医療ニュース

2013年7月2日 火曜日

2012年2月18日(土) インフルエンザなどの出席基準が見直し

 2012年2月16日、文部科学省は、インフルエンザに罹患した小中高生及び大学生の出席停止期間を「発症後5日を経過し、かつ解熱した後2日間」とすることを決定しました。3月中に省令(注1)を改正し、2012年4月1日から施行する予定です。
 
 インフルエンザの出席基準はこれまでは「熱が下がって2日たってから」とされていましたから、省令改正により欠席を強いる期間が長くなることになります。

 尚、幼稚園児については、低年齢ほど感染させる可能性がある期間が長いという理由から、「発症後5日を経過し、かつ解熱した後3日間」とされるようです。

 また、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)の出席停止期間が、現行の「耳下腺の腫れが消えるまで」から「腫れが出た後5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで」に見直されます。
 
 百日咳については、現行では「特有のせきが消えるまで」とされていますが、これに加え、「5日間の抗菌性物質製剤による治療終了まで」との条件が新たに追加され、これらのいずれかを満たせば出席が認められることになります。
 
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 インフルエンザの出席条件が、現行で「熱が下がって2日たってから」とされているのは、CDC(米国疾病管理局)が2009年10月に「解熱後最低24時間は自宅にいるように(remain at home until at least 24 hours after they are free of fever)」と発表(注2)したことに基づいていると思われます。それが、抗インフルエンザ薬が普及することにより、熱はすぐにさがったけれど少量のウイルスが咳などで排出されている期間があり、その期間の感染を防ぐのが今回の省令見直しの目的だと思われます。
 
 生徒や学生の場合は、省令が見直されても大きな問題は起こらないと思われますが、問題は会社員などの社会人です。社会人の場合は一定の基準がなく、これまでは「解熱後24時間」、「熱が下がって2日たってから」などの基準に従っている企業が多く、それほど問題はなかったと思われますが、今後「発症後5日経過」という学校保健法上の新しい基準に従うことにするとなれば、会社を長く休まなければならないことになります。連続で5日も休めないという社会人も少なくないでしょう。
 
 今後、それぞれの企業がインフルエンザに対する基準を決めることが必要になるでしょう。

(谷口恭)

注1:「省令」について補足しておきます。感染症の出席については「学校保健法」という法律に基づきますが、この法律そのものに出席停止期間が明記されると、今回のように期間変更をしたいときに国会での審議をおこない法改正の手続きを経なければなりません。そこで、具体的な出席停止期間はこの法律の下のレベルの「省令」で審議・決定できることにされているのです。省令であれば、学校保健法の場合、文部科学省内で審議・決定ができるというわけです。
 
注2:CDCのこのガイダンスは下記のURLで読むことができます。
http://www.cdc.gov/h1n1flu/guidance/exclusion.htm

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2013年7月2日 火曜日

2012年2月27日(月) 短時間の睡眠で糖尿病リスクが5倍以上に

 睡眠時間が5時間以下の人は、7時間以上の人と比べて糖尿病発症の危険性が5.4倍に・・・。

 これは医学誌『Diabetes Care』2012年2月号に掲載された研究発表で、研究は日本でおこなわれたものです(注)。

 この研究では、糖尿病に罹患していない35~55歳の男女3,570人が対象とされています。2003年から2007年まで追跡調査がおこなわれ、この4年間で121人が糖尿病を発症したそうです。睡眠時間との相関関係を調べると、睡眠時間5時間以下の人は、7時間以上の人と比べると、約5.4倍糖尿病を発症しやすいという結果になったそうです。
 
 この研究では、実際の睡眠時間以外にも、個々の睡眠に対する印象と糖尿病発症の関係が検討されています。「睡眠不足を感じている」とした人は、感じていない人より約6.8倍もリスクが高く、「夜中に目が覚めることが深刻な問題」とした人は、そうでない人より約5.0倍高かったようです。
 
