医療ニュース

2013年7月9日 火曜日

2011年8月1日(月) 女性の寿命は5年ぶりに短く、男性は過去最高

 年々記録を更新している日本人の平均寿命ですが、昨年(2010年)は、女性では5年ぶりに短くなったようです。7月27日に厚生労働省が公表しています。

 同省によりますと、平均寿命が短くなった理由として「2010年は猛暑で体力が弱った高齢者が多くなくなったためではないか」と分析されているようです。尚、2005年に平均寿命が短くなったのはインフルエンザの大流行によるものとされています。

 数字を詳しくみてみると、2010年の日本人女性の平均寿命は86.39歳で、2009年の86.44歳から0.05歳短くなっています。2008年は86.05歳、2007年は85.99歳です。男性は、79.64歳でこちらは5年連続で過去最高を更新しています。2009年は79.59歳、2008年は79.29歳、2007年は79.19歳です。

 死因についてみていくと、三大死因(ガン、心疾患、脳卒中)で死亡する確率は男性53.97%、女性50.8%で、ほぼ半分を占めていることになります。2010年の特記すべき事項としては、熱中症があげられます。熱中症で死亡した人は過去最多の1,718人(女性は798人)にもなり、そのうち約8割が65歳以上だったそうです。2009年と比べると、心疾患や肺炎などの病気で死亡するケースも夏場を中心に大きく増加し、このことも平均寿命を縮める方向に影響したとみられています。

 しかし、女性の平均寿命が短くなったとはいえ、それでも26年連続で世界一を維持しています。2位は香港(85.9歳)、3位はフランス(84.8歳)です。男性は2009年の5位から4位に上がっています。1位は香港(80.0歳)、2位はスイス(79.8歳)、3位はイスラエル(79.7歳)となっています。

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 平均寿命を別の角度からみてみましょう。「75歳まで生きる割合」を考えたとき、男性72.1%、女性86.5%となります。「95歳まで生きる割合」でみると、男性8.0%、女性23.0%となります。女性のおよそ4人に1人が95歳まで生きる、と聞くと改めて人類がかつて経験したことのない高齢化社会が到来していることを認識させられます。

 私がこの報道を聞いて意外に感じたのが、猛暑のせいで心疾患や肺炎が夏に増えた、ということです。私の勤務医の頃の経験から、こういった疾患は冬に多いという印象があったからです。高齢者の方や高齢者と一緒にお住まいの方は、”節電”をほどほどにして快適な環境に気を配るべきでしょう。

(谷口恭)

参考:医療ニュース
2010年7月28日 「日本人の寿命がさらにさらに長く」  
2009年7月18日 「日本人の寿命がさらに長く」
2008年8月4日 「長寿記録更新!女性は23年連続世界一」

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2013年7月9日 火曜日

2011年8月5日(金) 黄砂で脳梗塞のリスクが上昇

 黄砂の被害というと喘息やアレルギー性鼻炎、結膜炎、皮膚炎などが多いことはよく知られていますが、脳梗塞のリスク上昇にもなるという見解が、7月31日に京都で開催された日本脳卒中学会で報告されたようです。(報道は7月31日の日経新聞)

 この調査は九州大学と国立環境研究所の研究グループによっておこなわれています。1999年6月~2009年3月に、福岡県の7つの病院に脳梗塞で運ばれた救急患者6,352人について調べられています。気象庁のデータから、黄砂の飛来した日と救急患者の関係を調べたところ、脳梗塞の急患は、黄砂が飛んでいない時期に比べ、前3日間に黄砂が観測されていると7.5%増えていたそうです。

 脳の太い血管が詰まって言語障害や手足のマヒを招く重症型に限ってみれば、発症リスクが1.5倍にもなるそうです。さらに、飲酒があれば2.5倍、喫煙があれば2倍にもなるそうです。

