医療ニュース
2013年7月27日 土曜日
2008年8月4日(月) 波紋を呼んでいるタミフル調査結果
「インフルエンザ治療薬のタミフルを小児に使っても問題がない」という報告が厚生労働省の研究班から発表されたことを以前お伝えしましたが(2008年7月14日(月)「タミフルは異常行動に関係なし」)、これが波紋を呼んでいます。
まずは、タミフル服用後に飛び降りなどの異常行動で死亡した人の遺族らでつくる「薬害タミフル脳症被害者の会」が厚生労働省の発表を批判しました。
7月27日、「薬害タミフル脳症被害者の会」は、今回の厚生労働省の調査結果は誤りだとし、タミフルと異常行動との因果関係を認めて被害者を救済するよう求め、近いうちに舛添厚生労働大臣に要望書を提出する予定です。(報道は7月29日の共同通信)
被害者の会は、「研究班の集計方法は間違っている」と批判し、「間違った結論に基づき10代への投与が解禁されれば薬害の再発は確実だ」と指摘しています。「被害の拡大を防止し、被害者の救済を求める」として、関係者に対する法的措置を取らざるを得ないと訴えているようです。
厚生労働省研究班の見解を批判しているのは被害者の会だけではありません。複数の医師が研究班のデータ解析の方法が誤っていることを指摘しています。(報道は7月31日の毎日新聞)
この調査は2006年12月から2007年3月にインフルエンザで医療機関を受診した患者約1万人を対象に実施されています。タミフル服用と、うわごと、おびえ、泣き出すといった軽い症状も含めた「異常行動」との関係を調べています。
厚労省の研究班は、タミフル使用者7,487人のうち、服用後に異常行動を起こした人を889人(11.9%)とし、非使用者2,228人のうち異常行動を起こした人は286人(12.8%)としています。(これだけをみるとタミフルを飲まなかったグループの方が異常行動を起こしやすいということになります)
ここからが問題です。タミフル非使用者のうち99人は、実際にはタミフルを飲んだけれども、飲む前に異常行動を起こしている患者です。これらを除外すると全く飲まなかった患者だけの人数は2,129人となり、異常行動は187人(8.8%)となります。これとタミフル使用者で異常行動を起こした人の11.9%を比較すると、飲んだ方がおよそ5割異常行動を起こしやすいという結果になります。
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どちらの解析方法がより適切かは意見の分かれるところだと思います。(これが統計学のおもしろいところかついい加減なところなのかもしれません)
私個人の意見としては、以前にも述べましたが、インフルエンザの疑いがあろうとなかろうと、タミフルを飲んでいようがいまいが、高熱を出している10代の子供をひとりにしないことが大切だと思います。
(谷口恭)
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|2013年7月27日 土曜日
2008年8月4日(月) 長寿記録更新!女性は23年連続世界一
日本人の2007年の平均寿命は女性が85.99歳、男性が79.19歳で、いずれも2年続けて過去最高を更新しました。
これは、7月31日、厚生労働省が公表した「簡易生命表」によるものです。
これで、女性の平均寿命は23年連続の世界一位となります。男性は前年(2006年)の2位から3位に転落しています。(男性の1位、2位はそれぞれアイスランド(79.4歳)、香港(79.3歳)、女性の2位、3位はそれぞれ香港(85.4歳)、フランス(84.1歳)です)
平均寿命が延びた原因として、厚生労働省は、「日本人の三大死因であるガン、心臓病、脳卒中の治療成績向上が平均寿命を延ばす方向に働いた。今後も同様の傾向が続くだろう」とみています。さらに、これらの三大死因が克服されれば(実際にはあり得ないことですが)、平均寿命は男性で8.25年、女性で7.12年それぞれ延びるとみられています。
「何歳まで生きるか」という試算では、2007年に生まれた赤ちゃんが75歳まで生きる割合が女性85.8%、男性70.8%。90歳までが女性44.5%、男性21.0%となっています。
ゼロ歳児が将来死亡する原因として最も可能性が高いのは、男女ともガンで、心臓病、脳卒中を加えた三大死因による将来の死亡確率は男性55.57%、女性53.02%で前年とほぼ同水準となっています。
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「自分はあと何年生きられるか」に興味がある人は少なくないと思います。これを考えるときに平均寿命を参考にしがちですが、「平均寿命」ではなく「平均余命」を考えなければなりません。
例えば、現在30歳の女性が、「平均寿命が85.99歳だから、85.99-30=55.99年間」とするのは適切ではありません。この場合、簡易生命表によると平均余命は56.57年となっており、統計学的にはこちらが適切ということになります。(尚、簡易生命表は厚生労働省のウェブサイトでみることができます。http://www5d.biglobe.ne.jp/~Jusl/IssituRieki/yomei.htmlを参照ください)