 今回の研究の対象者で睡眠が5時間以下の人は、長時間労働者や、(看護師など)シフト勤務をしている人が多かったそうです。研究者は、「糖尿病の予防には食生活の改善や運動などだけでなく、質のいい適切な時間の睡眠を確保できるような職場の環境も重要」と述べています。
 
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 糖尿病には1型と2型がありますが、大半は2型であり、この研究も2型を対象としています。そして、2型糖尿病のリスクは、食事や運動などですが、遺伝的な要因もあります。また、子供の頃に肥満傾向にあった人は糖尿病のリスクが増えるという研究もあります。
 
 ということは、親族に糖尿病の人がいたり、子供の頃に肥満があったり、といった糖尿病のリスクがあると考えられる人は、職業を選ぶときに長時間労働や夜勤のある仕事はできれば避けるべき、ということになるかもしれません。(ただしこの研究では親や兄弟に糖尿病罹患者がいる人は対象とされていません)
 
 研究者も述べていますが、労働者がしっかりと睡眠がとれるように社会全体で職場の環境について考えるべきでしょう。

注1:この研究をおこなったのは、北海道大学と旭川大学に所属のKita Toshiko氏で、論文の
タイトルは「Short Sleep Duration and Poor Sleep Quality Increase the Risk of Diabetes in
Japanese Workers With No Family History of Diabetes」です。下記URLで論文の概要を読めます。
 
http://care.diabetesjournals.org/content/35/2/313.abstract?sid=6fb480db-0624-487e-b72c-5ca5f9c50b32

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2013年7月2日 火曜日

2012年3月2日(金) 減らない「いきなりエイズ」

 エイズを発症して初めてHIV感染に気付く、いわゆる「いきなりエイズ」が増えているということは過去に何度かお伝えしていますが、2月24日の厚労省の発表によりますと、2011年の1年間(正確に言えば2010年12月27日から2011年12月25日の約1年間)のいきなりエイズの報告は467件であり、過去最高を記録した2010年の469件と同水準となります。(尚、この467件というのは「速報値」であり、最終的にはさらに増えて過去最多を更新する可能性もあります)
 
 いきなりエイズではない新規にHIV感染が発覚した症例については、1,019件とされており、これは前年の2010年から56件の減少となります。新規HIV感染発覚が最も多かったのは2008年で、このときは1,126件を記録しています。
 
 2011年の1年間に保健所などで行ったHIV抗体検査の件数は131,243件で、前年の2010年から313件増えてはいますが、最多であった2008年からは45,913件減っていることになります。相談件数は163,006件で、前年から1,258件の減少となります。
 
 いきなりエイズの感染経路をみてみると、同性間の性的接触が54%(250件)、異性間の性的接触が28%(131件)となっています。一方、(エイズを発症していない)HIV感染が発覚した例では、同性間の性的接触が67%(685件)、異性間の性的接触が20%(208件)とされています。母子感染も1例報告されています。
 
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 いきなりエイズが過去最高水準で、新規のHIV感染は減っているということは、感染者全体が減っているということを意味するのではなく、つまるところ、HIVへの関心が薄れ、検査をせずに、エイズを発症するまで、まさか自分がHIVに感染するなんて考えてもみなかった・・・、というケースが増えているということです。
 
 太融寺町谷口医院でもHIV感染が発覚した症例は2008年をピークにやや減少傾向にはありますが、発熱、下痢、倦怠感、皮疹などから、エイズはまだ発症していないものの、そういった症状からHIV感染が発覚したという症例(私はこれを「いきなりHIV」と呼んでいます)が2009年あたりから増えています。(詳しくは下記コラムを参照ください)
 
 いきなりエイズとエイズを発症していないHIVの感染ルートを比較すると、いきなりエイズの方が異性間での感染が高い傾向にあります。これは、HIVに無関心で検査に行っていないのは異性愛者に多い、ということを意味します。
 
 特に異性愛者の方で、危険な性交渉や血液感染の可能性のある行為(特に海外でのタトゥーやボディピアス)のある人は、無症状であったとしても検査をしておくべきでしょう。
 
(谷口恭)