 なぜ黄砂で脳梗塞が起こるのでしょうか。研究チームは次のように考えています。

 黄砂には直径4マイクロメートル(4/1000ミリメートル)ほどの微粒子が多く含まれ、肺の奥にまで入り込みます。黄砂に含まれる汚染物質や微生物によって過剰な免疫反応が起こり、肺の奥の血管の内側についた脂肪の塊(かたまり)がはがれ、この塊が脳の血管に飛んでいって詰まらせて脳梗塞となるというストーリーです。

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 黄砂は中国大陸からとんできます。今年のゴールデンウィーク前後には西日本全域で大量の黄砂に見舞われ、太融寺町谷口医院にも連休明けには黄砂が原因と思われる、咳・鼻炎・結膜炎・皮膚炎の患者さんが急増しました。6月に入り黄砂の飛散が落ち着くと、自然にこのような症例は減っていきました。

 私の印象で言えば、花粉による咳や鼻炎症状に比べると、黄砂が原因のものは症状が強く、薬もあまり効きません。最も有効な対処法は、強い薬を使うのではなく、物理的に黄砂を遮断することです。つまり、窓を開けない、ゴーグルやマスクをできる限り利用する、できるだけ外出は控える、などです。

 太融寺町谷口医院の患者さんのなかには九州出身の人が(なぜか)多いのですが、彼(女)らに話を聞くと、大阪の黄砂は九州(特に福岡市と北九州市)に比べると「はるかにまし」と言います。

 ということは、九州北部に居住するということが、アレルギー疾患だけでなく脳卒中のリスクになる、ということになるかもしれません。ちなみに、海外には「黄砂は心筋梗塞のリスクになる」という報告もあります。

 心筋梗塞や脳梗塞は命に直結する疾患ですし、脳梗塞は助かったとしてもその後長年にわたり寝たきりの生活を強いられたり、話せない・食べられないなどの後遺症を残したりすることがあります。

 中国大陸からの黄砂対策について、今後しっかりとした議論を重ねていくべきでしょう。

(谷口恭)

参考:黄砂情報は気象庁のウェブサイトで見ることができます。下記URLを参照ください。

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2013年7月9日 火曜日

2011年8月9日(火) 身長が高いとガンになりやすい

 先日は「身長が低いと脳卒中になりやすい」という研究を紹介しましたが、今度は身長の高い人が気になる研究です。「身長が高いとガンになりやすい」というもので、イギリスの研究者によるものです。医学誌『Lancet Oncology』の2011年7月21日号(オンライン版)に掲載されています(下記注参照)。

 この研究では、1996~2001年に英国で実施された「Million Women Study」というデータが分析されています。約130万人の対象となった中年女性は、一部の皮膚ガンを除く他のガンにかかったことがないということが条件になっており、さらに研究開始時に乳癌スクリーニング検査が実施されています。対象者の追跡は平均9年間おこなわれています。対象者は身長によって、低いグループから高いグループまで合計6つのグループに分けられています。

 その結果、身長の高い女性は、多くのガンのリスクが有意に高く、身長が増えるにつれてそのリスクが増加していたそうです。さらに、過去の身長に関する10件の研究について再検討した結果、ヨーロッパ、北米、アジア、オーストラリアなどの集団でも同様の関連性が認められたそうです。

 なぜ身長が高いとガンのリスクが上昇するのかの説明として、研究者は、身長の高い人は成長関連ホルモンのレベルが高く、それがガンのリスクの増大につながっている可能性を指摘しています。
 
 しかし、研究者らは、同時に、「背が伸びないように努力したり、長身の人が追加のガン検診を受けたりする必要はない」と述べています。さらに、「身長に関わらず、禁煙し、適正体重を維持し、推奨されるガン検診を受けることによってガンのリスクを軽減できることに変わりはない」と付記しています。

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 私が今回の研究で気になるのは、(上には述べませんでしたが)身長が高い女性ほどアルコール摂取量が多く、子どもの数が少なく、肥満・喫煙の比率が低く、裕福で活動的である傾向があったとされていることです。

 先日紹介しました「身長が低いと脳卒中になりやすい」という研究では、低身長のグループは、身体活動量が少なく、肥満や高脂血症、喫煙、飲酒量が多いなどの特徴があったと報告されています。さらに、低身長と教育レベルや職業との関連性も指摘されています。

