医療ニュース
2011年1月14日(金) 2時間以上のテレビやパソコンは心臓病のリスク
テレビやコンピュータなどの余暇で1日に2時間以上を過ごすと全死亡と心血管疾患のリスクが大幅に高まる。しかも、そのリスク上昇は運動をしていても変わらない・・・。
このような研究がロンドン大学より発表されました。(論文は医学誌「Journal of the American College of Cardiology」の2011年1月18日号で発表されています。下記注を参照ください)
この研究は英国在住の35歳以上の男女4,512人(そのうち男性は1,945人)を対象としており、余暇で画面を見る時間が、2時間未満、2~4時間、4時間以上の3つのグループに分け、さらに中強度から高強度の身体活動を行っているかどうかも調べています。また、体重や、コレステロールなどの値、喫煙の有無、糖尿病や高血圧などの有無が影響を受けないように調節して解析を加えています。
調査期間中に死亡したのは325例、心血管疾患(心筋梗塞など)に罹患したのは215例でした。これらを分析した結果、運動の有無には関係なく、画面を見る時間が4時間以上のグループは、2時間未満のグループに比べて全死亡で1.48倍、心血管疾患は2.25倍にもなっていることがわかりました。2~4時間のグループも2時間未満に比べると有意にリスクが上昇しているようです。
この結果を踏まえて、研究者らは、心血管疾患予防のためには身体活動の改善に加え、余暇の坐位時間を制限するガイドラインを含んだ推奨を早急に行う必要がある、と提唱しています。
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運動しているかどうかに関係なく、画面の前に長時間座っているだけで心血管疾患のリスクが上昇するというのは意外なような気もします。運動の効力を過信しすぎてはいけないのでしょう。
尚、同じような研究結果を過去に紹介したことがあります。その研究でも、運動に関係なく長時間のテレビが寿命を縮めるという結果が導かれています。下記の医療ニュースを参照ください。
今回紹介した論文で分かりづらいのは、何をもって「余暇」とするかです。原文では、Screen-Based Entertainment Timeとなっていますが、インターネットを使って調べ物をするような時間は「余暇」に含まれるのかどうかが分かりません。例えば、インターネットを使って夏休みに訪れる旅行先の情報を調べるのは「余暇」なのでしょうか。一方、仕事で必要な情報をインターネットで収集するのは余暇ではなく「仕事」だと思いますが、では、「余暇」と「仕事」は厳密にどうやって区別するのでしょう。
もしも「仕事」でインターネットを閲覧することも心血管疾患のリスクになるとすれば、多くの人が仕事内容を見直さなければならなくなるかもしれません。
谷口恭
参考: 医療ニュース2010年1月25日「テレビの見すぎが寿命を縮める?」
注:この論文のタイトルは、「Screen-Based Entertainment Time, All-Cause Mortality,
and Cardiovascular Events」で、下記のURLで概要を読むことができます。
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