、今回の研究と同様に、ビールで言えばせいぜい中瓶から大瓶1本程度です。大量飲酒が健康にいいとする調査は(皆無ではありませんが)ほとんどないということはしっかりと認識すべきでしょう。
(谷口恭)
注:この論文のタイトルは、「Alcohol Consumption at Midlife and Successful Ageing in Women:
A Prospective Cohort Analysis in the Nurses’ Health Study」で、下記のURLで概要を読むことができます。
http://www.plosmedicine.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pmed.1001090
参考:医療ニュース
2010年4月8日 「適度な飲酒は女性の体重増加を抑制」
2011年9月10日 「適度な飲酒がアルツハイマーを予防」
2007年2月6日 「女性の飲酒はC型肝炎をより悪化させる」
2009年10月8日 「酒飲みの女性は乳ガンになりやすい」
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|2013年7月7日 日曜日
2011年10月28日(金) マイコプラズマ肺炎も過去最多、しかも・・・
今年は「風邪」の多い年で、このサイトでもお伝えしてきたように、リンゴ病、手足口病、RSウイルスが過去最多を記録しています。そして、昨年10月頃から増えだし、2010年は過去最多を記録したマイコプラズマも、再び6月下旬から急増しており、過去最多の状態が続いています。
国立感染症研究所感染症情報センターによりますと、全国に約500ヶ所ある定点医療機関当たりの1週間ごとの患者報告数は、6月下旬から各週とも過去の同じ週に比べて最も多い状態が続いており、10月に入りさらに急増しています。10月10~16日の定点当たり報告数(速報値)は1.23で、3週間前の2倍超にまで増えていることになります。
都道府県別にみてみると、定点あたりの報告数は、青森の5.67が最多で、沖縄(4.14)、埼玉(3.78)、愛知(3.15)、大阪(2.47)と続いています。
今年のマイコプラズマが脅威なのは、感染者数が増えていることだけではありません。流行しても早期発見・早期治療を心がければ、いずれ流行は収束していきます。しかし、今年のマイコプラズマは、従来「特効薬」として使われていたマクロライド系抗生物質が効かないのです。
国立感染症研究所感染症情報センターの速報(注)によりますと、マクロライド系抗生物質に耐性のある(つまりマクロライドが無効な)マイコプラズマが89.5%にも上るそうなのです。2002年には耐性はゼロ(つまりマクロライドで全例治癒した)でしたから、わずか10年足らずで特効薬がほぼ無効になったことになります。
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咳が主症状の風邪症状の患者さんのなかにマイコプラズマを疑う例があります。私の経験で言えば、小児の場合は咳の仕方に特徴があり、胸部レントゲンからも疑いやすいのですが、成人の場合は、症状とレントゲンからマイコプラズマと断定するのは困難です。
マイコプラズマの確定診断をつけるための血液検査はありますが、それほど精度が高くないものや、結果判定に時間のかかるものであり、あまり実用的ではありません。最近になり、マイコプラズマの迅速診断キットが発売されましたが、値段がやや高いのが難点です。(当院では現在導入を検討中です)
確定診断をつけるのが困難であったとしても、咳が主症状の「風邪」で、(ウイルス性でなく)細菌性の可能性が強く、マイコプラズマが疑われれば、従来であれば「特効薬」のマクロライド系抗生物質を使用すれば上手くいくことが多かったわけです。ところが、マクロライド耐性が約9割ですから、こうなればマクロライドの処方は治療を遅らせることになりかねません。(1~2年前から、マクロライドが無効なマイコプラズマが増えていることは”実感”として感じていましたが、89.5%という数字には驚かされました)
国立感染症研究所感染症情報センターの報告では、「マクロライド以外でマイコプラズマ感染症に適応があるのはミノサイクリン」としていますが、同時に「ミノサイクリンは耐性菌は認められていないが、抗菌力が非常に優れているというわけではない」とも述べられています。
これからはマイコプラズマの治療に苦労することが増えてくるかもしれません。しかし、マクロライドとミノサイクリン以外にもマイコプラズマに有効と考えられる抗生物質はありますから、咳が主症状の「風邪」があれば早めに医療機関を受診すべきでしょう。
(谷口恭)
注:国立感染症研究所感染症情報センターの報告は下記URLで読むことができます。
http://idsc.nih.go.jp/iasr/rapid/pr3814.html
参考:医療ニュース
2011年1月28日 「マイコプラズマが急増!」
2011年9月30日 「RSウイルスがアウトブレイク」
2011年7月29日 「手足口病の勢い止まらず」
2011年6月25日 「リンゴ病が過去10年で最多」
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|2013年7月7日 日曜日
2011年10月31日(月) 過去最大規模の研究で携帯電話と脳腫瘍に関連なし?