 これらを合わせて考えると、身長の低い人には肥満と喫煙が多く、身長の高い人が社会的に裕福ということになってしまいます。果たしてそんなことがあるのでしょうか。

 今回のイギリスの調査は女性を対象としたものです。今後男性も含めたさらなる研究を待ちたいと思います。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「Height and cancer incidence in the Million Women Study:
prospective cohort, and meta-analysis of prospective studies of height and total cancer risk」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://www.thelancet.com/journals/lanonc/article/PIIS1470-2045%2811%2970154-1/abstract

参考:医療ニュース2011年7月26日「身長が低いと脳卒中になりやすい」

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2013年7月7日 日曜日

2011年8月26日(金) ビタミン剤で発ガンのリスク上昇

 ビタミン剤を飲むとガンのリスクが上昇する・・・

 8月25日、このような意外な調査結果が国立がん研究センターから発表されました。(報道は同日の共同通信、日経新聞など) この研究は、1990年~2006年、40~69歳の男女約63,000人を対象とし、調査はアンケート方式でおこなわれています。調査期間にガンに罹患した人は4,501人だったそうです。

 週に1日以上、1年間以上ビタミン剤を摂取した経験のある人は、まったく摂取したことがない人に比べて発ガンのリスクが17%も高かった、という結果がでています。ただし、サプリメントの作用と発がんとの因果関係は明らかにはなっていません。

 この調査ではガン以外に、心筋梗塞などの循環器疾患についても調べられています。男性ではビタミン剤摂取に差は出なかったものの、女性では摂取している人はしていない人の6割程度にリスクが低下した、という結果がでています。

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 ビタミン剤を飲んでいる人で発ガンのリスクが上昇するのは、ビタミン剤のせいではなく、元々不健康な人がビタミン剤を飲んでいるからではないか、という意見があるようですが、それならば、なぜ循環器疾患のリスクが下がるのかを説明できません。

 やはり、未知のメカニズムで、ビタミン剤がガンのリスクになっている可能性がある、と考えるべきでしょう。異論があるものの、βカロチンやビタミンEが肺ガンのリスクを上昇させるという報告もありますし、さらなる研究を待ちたいところです。

 最も重要なことは、ビタミンは食事から積極的に摂るべき、ということです。日々の食事をおろそかにして安易にビタミン剤に頼ろうとすると痛いしっぺ返しを受けるかもしれない、と考えるべきでしょう。

(谷口恭)

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2013年7月7日 日曜日

2011年8月29日(月) タバコの危険性は男性より女性

 タバコを吸う女性が心臓発作を起こすリスクは25%高く、肺ガンのリスクは2倍・・・。

 これはアメリカでおこなわれたいくつかの研究をまとめたもので、医学誌『Lancet』2011年8月11日号(オンライン版)に掲載されています(注)。

 この調査では、喫煙者と非喫煙者の心疾患リスクを検討した過去研究のデータを収集し、メタアナリシスと呼ばれる分析方法を用いてすべてのデータを検討し直しています。対象者は合計3,912,809人で、そのうち心疾患を有していたのが約67,000人となっています。男女差を検討すると、喫煙する女性は男性に比べて心臓発作を起こすリスクが25%高いことが判明したそうです。女性の喫煙期間が1年延長するごとに、同じ期間喫煙する男性に比べてリスクが2%増大するという結果もでたそうです。

 また、喫煙女性では肺ガンによる死亡リスクが男性の2倍にもなることも明らかになったそうです。

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 同じタバコでも女性の方が不利・・・、と言われると不平等のような気もしますが、大規模調査でこれだけはっきりとした結果がでているのですから、男女間の生理学的な差異が原因となっていると考えるべきでしょう。