参考:
NPO法人GINA GINAと共に第64回(2011年10月) 「増加する「いきなりHIV」

医療ニュース
2011年9月29日 「四半期で新規エイズ発症者が過去最多」
2011年5月27日 「エイズ発症者が過去最多に」

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2013年7月2日 火曜日

2012年3月9日(金) 禁煙後も5年間は糖尿病のリスク

 喫煙者はタバコを吸わない人に比べて糖尿病になりやすいことはよく知られています。よく言われるのは、喫煙者が糖尿病になるリスクは、タバコを吸わない人に比べ、男性で1.3倍、女性で3倍になる、というものです。ですから、健康診断などで「糖尿病予備軍」などと言われたことのある人に対しては、我々は禁煙を特に強くすすめています。
 
 では、禁煙に成功すれば糖尿病のリスクは直ちに減るのか、という疑問がでてきますが、どうもそういうわけではなさそうです。

 禁煙をしてもその後5年間は糖尿病のリスクが高い・・・

 これは、国立保健医療科学院(National Institute of Public Health)のShino Oba氏らの研究結果で、医学誌『PLoS one』2012年2月13日号(オンライン版)に掲載されています(注)。
 
 この研究では、10都府県の40~69歳の男女およそ59,000人と対象とし、1990年~2003年の間、追跡調査がおこなわれています。

 結果は、男性の場合、禁煙後5年間で糖尿病になるリスクは、タバコを吸わない男性の1.42倍となっています。興味深いことに、禁煙前に比べ体重増加が少ない男性も、タバコを吸わない男性に比べて糖尿病の危険性が高まる、という結果が出ています。
 
 禁煙前に1日25本以上のタバコを吸っていた男性が糖尿病を発症する危険性は、タバコを吸わない男性の2.15倍と高く、本数が多いほど危険性が高くなることを示しています。ただし、禁煙5年後以降は、非喫煙者との差はほとんど認められていないようです。
 
 女性については、禁煙後の糖尿病のなるリスクは、タバコを吸わない女性の2.84倍という高い数字が出ていますが、こちらは調査対象者が少なく、信憑性は高くないと研究者はみているようです。
 
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 この論文を読んで私が感じたことは、禁煙後の生活指導を今よりも厳しくしなければならないかもしれない、というものです。

 というのは、禁煙は簡単ではありませんし、多くの人が禁煙後しばらくは体重増加が続くからです。私は、「禁煙という大変なことを実践しているんだから、好きなものを食べることには少々甘くなってもいいのではないですか」と話すことが多いのですが、禁煙後に糖尿病のリスクが上がるのであれば、そのような”のんきな”ことは言ってられない、ということになります。
 
 生活習慣からおこる糖尿病に罹患するのは若いときよりも年を重ねてからです。ということは、禁煙開始は早ければ早いほどいい、ということをこの研究は物語っています。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「Smoking Cessation Increases Short-Term Risk of Type 2 Diabetes
Irrespective of Weight Gain: The Japan Public Health Center-Based Prospective Study」で、下記のURLで全文を読むことができます。
 
http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0017061

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2013年7月2日 火曜日

2012年3月13日(火) ビタミンE過剰摂取で骨粗しょう症に

 ビタミンEの取りすぎで骨粗しょう症に・・・。

 サプリメント愛好家にはショッキングなこの研究は日本人によるものです。慶応大学の竹田秀(Shu Takeda)氏らの論文が医学誌『Nature Medicine』2012年3月4日号(オンライン版)に掲載され話題を呼んでいます(注1)。
 
 この研究の概略を紹介すると、ラットに通常のビタミンE摂取量の5倍にあたる量を8週間与えたところ、破骨細胞という骨を壊す働きのある細胞が活性化し、骨を壊す働きが4割強まったそうです。正常のラットと比較すると骨量が減少して骨粗しょう症になっていたとのことです。
 
