医療ニュース

2011年12月4日(日) ビールもワインと同じように心血管リスクが低下

 ビール党には朗報かもしれません。

 ワイン(特に赤ワイン)は適度に飲めば心筋梗塞などの心血管疾患のリスクを減らすことがよく知られています(注1)。「最も健康にいいお酒はワイン」のように語られることが多いように思われますが、ビールにもワインと同様の効果があるとの研究結果が医学誌『European Journal of Epidemiology』2011年11月11日号(オンライン版)(注2)で報告され話題を呼んでいます。
 
 この研究はイタリアの研究者によっておこなわれています。2011年3月までに欧米諸国やオーストラリアでおこなわれたアルコールと心血管リスクに関する合計18の研究を総合的に解析(メタ解析)しています。アルコールは、ビール、ワイン、蒸留酒(注3)に分けて検討されています。
 
 その結果、ワインは度を過ぎると心血管リスクが上昇しますが、適度であればリスクが低下していました。具体的には、1日あたり21グラム(グラスで1杯程度)の飲酒量で最もリスクが低下し、72グラム以上(グラス3~4杯以上)でリスク低下はなくなります。ビールでは、1日あたり43グラム(大瓶1本くらい)が最も心血管リスクが低下し、55グラム(大瓶1.3本くらい)でリスク低下がなくなります。
 
 要するに、少量から中等量であれば、ビールはワインと同じように心血管疾患のリスクが低下することが判ったということであり、ビールを含むお酒は少量なら身体にいいと言われることはこれまでにもあったけれども、今回のきちんとした研究でビールの効果が実証された、というわけです。
 
 しかし、蒸留酒ではそのような結果が出なかったようです。

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 ビール党には嬉しい研究結果に思われるかもしれませんが、私の周りのビール党や、太融寺町谷口医院に通院しているビール好きな人達の多くは大瓶1本ではすみません。なかには毎日2リットル以上を”日課”にしているという人もいます。そのような飲み方を続ければ心血管リスクを高めるということにはいくら注意してもしすぎることはないでしょう。また、一部には、少量のビールでも健康に有害であるとする研究結果があることも覚えておくべきでしょう。(下記医療ニュースも参照ください)
 
(谷口恭)
 
注1 フランス人は飽和脂肪酸が豊富に含まれる食事(要するにあぶらっこい肉料理)をよく食べるのにもかかわらず、虚血性心疾患にかかりにくいことが以前から指摘されており(これは「フレンチ・パラドックス」と呼ばれています)、この原因が赤ワインにあるとされています。
 
注2 この論文のタイトルは、「Wine, beer or spirit drinking in relation to fatal and non-fatal cardiovascular events: a meta-analysis」で、下記のURLで概要を読むことができます。
 
http://www.springerlink.com/content/8pu6001584m35146/

注3:蒸留酒とは、穀物などを発酵させて作った醸造酒を蒸留させてアルコール濃度を高めたお酒のことでスピリッツとも呼ばれます。この研究では、ウイスキー、ジン、ラム、テキーラ、ウォッカ、ブランデーなどを指していると思われますが、分類としては焼酎(泡盛含む)も蒸留酒に含まれます。
 
参考:医療ニュース
2011年10月26日「女性は中年期の適量の飲酒で高齢期が健康に
2011年9月10日 「適度な飲酒がアルツハイマーを予防」
2010年8月23日「飲酒が関節リウマチに有効?」
2010年5月21日「飲酒によりリンパ系腫瘍のリスクが低減」
2010年4月8日 「適度な飲酒は女性の体重増加を抑制」
2009年12月28日「ビール週7本で乳癌のリスク急増」
2011年4月18日「ビール中ジョッキ1杯で発ガンリスクが上昇・・・」

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