 もちろんこの結果は、男性は喫煙してもOK、というものではありません。ここ数年間は世界規模で禁煙運動が盛んになり、その反動からか、愛煙家の権利を奪うな、という意見も散見されますが、私自身としては医師としても元愛煙家としても、すべての人に禁煙をすすめたい、と考えています。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「Cigarette smoking as a risk factor for coronary heart disease in women
compared with men: a systematic review and meta-analysis of prospective cohort studies」で下記のURLで概要を読むことができます。

http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2811%2960781-2/abstract

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2013年7月7日 日曜日

2011年8月30日(火) テレビの見過ぎで寿命が短く

 1日6時間以上テレビを見ると寿命が5年短くなる・・・

 オーストラリアでおこなわれたこのような研究が医学誌『British Journal of Sports Medicine』2011年8月15日号(オンライン版)に掲載され話題をよんでいます(注)。以前にもオーストラリアで同じ様な研究がありましたが(下記医療ニュース参照)、同国ではよほどテレビに依存する人が多いのでしょうか。

 今回の研究では「オーストラリア糖尿病・肥満・生活習慣研究」と命名された研究に参加した25歳以上の男女約11,000人のデータが用いられ、調査内容には1週間のテレビ視聴時間が含まれています。

 調査結果を要約すると、1日に6時間以上テレビを見る人が全体の1%で、この人たちは、まったくテレビを見ない人に比べると4.8年も寿命が短縮される、となっています。また、テレビを見る時間が1時間増えるごとに寿命は21.8分ずつ短くなるとも試算されています。

 なぜテレビの見すぎが寿命と関係しているかについて、研究者らは、テレビの前から動かないことで、間食が増え運動不足となり生活習慣病のリスク上昇になっている可能性を指摘しています。

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 イギリスでおこなわれた別の研究では、テレビの見すぎは心臓病のリスクとなり、しかも運動をしてもリスクは軽減されないとの結果がでていました。(下記医療ニュース参照)

 私の知る限り日本人を対象とした同様の研究はないのですが、日本人にも同じことが言えるのでしょうか。また、日本を含む世界中でインターネット中毒者が増えていますが、やはり寿命が短くなるのでしょうか。今後の研究を待ちたいと思います。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「Television viewing time and reduced life expectancy: a life table
analysis」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://bjsm.bmj.com/content/early/2011/08/01/bjsm.2011.085662.abstract?sid=2ed8ab07-
c785-4eff-8d37-2d17cc766ec4

参考:医療ニュース
2010年1月25日「テレビの見すぎが寿命を縮める?」
2011年1月14日「2時間以上のテレビやパソコンは心臓病のリスク」

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2013年7月7日 日曜日

2011年9月2日(金) チャンピックス服薬者の意識障害

 厚生労働省は8月30日、禁煙補助薬のチャンピックス(一般名はバレニクリン)を服薬した人が意識障害を起こした事例が2008年5月から2011年4月の間に6例報告されたことを発表しました。6例は40~70代の男女であり、そのうち3例は車を運転中に事故を起こしていたと発表されています。

 同省は、チャンピックス販売元のファイザー製薬に対し、使用上の注意の重大な副作用欄に「意識障害」を加えるよう指示した、と報道されています。(報道は8月31日の毎日新聞、共同通信など)

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 チャンピックスによる意識障害は、日本発売前から海外では発生例が報告されており、そのため米国ではパイロットは服用してはいけないことになっているはずです。

 太融寺町谷口医院にも、因果関係ははっきりしないものの、チャンピックスでぼーっとしたような気がする、という患者さんがおられたため使用を中止してもらったことがあります。(ファイザー製薬にも報告しています)

 これまで日本でチャンピックスを服用した人はおよそ414,000人だそうです。このなかの6人に起こったということですから、意識障害は10万人に1~2人に起こりうる、という計算になります。この数字は大きくはないでしょうが、やはり車の運転などをおこなう人は充分注意すべきでしょう。太融寺町谷口医院の患者さんにもさらに注意を促していきたいと思います。

(谷口恭)