 研究者によると、今回のラットの実験に用いたビタミンEの量は、ヒトに換算すると1,000mgに相当するそうです。

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 骨のイメージからは、皮膚や筋肉のように細胞分裂をしているというのは想像しにくいですが、実際には、骨をつくる「骨芽細胞」という細胞が次から次へ新しい骨をつくり、骨を壊す「破骨細胞」という細胞がせっせと骨を壊していって、全体としてバランスがとれています。骨芽細胞が骨をつくるのをサボっても、破骨細胞ががんばりすぎても、結果として骨がもろくなり骨粗しょう症が起こります。今回の研究では、ビタミンEを摂りすぎることで破骨細胞が働きすぎて、結果として骨粗しょう症がおこってしまうというものです。
 
 しかし、ビタミンE1,000mgというのはそれほど過剰とは思えない量です。厚生労働省が定めるビタミンEの摂取上限は、年代・性別で異なりますが、最大は30~49歳の男性で1日当たり900ミリグラムとされています(注2)。これから考えると1,000mgというのは、通常の食事からでも摂れる程度のものであり、少しのサプリメントで簡単に超えてしまう可能性があります。
 
 ビタミンEは90年代の頃は「若返りサプリメント」として脚光をあびていましたが、最近では発ガンリスクも指摘されていますし(下記医療ニュース参照)、以前は心臓疾患を予防すると言われていましたが、実際には予防どころかビタミンEのサプリメントが逆にリスクになるとの研究もあります。さらに骨粗しょう症のリスクがあるとなれば、ビタミンEを食事からしっかり摂るべきことには変わりありませんが、サプリメントを飲む意味はもはやないのではないでしょうか。
 
(谷口恭)

注1:この論文のタイトルは、「Vitamin E decreases bone mass by stimulating osteoclast fusion」で、下記のURLで概要を読むことができます。
 
http://www.nature.com/nm/journal/vaop/ncurrent/full/nm.2659.html

注2:独立行政法人国立健康・栄養研究所が運営している「「健康食品」の安全性・有効性情報」というサイトに、1日あたりの摂取量などを含むビタミンEに関する詳しいことが書かれています。下記URLを参照ください。
 
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail176.html

参考:医療ニュース
2011年11月14日 「ビタミンEの発ガンリスク」
2011年8月26日 「ビタミン剤で発ガンのリスク上昇」

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2013年7月2日 火曜日

2012年3月21日(水) 日本の自殺者、14年連続で3万人超

 2011年の年間の自殺者が30,651人になることを、3月9日、警察庁が発表しました。これで、1998年から14年連続で3万人を越えたことになります。

 ただし、3万人を超えるこの14年間のなかでは最も少ない数字となり、前年(2010年)の31,690人からは1,039人減少したことになります。ただし、女性は前年より289人増加しており全体の31.6%となっています。
 
 年齢別では、60代が最多で5,547人、以下50代、40代と続きます。30~60代は前年より減少していますが、特筆すべきなのは20歳未満と20代では増加していることです。
 
 自殺の原因・動機は、「健康問題」が最多で14,621人、以下「経済・生活問題」「家庭問題」と続いています。

 2011年の自殺は震災が影響を与えたようです。

 内閣府自殺対策推進室によりますと、自殺者数は例年3月にピークを迎えるそうです。企業の決算期と関係があると考えられているのです。2011年の自殺動向は、例年と異なり、3月まで低めに推移し、5月に前年比21.2%増の3,375人と急増しています。当局はこの原因を「震災を契機に経済リスクが広がり、特定の層(労働者の層)に影響した可能性がある」とみているようです。
 
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 厚生省は2010年の自殺者数を29,524人と発表しており、警察庁の「14年連続3万人越え」という発表と矛盾しますが、これは警察庁と厚生労働省で自殺者数のカウントの仕方が異なるからです。厚生労働省は「死亡届」を基に人口動態の統計を取るのに対し、警察庁は、死亡届が出された後に、自殺と判明したケースも「自殺者」に含めています。

