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2026年7月23日 生まれるなら長男か長女が有利な理由は感染症

 旧約聖書『創世記』に登場する「カインとアベルの物語」は、弟アベルに嫉妬した兄のカインがアベルを殺害する話です。この話が実際の現象を象徴しているのだとすれば、弟に生まれた方が有利なように思えますが、実際には兄や姉に生まれる方が二番目以降に生まれるよりも有利なようです。

 学術誌「American Economic Association」に2026年7月に掲載された論文「家族内の病原体:家庭内での疾病伝播がもたらす短期的・長期的な影響(Germs in the Family: The Short- and Long-Term Consequences of Intrahousehold Disease Spread)」によると、その原因はなんと「感染症」です。今回はこの画期的な論文を紹介しますが、その前に長男長女が2番目以降に生まれるよりもどれだけ有利かをみておきましょう。

 まずは「教育期間が長い」が挙げられます。下のグラフをみればあきらかなように、何人兄弟であっても長男か長女が最も教育期間が長いことが2005年の学術誌「The Quarterly Journal of Economics」ですでに示されています。

 この論文で示されたのは、単に教育期間の長さだけであはりません。2番目以降に生まれると、長男長女に比べて、生涯所得(earnings)、雇用(employment)、10代での妊娠(teenage pregnancy)といった面で、より不利な状況にあることが明らかになったのです。

 では、先述した「その原因が感染症」とする論文をみていきましょう。この研究の対象者は1980年以降に生まれたデンマークの子供約120万人で、政府の記録に基づき成人期に至るまでが調べられました。その結果、まず分かったのは、「2番目以降に生まれると、生後1年以内に急性呼吸器疾患で入院する確率が、長男長女に比べて2~3倍高い」ということです。この差は生後1歳半くらいまで続きます。下の2つのグラフを参照ください。

 2番目以降に生まれて、特に呼吸器疾患に罹患しやすいのは11月から1月、つまり冬に生まれた子供です。下の右側のグラフが示すように、11月~1月に生まれた2番目以降に生まれた子供は呼吸器疾患で入院するリスクが激増します。興味深いことに、左側のグラフが示すように、長男長女であれば冬に生まれても特にリスクは上昇しません。

 通常、呼吸器疾患で入院しても死亡したり後遺症を残したりするリスクはそう高くありません。ならば乳幼児期を乗り越えれば、二番目以降に生まれても長男長女の利点との差はなくなるのかといえば、そういうわけでもありません。成人してからの収入も不利なことが明らかになったのです。下の図が示すように、長男長女との収入差がはっきりとしています。

 そして、さらに興味深いことに、2番目以降に生まれた子供を比較すると、冬に生まれると収入が大きく下がることが分かったのです。先ほど、呼吸器疾患で入院しても特に後遺症は残さないと述べましたが、このようなデータを見せつけられると、脳になんらかの障害が残るのかもしれません。

 もしも幼少期の感染が脳に影響するのだとすれば、2番目以降に冬に生まれれば精神疾患を発症するリスクも上昇するのでしょうか。論文によるとその答えは「イエス」です。感染症に罹患する頻度が高かった弟や妹は、頻度が低かった場合と比べて、精神科の受診回数が統計的に有意に増加していたのです。

 では2番目以降に冬に生まれると絶望しなければならないのでしょうか。なんとか挽回できる方法はないのでしょうか。興味深いことに、この論文ではその「答え」になるかもしれない現象も取り上げられています。それは「母乳」です。母乳を6か月以上与えられた場合、疾患に罹患するリスクが大きく低下するというのです。下のグラフが示すように、授乳期間が長ければ長いほど罹患リスクが低下しています。

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 今回紹介した論文をまとめると、「長男長女に比べ、後に生まれるほど教育期間が短く、幼少期に感染症に罹患しやすく、成人後の収入が低く、精神疾患に罹患しやすい。母乳飼育でそのリスクがいくぶん軽減する」となります。

 母乳に含まれる免疫関連の成分が感染症を予防するとした報告は多数あります。弟、妹を育てるときには特に母乳を考えるべきかもしれません。
 

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