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2013年7月7日 日曜日

2011年9月5日(月) イソフラボンは骨密度にも更年期にも無効

 大豆イソフラボンのサプリメント(以下イソフラボン)は、女性ホルモンに似た働きをしてかつ安全であるという理由から、骨粗しょう症の予防や更年期障害の症状軽減を目的として幅広く摂取されています。ところが、骨粗しょう症に対しても更年期障害に対しても治療にも予防にもならない、という研究結果が医学誌『Archives of Internal Medicine』2011年8月22日号(オンライン版)に発表されました(注)。

 この研究では、研究開始時点で骨密度が正常の45~60歳の女性248人が対象とされています。対象者を2つのグループにわけ、一方にはイソフラボンのサプリメントを服用(1日200mgを2年間)してもらい、もう一方にはプラセボ(偽薬)を服用してもらっています。尚、対象者は自分の服用するものがイソフラボンなのか偽薬なのか分からないようになっています。

 2年後に対象者の骨密度を測定したところ、2つのグループ間に差は認められなかったそうです。

 さらに、更年期障害の症状を聞き取りしたところ、顔面紅潮以外は症状にグループ間の差は認められていません。しかも、その顔面紅潮もイソフラボンを服用していたグループに多かったのです。(イソフラボン服用者の48%以上、プラセボ群の約32%に認められています) また統計学的な有意差はないものの、イソフラボンのグループの方が便秘を訴える人が多かったそうです。

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 骨粗しょう症の予防や更年期障害の治療にホルモン補充療法というものが注目されていた時代がありました。しかし、有用性と副作用について検証されたWHI(Women’s Health Initiative study)と命名された大規模調査で否定的な結論が出てから見方が変わりました。その否定的な結論とは、「浸潤性乳ガンのリスク上昇と、乳ガン診断が遅れる危険性」です。それでも症例によっては積極的に検討すべきという意見もあり、完全に否定されているわけではありませんが、この調査の結果が発表されてからは、かつてほどホルモン補充療法が積極的におこなわれなくなってきているのは事実です。

 その影響も受けて、「天然の女性ホルモン」とも言われるイソフラボンが一躍脚光を浴びだしたという経緯があります。しかし、今回のこの研究ではイソフラボンの有益性は否定されており、今後女性の骨密度対策や更年期障害対策の見直しが必要となるでしょう。

 それにしても、サプリメントの有益性を検討した研究では、残念ながら大半が否定的な結果が出されているような印象があります・・・。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは「Soy Isoflavones in the Prevention of Menopausal Bone Loss
and Menopausal Symptoms」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://archinte.ama-assn.org/cgi/content/abstract/171/15/1363?maxtoshow=&hits=
10&RESULTFORMAT=&fulltext=Silvina+Levis&searchid=1&FIRSTINDEX=0&resourcetype=HWCIT

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2013年7月7日 日曜日

2011年9月10日(土) 適度な飲酒がアルツハイマーを予防

 適度な飲酒、特にワインは、アルツハイマーを含む認知症のリスクを軽減させる・・・

 このような嬉しい研究結果が医学誌『Neuropsychiatric Disease and Treatment』8月号(オンライン版)に掲載されました(注)。

 論文によりますと、研究チーム(米国Loyola大学シカゴ校Stritch医学部)は、1977年以降に実施された合計143個の研究を分析しています。対象者は365,000人以上にのぼるそうです。

 その結果、適度の飲酒をする人は、アルツハイマーを含む認知症を発症するリスクが23%低いということが判ったそうです。その一方で、大量の飲酒は、逆に認知症のリスクを増大するとの結果もでています。(しかしこれは統計学的に有意なものではなかったそうです)

 なぜ、飲酒が認知症を予防するのかについて、研究チームは、アルコールが脳の血流や脳代謝を改善させる可能性を指摘しています。また、少量のアルコールで脳細胞に小さなストレスが与えられ、認知症の原因となる大きなストレスに対処する能力が向上するという説もあるそうです。

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 「適度」とはどれくらいかというと、論文では、「男性で1日2杯、女性で1日1杯」としています。認知症のリスクが上がるかもしれない「大量」は「1日3~5杯」とされています。また、お酒の種類では、「ビールや蒸留酒に比べてワインに高い効果があった」とされています。