2011年5月31日、WHO(世界保健機関)は、携帯電話の使用は発ガン性があるかもしれない(possibly carcinogenic)との見解を公表しました。(下記医療ニュースを参照ください)
このWHOの見解は、これまでの「携帯電話に発ガン性はない」と言われていた言説をくつがえす、いわばショッキングなものだったわけですが、このWHOの見解を否定する研究がデンマークの研究者により発表されました。論文は医学誌『British Medical Journal』2011年10月20号(オンライン版)に掲載されています(注)。
この研究はデンマークの約36万人を対象者としています。対象者の条件は1925年以降にデンマークで生まれ、1990年の時点で生存していた30歳以上のデンマーク人です。対象者を1990年から2007年まで追跡調査し、携帯電話の使用と脳腫瘍発症との関連が分析されています。
その結果、脳腫瘍を発症したのは、男性5,111人(携帯電話加入者714人、未加入者4,397人)、女性5,618人(加入者132人、未加入者5,486人)で、統計学的に携帯電話の使用と脳腫瘍の発症に関して関連性は認められなかったそうです。WHOの発表で最も問題視されていた神経膠腫という脳腫瘍という腫瘍については特に綿密に調べられていますが、やはり関連性はなかったそうです。
***************
WHOが「発ガン性があるかもしれない」という発表をおこなった研究の対象者は約13,000人で、今回のデンマークの研究の対象者は約36万人ですから、数字だけを比較すれば、たしかにデンマークの研究の方が高い信憑性を有しているように思われます。
しかし、この結果をもって「発ガン性なし」としてしまっていいのでしょうか。このデンマークの研究結果を踏まえたWHOの見解を聞きたいところです。
(谷口恭)
注:この論文のタイトルは、「Use of mobile phones and risk of brain tumours: update of Danish
cohort study」で、下記のURLで全文を読むことができます。
http://www.bmj.com/content/343/bmj.d6387.full?sid=37885ddb-a456-4c41-8407-82446d092ca6
参考:医療ニュース
2011年6月3日 「WHOが携帯電話の危険性を公表」
2010年7月12日 「寝る前の携帯電話はNG」
2010年5月31日 「携帯電話で発ガン性は一応認められず・・・」
2010年1月23日 「携帯電話がアルツハイマーを予防?」
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|2013年7月7日 日曜日
2011年11月6日(日) 毎晩眠れない人は自殺リスクが4倍以上
不眠と自殺の関連が指摘されることがしばしばありますが(下記医療ニュースも参照ください)、これを裏付ける研究がノルウェーでおこなわれ、医学誌『SLEEP』2011年10月1日号に掲載されました(注)。
この研究はノルウェー科学技術大学(Norwegian University of Science and
Technology)によるものです。対象者は同国ヌール・トロンデラーグ(Nord-Trondelag)県在住の、1984年から1986年の時点で20歳以上であった約74,977人で、2004年12月31日までの約20年間にわたり追跡調査がおこなわれています。
対象者の調査開始時の平均年齢は49.6歳、うち男性は49%です。過去1ヶ月の不眠状況により4つのグループに分類されており、「毎晩(every night)」3%、「しばしば(often)」5%、「ときどき(sometimes)」31%、「なし」61%、となっています。
約20年間の追跡調査の結果、自殺者は合計188人で、「毎晩」不眠のある人は、不眠がまったくない人に比べると、自殺のリスクが4.3倍にもなることが判ったそうです。「しばしば」不眠のある人は2.7倍、「時々」不眠のある人は1.6倍となっており、不眠の程度が深刻になればなるほど、自殺のリスクが上昇しています。
睡眠薬については、自殺者の58%(109人)が服用しておらず、服用していたのは24%(46人)のみだったそうです。(残りの18%(33人)はデータが得られなかったそうです)
研究者は、今回の研究で導きだされた不眠と自殺の関連は50歳未満で顕著であったことを指摘しています。「高齢者の不眠症状は加齢によるものが多く日常生活に影響を与えないことが多いが、若年者では精神疾患の可能性がある」とコメントしています。
