医療ニュース

2013年6月29日 土曜日

2013年6月28日(金) 新型コロナ(MERS)の最新情報

 日本では発症例がないからなのか、あまり報道されていませんが、現在世界中の医療者にとって最も注目されている感染症がこのサイトで過去に何度かお伝えしている新型コロナウイルスです。あれほど騒がれていた鳥インフルエンザA(H7N9)がすっかり鳴りを潜めているのとは対照的です。

 新型コロナウイルスは、国際ウイルス分類委員会により、病原体名を「Middle East respiratory syndrome coronavirus(MERS-CoV)」と命名することが決まり、これをWHO(世界保健機関)が承認し、日本の厚生労働省も追随しました。(今後このサイトでも、病原体名をMERS-CoV、病気の名称をMERSとします。尚、これらを日本語にすると、病原体名は「中東呼吸器症候群コロナウイルス」、病気の名前は「中東呼吸器症候群」となります)

 MERSは、2012年9月から2013年6月26日までの間に、WHOに報告された全症例は77人で、このうち40人が死亡しています(注1)。(つまり感染者の2人に1人以上が死亡しているというわけです)

 これまでの感染地域は、サウジアラビア、ヨルダン、カタール、UAEなど中東が多いのですが、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアなど西ヨーロッパや、チュニジアでも報告があります。中東以外の地域からの報告の大半は、中東から治療のために搬送された症例や、中東から帰国した後に発症した症例です。

 しかし興味深いことに、フランス、イタリア、チュニジア、イギリスでは、中東への渡航歴がなく、感染者からの「人→人感染」が強く疑われています。

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 今後、中東から帰国してから肺炎症状(高熱、咳など)が出現すればMERSを必ず鑑別しなければなりません。治療開始が遅れれば危険な状態になる可能性が高いですし、人から人への感染も防がなければならないからです。

 WHOの発表には、(HIV陽性などの)免疫不全の状態であれば、肺炎症状がなくても、例えば下痢などの症状がある場合にもMERS-CoV感染の可能性を考慮すべき、とあります。

 現在WHOは、入国時の特別なスクリーニング検査や渡航の制限、貿易の制限などを推奨していません。外務省海外安全ホームページ(MOFA)でも現時点では渡航の制限はおこなっていないようです(注2)。

(谷口恭)

注1:WHOはこの詳細を「Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV) – update」というタイトルで公表しています。下記のURLで閲覧することができます。

http://www.who.int/csr/don/2013_06_26/en/index.html

注2:この件については外務省の下記ページで詳しく知ることができます。

http://www2.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo.asp?infocode=2013C277

参考:医療ニュース
2013年5月27日「新型コロナ、人から人への感染がほぼ確実…」
2013年2月15日「新種のコロナウイルス、世界10例目と11例目」
2012年9月28日「重症化する新型コロナウイルス」

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2013年6月22日 土曜日

2007年4月7日(土) 休肝日がないと死亡リスク倍増

お酒をまったく飲まないいわゆる「休肝日」が週に2日以下の男性は、3日以上ある人に比べて死亡リスクが最大で1.8倍高い・・・

 このような疫学調査結果を厚生労働省研究班が4月6日に発表しました。研究は、全国8地域で40-69歳の男性約42,000人を対象とし、1990年から2003年まで追跡しています。

 日本酒に換算して週に13合以上の飲酒をおこなう人は特にリスクが高いという結果もでています。週に20合以上飲む人では、3日以上の休肝日をつくるかつくらないかで死亡リスクに1.8倍もの差があることが確認されています。

 研究者は、「飲酒量の多い人は、まず休肝日をつくり、その次に飲酒量を一日1~2合程度にまで減らすよう心がけて」、と呼びかけています。

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2013年6月22日 土曜日

2007年4月7日(土) 札幌の高校生が結核に集団感染

3月30日、札幌市は、市内の女子高生1人が結核を発症し、他に同じ高校の生徒ら70人が集団感染したことを発表しました。発病した女子高生は一時的に入院しましたが、現在は回復して退院しているようです。

 札幌市によりますと、昨年12月20日に女子生徒が結核と診断され、1月から3月にかけてその生徒と接触が多かったとみられる生徒ら計190人に胸部レントゲンやツベルクリン反応をおこなったところ、70人から陽性反応が出ています。

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 長引く咳、長引く微熱、寝汗、体重減少、などがある方は早めの受診を・・・。

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2013年6月22日 土曜日

2007年4月2日(月) 中国の梅毒蔓延が危機的に

中国では梅毒が5大感染症のひとつに入るそうです。

 「現在、梅毒の蔓延が中国内で危機的な状況にあることはもっと注目されなければならない」

 南京の性感染症センターの研究者がチャイナ・デイリーの取材にそのようにコメントしています(報道は3月31日の同紙)。

 1990年代の初頭から比べると、中国では梅毒の罹患率は実に60倍にもなっています。2006年には人口10万人あたり13人が梅毒に罹患しています。しかし、この数字は中国全土の国立の性感染症クリニックのなかの26個の拠点クリニックのデータを集計したものに過ぎず、私立のクリニックや病院などを受診した人の数は含まれていません。したがって、実際にはこれよりも遥かに高い感染率であることが推測されます。