 この手の研究で最も注意しなければならないのは、これは疫学であり個人には必ずしもあてはまるわけではない、ということです。つまり、すべての人が飲酒によって認知症のリスクが23%低下するわけではないのです。ある人は、飲酒でアルツハイマーを防げるかもしれませんが、別の人はまったくお酒に影響を受けない、ということもあるわけで、全体でみてみれば23%リスクが下がっていましたよ、という話です。

 ですから、お酒は楽しんで飲むことには私も賛成ですが、まちがっても認知症予防のみを目的とした飲酒はすべきではありません。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは「Moderate alcohol consumption and cognitive risk」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://www.dovepress.com/articles.php?article_id=8067

参考:医療ニュース
2010年8月23日「飲酒が関節リウマチに有効?」
2010年5月21日「飲酒によりリンパ系腫瘍のリスクが低減」
2010年4月8日「適度な飲酒は女性の体重増加を抑制」
2009年10月8日「酒飲みの女性は乳ガンになりやすい」
2009年5月26日「「孤独な酒」は脳卒中の危険性2倍」
2009年5月15日「お酒弱いのに飲酒・喫煙で食道ガンのリスク190倍」
2008年3月3日「お酒は憂さ晴らしに逆効果?!」

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2013年7月7日 日曜日

2011年9月26日(月) 中国でポリオが発生

 中国の厚生省が同国でポリオウイルスが検出されたことをWHO(世界保健機構)に通知し、これを受けたWHOは2011年9月1日に公表しました(注)。

 中国で検出されたポリオウイルスは合計4例で、いずれも新彊ウイグル自治区内の同一の県で確認されています。4例は生後4ヶ月から2歳の小児で、7月3日~27日の間に麻痺症状を呈しています。検出されたウイルスは、いずれもポリオウイルスの1型で、遺伝子検査により、これらのウイルスはパキスタンに常在するタイプとの関連が明らかになっているそうです。
 
 中国ではポリオウイルスの野生株が最後に報告されたのは1999年でそのときはインドからの輸入症例だったそうです。また、同国内にもともと存在する野生株の最後の発症は1994年だったそうです。
 
 今回の報告を受けて、国際調査チームが同国に派遣され、接触者の検体採取やワクチン接種の状況の調査をおこなう予定だそうです。

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 日本では、ポリオウイルスの野生株が最後に検出されたのは1993年です。しかし、ワクチンの副作用でポリオウイルスに感染したときと同じような麻痺症状が出現することは(非常に稀ですが)あり得ます。(下記医療ニュースも参照ください)
 
 このために現在おこなわれている「生ワクチン」ではなく、安全性の高い「不活化ワクチン」の導入が待望されています。成人には生ワクチンは危険性が高く接種できないために必要な人は不活化ワクチンを接種しなければならないのですが、現在日本では販売されていません。
 
 ところで、生ワクチンはどれだけの期間有効なのでしょうか。現在もポリオウイルスの野生株が見つかるのはインドやその周辺国のパキスタンなどです。こういった地域に渡航するのであれば、日本を発つ前にまず抗体検査をおこない、抗体がなければ(小児期に接種したワクチンの効果が消えていれば)不活化ワクチンを接種すべきということになります。
 
 いったいどれくらいの人が抗体が消えているのかというデータは見たことがないので、私自身が最近自分自身の抗体を調べてみました。結果は、ポリオウイルスの2型には抗体が形成されていたものの1型と3型は陰性でした。私が幼少時に接種したポリオワクチンの効果はすでに切れているというわけです。もしも私が新彊ウイグル自治区やインド、パキスタンに渡航すれば、ポリオウイルスに感染するかもしれないということになります。
 
 現在議論されている不活化ワクチンが早急に承認されることを願いたいと思います。

(谷口恭)

注:この発表は下記のURLで読むことができます。
http://www.who.int/csr/don/2011_09_01/en/index.html

参考:医療ニュース
2010年2月22日 「神戸の9ヶ月男児がポリオを発症」
2011年5月30日 「不活化ポリオワクチンがついに導入か」

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