***************
不眠と自殺の関係は従来から指摘されてきたことですから、納得しやすい研究結果でしょう。この研究が重要な意味をもつのは、不眠があって自殺をした人のなかできちんと治療を受けていた(投薬を受けていた)人がわずか24%しかいなかった、ということです。
研究者が述べているように、若年者の不眠は自殺のリスクが高く放置すべきでない、ということを認識する必要があるでしょう。
尚、ノルウェーを含め「北欧は自殺者が多い」と考えている人がいますが、それは昔の話であり、現在はそれほど高いわけではないことを付記しておきたいと思います。2009年のデータではノルウェーの人口10万人あたりの自殺者数は11.9人(WHOのデータより)で、これは日本の半分以下です。
(谷口恭)
注:この論文のタイトルは「Sleeping Problems and Suicide in 75,000 Norwegian Adults:
A 20 Year Follow-up of the HUNT I Study」で、下記のURLで概要を読むことができます。
http://www.journalsleep.org/ViewAbstract.aspx?pid=28246
参考:
はやりの病気2010年10月号 「新しい睡眠薬の登場」
医療ニュース
2010年4月2日 「睡眠障害の自殺リスクは28倍」
2010年9月14日 「男性の睡眠不足は短命に・・・」
2008年6月30日 「睡眠不足はダイエットの強敵!」
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|2013年7月6日 土曜日
7/6 カネボウなどの化粧品の一部で白斑のトラブル
2013年7月4日、厚生労働省医薬食品局安全対策課及び消費者庁は、カネボウなど一部の化粧品メーカーが販売している化粧品で皮膚のトラブルが生じ、メーカーが自主回収を開始したことを発表しました(注1)。
問題となった化粧品は、(株)カネボウ化粧品、(株)リサージ、(株)エキップの3社から発売されている一部の製品(化粧水や乳液など)で、合計8つのブランド、54の製品が該当するそうです(注2)。問題の成分はロドデノール(4-(4-ヒドロキシフェニル)-2ブタノール)というもので、カネボウによれば、ロドデノールにはシミやソバカスを防ぐ効果があるそうです。
2013年5月、該当のスキンケア製品を使って被害を受けた利用者がいるとの報告が医療機関からカネボウに寄せられ、調査の結果、ロドデノールによる「白斑症」であることが判明し、これまでに同様の症例が合計39例報告されているそうです。
報道によりますと、これらのスキンケア商品は現在約25万人が使用し、約45万個が家庭などにあるとみられています。自主回収される化粧品の年間売上高は国内で約50億円、海外でも台湾やタイなどを中心に約10億円の売り上げがあるそうです。
*************
カネボウによれば、ロドデノールは2008年から2013年4月にかけて全国の百貨店や量販店で販売され、累計で436万個が出荷されているそうです。具体的なブランドをみてみると「ブランシール」や「トワニー」などカネボウ定番のものもあり、今後被害者が増えていくのではないでしょうか。
一般に、「白斑症」というのは皮膚疾患のなかでは治りにくく治療に苦労します。現時点では情報がありませんが、どのような人に起こりやすいのか、該当するスキンケア製品の使用を中止するだけで症状は改善するのか、中止だけで改善しないのであれば治療はどのようにすべきなのか、などの情報に今後注目していく必要があるでしょう。
(谷口恭)
注1:厚生労働省、消費者庁のホームページに詳細が掲載されています。
厚生労働省のホームページ
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000035xv0.html
消費者庁のホームページ(白斑症が生じた写真が掲載されています)
http://www.caa.go.jp/safety/pdf/130704kouhyou_1.pdf
注2:3つのメーカーはホームページで詳細を掲載しています。尚、参考までに、(株)リサージはカネボウの系列会社です。
(株)カネボウ化粧品のホームページ
http://www.kanebo-cosmetics.co.jp/information/
(株)リサージのホームページ
http://www.lissage.jp/information/
(株)エキップのホームページ
http://www.eqp.co.jp/info130704.html
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