 中国の性感染症に従事するある医師は言います。

 「私の経験から言って、梅毒と診断される患者がひとり見つかると、他の検査を受けていない患者が7人から8人はいると推測される」

 中国では梅毒の母子感染も深刻化しており、1991年には10万人の新生児のなかで梅毒に感染して生まれるケースが0.01人だったのに対し、2005年には2,000倍の20人にまで増加しています。これは毎年約3,400人の梅毒に感染した赤ちゃんが生まれてくることを意味します。

 「もしも抜本的な梅毒対策が取られないなら、新生児の梅毒罹患が急増し国家は致命的なダメージを受けることになるだろう」、このような見方をする専門家もいます。

 梅毒は抗生物質で比較的簡単に治癒する性感染症です。中国では200元(約3,000円)程度で治療をおこなうことができます。しかしながら、もしも無治療で放置しておけば、性器の潰瘍、心血管や脊髄の障害、さらに脳にまで障害を与え、死に至ることもある感染症です。

 梅毒に罹患している相手と平均2回の性交渉をもてば感染するといわれています。

 中国で梅毒が特に深刻化しているのが沿岸の地域です。中国政府の公式データによりますと、トップは上海で人口10万人あたり55.3人、浙江35.9人、福建26.8人、北京24.9人、と続きます。

 どのような人に感染者が多いかというと、最もリスクが高いのが売春婦とその顧客です。顧客には、配偶者と離れる期間の長くなる地方からの出稼ぎ労働者が多いと言われています。また、都心に住むゲイたちの間でも感染率が急増しています。

 中国でこれだけ梅毒が急増している原因として、性交渉の低年齢化、多数のパートナーとの性交渉、低いコンドームの普及率などがあげられます。コンドームについては、中国産のものは品質が低すぎて使えない、との不満が売春婦たちからあがっているそうです。

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 梅毒に限らず、日本人が中国で性感染症に罹患するケースは最近急激に伸びてきているように思います。以前はタイでの感染の方が多かったと思われるのですが、現在では海外での感染はおそらく中国が1番でしょう。

 梅毒はコンドームを用いていても感染することがありますが、抗生物質の治療で比較的簡単に治ります。無症状だったけれどたまたま検査をしたら見つかった、という人も少なくありません。危険な性交渉のある人は一度検査を受けてみればどうでしょうか。

参考:梅毒

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2013年6月22日 土曜日

2007年4月2日(月) 希望どおりの治療はわずか37%

治療の選択に患者側の希望が生かされていると考えている医師は76%なのに対し、一般の人でそう考えているのはわずか37%しかない・・・

 このようなアンケート結果が発表され話題を呼んでいます(報道は3月30日の共同通信)。

 このアンケートは、今月大阪で開催される日本医学総会に向け、同会のホームページなどでおこなわれたもので、回答者は医師約5,400人、その他の医療従事者約2,100人、一般の人約19,000人です。

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 すてらめいとクリニックでは、できるだけ患者さんの意見を聞いて治療法を共に考えていくという方針をとっているつもりですが、この結果をみると、満足していない患者さんも少なくないのでは・・・、と思わずにはいられません。

 当たり前のことですが、患者さんが治療に満足できなければ医師も満足できません。すてらめいとクリニックのミッション・ステイトメントには「常に患者さんの立場にたって患者さんに接する」という項目があり、スタッフ一同常に意識しているつもりなのですが、今後はさらに徹底していきたいと思います。

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2013年6月22日 土曜日

2007年4月2日(月) 子宮けい癌見落としで3800万円の賠償命令

3月27日の共同通信によりますと、2001年に子宮けい癌で死亡した福岡市の女性(当時29歳)の遺族が、診察で癌を見落とされ手遅れになったとして、福岡市のクリニックに損害賠償を求め、福岡地裁はクリニックの過失を認め、約3,800万円の支払いを命じました。

 この女性は不正出血を訴えて1999年にこのクリニックを受診しましたが、子宮けい癌は疑われずに検査をおこなっていなかったそうです。

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 子宮けい癌が原因で不正出血が起こることもありますが、まったく症状がなくても子宮けい癌の検査は定期的に受けるべきです。最近は20代前半で子宮けい癌に罹患する人も少なくありません。すてらめいとクリニックでは、20歳以上の女性には、1年に1度は子宮けい癌の検査を受けることをすすめています。