 震災が影響して自殺者が増加したというのは大変悲しいことです。今後震災関連の自殺者をなくすために我々ができることを考えていくべきでしょう。

 今回の発表で私が最も懸念しているのが、20歳未満と20代で自殺者が増加している、ということです。教育や医療に携わっている者が特に注意しなければならないのは言うまでもありませんが、若い世代と付き合いのある者全員がこの問題に正面から向き合うべきでしょう。
 
(谷口恭)

参考:医療ニュース
2011年6月3日 「出生率上昇、人口減12万人、自殺3万人以下に」
2011年3月8日 「日本の自殺者、13年連続で3万人超」

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2013年7月2日 火曜日

2012年4月2日(月) HbA1Cの基準が変更

 糖尿病の状態を知るのに最もよく使われる指標のひとつであるHbA1C(ヘモグロビンエーワンシー)の基準値が今月(2012年4月)から変更されます。糖尿病の状態が同じであれば今月からの検査では0.4%ほど高く表示されることになります。糖尿病の診断基準は「6.1%以上」ということになっていますから、これが「6.5%以上」に引き上げられることになります。
 
 なぜこのような事態になったかというと、世界的におこなわれている測定方法(NGSP)と日本でおこなわれている方法(JDS)が異なるからです。このため、これまでは、HbA1Cの数値を検討するときは、それが日本式で測定されたものなのか、海外式で測定されたものなのかを見極めなくてはなりませんでした。日本から海外に行く人、海外から日本に来た人の間ではたいへんややこしかったわけです。
 
 これからはそのややこしさがなくなることになりますから、これは歓迎すべきなのですが注意点もあります。

 ひとつは、糖尿病の診断基準が甘くなるわけではない、ということです。例えば、3月の検査でHbA1Cが6.1%の人が、診断基準が6.1から6.5%になった、ということを聞いて「まだ余裕がある」と感じるのは間違いです。
 
 また、当分の間混乱を招きそうなのは、国がおこなっているメタボ検診ではしばらくの間は日本式の古い測定方法を用いる、ということです。このため、検診では低い数字が出ていたのに、医療機関で再検査をおこなうと高い数字がでた、ということになります。
 
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 当たり前の話ですが、今回の変更があるからといって、治療法がかわるわけではなく、生活習慣の見直しが必要な人はこれまで通り見直しの努力を続けていかなければなりません。
 
 太融寺町谷口医院に糖尿病(またはその予備軍)で通院されている人には、受診されたときに個別に説明させていただきます。

(谷口恭)

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2013年7月2日 火曜日

2012年4月13日(金) 東京では「いきなりエイズ」が大きく減少

 エイズを発症して初めてHIV感染に気付く、いわゆる「いきなりエイズ」が2011年に過去最高水準であったということを先月お伝えしましたが(下記医療ニュース参照)、東京では過去10年間で最少だったようです。
 
 東京都によりますと、2011年1年間で都内で新たに報告された「いきなりエイズ」は前年より23人少ない84人で、これは過去10年で最少となるそうです。東京都では、(エイズを発症していない段階で)新たにHIV感染が判った人は325人で、これは前年から77人減少しているそうです。
 
 感染者(合計409人)の内訳をみてみると、日本人男性353人、外国人男性30人、日本人女性19人、外国人女性7人となっています。年齢別でみてみると、いきなりエイズでは30~40代に多く、エイズを発症していない感染者は20~30代に多い傾向にあります。
 
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 東京都では、検査件数は前年より3%増加しているそうです。また、いきなりエイズも含めた新たにHIV感染が判った総数に対するいきなりエイズの割合は全国平均では31%なのに対し、東京都では21%とかなり低くなっています。
 
 これは、東京都では他道府県に比べて、HIVに対する啓発運動が功を奏して早い段階で検査を受ける人が増えているということを意味します。ということは、予防に関心をもつ人も増えていることが予想されますから、将来的には大きくHIV感染が減少することも期待できます。
 