参考:不正出血
    子宮けい癌

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2013年6月22日 土曜日

2007年4月2日(月) 新しい健診方法はメタボに重点

厚生労働省の検討会は、糖尿病など生活習慣病の要因となるメタボリック症候群(内臓脂肪型肥満)に重点を置く新しい健診の方法を決めました。

 新しい評価方法を簡単にまとめると以下のようになります。

①腹囲(ウエストライン)が男性85センチ以上、女性90センチ以上、もしくは腹囲は基準値以下だがBMI(注)が25以上

②血糖:空腹時血糖値100mg/dL以上、もしくはHbA1Cが5.2%以上

③脂質:中性脂肪が150mg/dL以上、もしくはHDL(善玉コレステロール)が40mg/dL以下

④血圧:収縮期が130mmHg以上、もしくは拡張期が85mmHg以上

⑤喫煙:血糖、脂質、血圧の1つ以上に該当する場合のみ加える

 上記①から⑤までで2つ以上が該当すれば「積極的支援」、1つなら「動機づけ支援」となります。「積極的支援」に該当すれば、医師などが行動目標を示し、半年後に目標の達成度を評価することになります。

注:BMIは、体重(キログラム)÷身長(メートルの2乗)で計算します。例えば、体重88キロ、身長2メートルなら、88÷2の2乗=88÷4=22、となります。

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 厚労省は、来年4月からこの算定方法を施行するとしていますが、すてらめいとクリニックでは、すでにこの基準を考慮して生活指導をおこなっています。最近は、20代の人でも「積極的支援」に該当する人が少なくありません。体重もしくはウエストラインが気になる人はお気軽に受診してください。

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2013年6月22日 土曜日

2007年3月26日(月) 周辺県に多い”いきなりエイズ”

最近はHIVの検査が随分普及してきて、HIV感染が早期発見される機会が増えてきています。しかし、依然として、エイズを発症して初めてHIV感染が分かる症例(医療従事者はこれを”いきなりエイズ”と呼んでいます)が少なくないのも現実です。

 以前から、この”いきなりエイズ”は東京都や大阪府といった中心地よりも、その周辺県に多いことが指摘されていましたが、厚生労働省が3月22日に発表した集計でその傾向がよりはっきりとしました。(3月23日の共同通信が報道しています)

 昨年1年間で新たにHIV感染が判った人1,304人のうち、すでにエイズを発症していた”いきなりエイズ”の人は390人で、全体の29%に相当します。

 関東の”いきなりエイズ”をみてみると、東京都が21%なのに対し、茨城県50%、千葉県42%、埼玉県48%と周辺県での高い数字が目立ちます。

 東海では、愛知県が27%なのに対し、岐阜県53%、三重県83%です。

 関西では、大阪が19%なのに対し、滋賀県37%、奈良県53%、京都府27%、兵庫県43%と、やはり周辺県が高くなっています。

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 HIVにはすぐれた薬があるとはいえ、内服を開始しだすタイミングが遅ければ寿命を縮めることになりかねません。そうならないためにも、積極的に検査を受けるようにしましょう。

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2013年6月22日 土曜日

2007年3月23日(金) ダイエット用食品から未承認医薬品検出

3月21日の毎日新聞によりますと、福岡市は20日、インターネットで販売されているダイエット用健康食品「アメリカンビューティースリムダイエット」から、国内で未承認の医薬品成分「シブトラミン」などが検出されたことを発表しました。

 昨年12月から服用していた福岡市内の40代の男性が、貧血などの症状を訴え、1月下旬に医療機関を受診し、このダイエット食品を服用していることが発覚しました。医療機関から福岡市に連絡が入り、市は報道をおこないました。

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 「シブトラミン」は食欲抑制剤で、端的に言えば覚醒剤類似物質のようなものです。様々な副作用もありますし、海外では依存性も報告されています(覚醒剤に似ているのですから当然ですが・・・)

 インターネットで販売されている健康食品には大変危険な成分が混入していることが少なくありません。気になるものがあれば自分で試す前にかかりつけ医に相談するようにしましょう。

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2013年6月22日 土曜日

2007年3月23日(金) 米国西部、淋病が急増

2000年から2005年にかけて、米国西部の8つの州では淋病が急増している・・・

 このような発表を米国CDC(疾病管理局)が3月13日におこない、15日のロイターヘルスが報道しています。

 8つの州とは、アラスカ州、カリフォルニア州、ネヴァダ州、ニューメキシコ州、オレゴン州、ユタ州、ワシントン州、そして、ハワイです。これらの州全体でみると、5年間に52%もの上昇となっており、なかでもユタ州では195.1%も上昇しています。

 これら8つの州とは対照的に、米国の残りの州では感染者が安定しているか減少しているそうです。8つの州を除けば、全体では15.3%の減少となっています。

 8つの州でみれば、淋病感染率が上昇しているのは、男女とも、すべての年代で、人種による差は認められません。

 CDCによると、感染者が増えている原因のひとつとして、検査の感度が上昇したことをあげています。

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 淋病は日本でもクラミジアと並んで最も多い性感染症ですが、最近は自覚症状のないケースが増えてきています。典型的な症状は腟や尿道からでてくる膿や、排尿時の痛みですが、そういう症状がないのにもかかわらず感染しているケースが多いのです。

 米国のこれらの州と同様、日本でも検査を徹底すれば感染者が大幅に増えることも予想されます。

参考:淋病

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