 東京でHIVが新たに判る総数が大きく減少しているのにもかかわらず全国総数で減少していないということは、他道府県では東京都とは逆に増加傾向にあるということです。他道府県の医療者、教育者、行政に携わる者は東京都を見習わなければなりません。
 
(谷口恭)

参考:医療ニュース2012年3月2日 「減らない「いきなりエイズ」」

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2013年7月2日 火曜日

2012年4月14日(土) 携帯電話の脳腫瘍に関する米国の研究結果

 携帯電話の長時間の使用が神経膠腫(しんけいこうしゅ)と呼ばれる脳腫瘍のリスクになることが指摘される一方で、何ら関連性はない、とする意見もあり、現時点では決着がついていません。
 
 2011年5月31日、WHOは携帯電話の長時間の使用は発ガン性があるかもしれない(possibly carcinogenic)との見解を公表しました。しかし、その後発表されたデンマークの大規模研究の結果では「携帯電話は脳腫瘍のリスクに関係がない」とされています。
 
 そんななか、米国国立癌研究所が携帯電話と脳腫瘍との関連性を改めて調査し、その結果が医学誌『British Medical Journal』2012年3月8日号(オンライン版)に掲載されました(注1)。
 
 この研究では、1992年~2008年の間に神経膠腫の診断がついた18歳以上の非ヒスパニック系の白人24,813例が解析の対象とされています。1992~2008年の間に、アメリカの携帯電話の使用状況はほぼ0%から100%へと大きく変化していますが、この間に神経膠腫の発生率は全般的に変化していなかったそうです。
 
 この研究では、過去の2つの疫学研究と実際の発生率との比較検討がおこなわれています。2つの研究とは、1つが「スウェーデン研究(Sweden Study)」と呼ばれるもので、もう1つが「インターフォン研究(Interphone Study)」というものです。これらの研究はいずれも携帯電話の長期使用が神経膠腫のリスクを上昇させる可能性を示唆しています。
 
 スウェーデン研究の結果に基づいて米国での神経膠腫罹患者を推定した数字は実際の罹患者数と大きく乖離しており(最低でも40%は実際の罹患者は少なかったそうです)、同研究が指摘するようなリスク上昇はみられなかったそうです。
 
 一方、インターフォン研究との比較では、インターフォン研究で指摘されている一部の少数のヘヴィーユーザー(a small number of heavy users)での罹患率は米国での罹患者と統計学的に矛盾しないそうです。
 
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 この論文を読んだときに、スウェーデン研究が指摘するような神経膠腫のリスク上昇はないんですよ、ということはよく分かったのですが、インターフォン研究との比較が何を言いたいのか私にはよく分かりませんでした。
 
 インターフォン研究は発ガン性を示唆しているわけで、米国での実際のデータがこれに矛盾しないなら、米国のヘヴィーユーザーの間では発ガン性を認める、ということになるのではないか、と感じたのです。
 
 しかし、米国国立癌研究所(National Cancer Institute)のウェブサイトをみてみると、このニュースのタイトルを「携帯電話の使用で脳腫瘍のリスクは上がらない」と断定していますから(注2)、「発癌性なし」という結論を出しているのは間違いないようです。
 
 では、この米国の発表を受けてWHOがどのような見解をとるのか、今後の発表に期待したいと思います。

注1:この論文のタイトルは、「Mobile phone use and glioma risk: comparison of epidemiological
study results with incidence trends in the United States」で、下記のURLで原文(全文)を読むことができます。
 
http://www.bmj.com/content/344/bmj.e1147

注2:このニュースのタイトルは、「U.S. population data show no increase in brain cancer
rates during period of expanding cell phone use」で、下記のURLで本文を読むことができます。

http://www.cancer.gov/newscenter/pressreleases/2012/GliomaCellPhoneUse

参考:医療ニュース
2011年10月31日 「過去最大規模の研究で携帯電話と脳腫瘍に関連なし?」
2011年6月3日 「WHOが携帯電話の危険性を公表」

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2013年7月2日 火曜日

2012年4月27日(金) 白米は糖尿病のリスク

 白いご飯が好き、という人には悲しい研究結果です。(以前にも似た研究を紹介したことがあります。詳しくは下記「医療ニュース」を参照ください)

 白米を食べれば食べるほど2型糖尿病(注1)のリスクが上昇する・・・。これは医学誌『British Medical Journal』2012年3月15日号に掲載された論文(注2)で発表された、我々日本人にとってはショッキングな報告です。
 
 この研究は米国ハーバード大学公衆衛生学教室によっておこなわれています。これまでに発表された、白米と糖尿病の関連性について調べられた論文4つを総合的に分析(メタ解析)しています。4つの研究は、日本、中国、米国、オーストラリアのもので、対象者は合計352,384人になり、追跡年数は4~22年とされています。この間に、合計13,284人が2型糖尿病を発症しています。
 
 白米摂取と2型糖尿病のリスクについてまとめると、東洋人では、白米をよく食べる人はあまり食べない人に比べて相対リスクは1.55倍、西洋人ではよく食べる人はあまり食べない人の1.12倍となり、全体ではよく食べる人は食べない人の1.27倍とされています。
 
 尚、全体的に、男性より女性の方が、白米摂取で糖尿病のリスクが上昇する、という結論が導かれています。

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 よく食べる人、あまり食べない人、というのはどれくらいの量を指すのか気になりますが、4つの研究ではそれぞれ数字が異なっています。日本で行われた研究では、男性では315g/日以下を最低摂取群(あまり食べないグループ)、560g/日超を最高摂取群(よく食べるグループ)とし、女性では278g/日以下を最低摂取群、437g/日以上を最高摂取群と設定されています。(ご飯中盛りいっぱいでだいたい150gです)
 
 これに対し、中国では750mg/日以上を最高摂取群、500g/日未満を最低摂取群としています。一方、米国では112.9g/日以上を最高摂取群、5.3g/日未満を最低摂取群とし、オーストラリアでは(わずか)56g/日以上を最高摂取群、23g/日未満を最低摂取群としています。
 
 これらを考えると、この論文では、東洋人は西洋人に比べて白米の糖尿病のリスクが高いと言っていますが、基準となる量がまったく異なっているわけですから、東洋人がハイリスクとは言い切れないのではないでしょうか。
 
 しかし、他の穀物と白米を比べると、グリセミック指数(Glycemic Index)は、白米は64と高くなっています。他の穀物をみてみると、玄米は55、全粒小麦は41、大麦は25です。グリセミック指数は0~100で表され、高ければ高いほど食後の血糖値を上昇させやすくインスリンがたくさん分泌される指標です。(ブドウ糖は100です) ですから、白米が玄米や全粒小麦に比べると糖尿病を発症させやすいのは事実です。
 
 では白米が好きな人が糖尿病にならないようにするにはどうすればいいのでしょうか。当たり前の話となってしまいますが、カロリー過多に注意して、禁煙して、適度な運動をおこない、定期的な健診を受ける、ということになります。
 
(谷口恭)

注1 2型糖尿病というのは生活習慣からくる糖尿病と考えて差し支えありません。遺伝的な要素も多分にありますが、生活習慣の改善で大部分は予防することができます。2型に対し、1型糖尿病というのは比較的若年者に発症し、自己免疫疾患であることが多く、生活習慣とは直接関係ありません。
 
注2 この論文のタイトルは「White rice consumption and risk of type 2 diabetes: meta-analysis and systematic review」で、下記URLで全文を読むことができます。
 
http://www.bmj.com/content/344/bmj.e1454

参考:医療ニュース
2010年11月15日 「白いご飯で糖尿病のリスク上昇」
2010年6月20日 「白米→玄米で糖尿病のリスクが低下」
2012年3月9日 「禁煙後も5年間は糖尿病のリスク」
2011年2月4日 「1日1万歩で糖尿病のリスクが低下」

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