(谷口恭)
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|2013年7月27日 土曜日
2008年8月7日(木) 宮崎の女性がダニに刺されて死亡
宮崎市の70代の女性がダニに刺されて死亡したことを宮崎市保健所が8月1日に発表しました。(報道は8月5日の毎日新聞)
「ダニに刺されて死亡」は、正確に言うと「マダニに刺されて日本紅斑熱を発症し死亡」となります。日本紅斑熱は、リケッチアと呼ばれる病原体に感染しているダニに刺されることにより発症します。潜伏期間は2~10日で、高熱や発疹がでるのが特徴です。(人から人への感染はありません)
宮崎市によりますと、この女性は7月中旬、家族とレジャーで市内の山を散策し、腰などをマダニにかまれたそうです。数日後に高熱や発疹が出現し回復せず、7月25日に市内の病院で多臓器不全により死亡しています。
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日本紅斑熱で死亡することは多くはありませんが、1999年以降4件の報告があります。(届出義務ができたのが1999年です)
以前、この日本紅斑熱が和歌山で増えているというニュースをお伝えしました。(2008年5月19日(月)「日本紅斑熱に注意」)
ダニが媒介する感染症は、日本紅斑熱の他にも、恙虫(ツツガムシ)病や、ライム病などもあります。虫刺されに加えて、発熱、倦怠感などが出現したときは、迷わずに医療機関を受診するようにしましょう。
(谷口恭)
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|2013年7月27日 土曜日
2008年8月8日(金) 厚労省のタミフル異常行動調査で解析ミス
「インフルエンザ治療薬のタミフルを小児に使っても問題がない」とする調査報告を厚生労働省がおこなったことに対して、被害者の会や医師らが反対の意見を述べているというニュースを先日お伝えしましたが(2008年8月4日(月)「波紋を呼んでいるタミフル調査結果」)、こういった動きが原因しているのか、厚生労働省は、先月公表した報告には解析ミスがあったと発表し物議をかもしています。
厚生労働省は8月5日、タミフルの異常行動との因果関係の調査で、解析過程の一部にミスがあったことを発表しました。(タミフルと異常行動に関係がないとする)結果への影響を検証するため、因果関係について最終的な結論を出す安全対策調査会の開催を9月以降に延期することを決定しています。当初の予定では今月中に調査会を開いて結論を出す予定でした。(報道は8月6日の毎日新聞)
厚生労働省によりますと、ミスが判明したのは、インフルエンザにかかった18歳未満の約1万人を対象にした異常行動に関する調査結果で、最初の発熱時刻と医療機関にかかった初診の時刻をデータベースから引き出す過程のなかで、プログラムの不具合により一部に別のデータが引き出され、それを使って解析していたとのことです。
同省は「解析に重要なタミフル服用の時刻や異常行動の発生時刻に間違いがあったわけではない。調査結果への影響は大きくないと考えられるが、科学的議論に万全を尽くすため、影響がないか確認する」と説明しています。
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「プログラムの不具合により一部に別のデータが引き出され・・・」などと言われると、厚生労働省が発表している他の調査報告は大丈夫なのかな、と思ってしまいます。
いずれにしても、タミフルと異常行動の”科学的な”調査報告を待ちたいものです。
(谷口恭)
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|2013年7月27日 土曜日
2008年8月18日(月) ジョギングで死亡率半減
50歳以上で日常的にジョギングをしている人は、運動の習慣がない人に比べ、19年後の死亡率が半分以下で、健康な生活を送ることができる・・・
これは、米国スタンフォード大学の研究チームがおこなった長期調査で、米科学誌『アーカイブズ・オブ・インターナル・メディシン』に8月17日に発表されています。(報道は8月18日の日本経済新聞)
この調査は、1984年時点で50歳以上の人で、全米のランニングクラブに所属する538人と、運動習慣がない423人を比較しています。その結果、2003年時点の死亡率はそれぞれ15%、34%でした。
ジョギング時間は、調査を開始した1984年当初は、週に平均4時間でしたが、21年後の2005年には1時間16分にとどまっていました。それでも、運動習慣がない人に比べ、様々な障害の出始めが遅く、体格が引き締まり、記憶・学習能力も相対的に良いことが、年に一度のアンケート調査でわかったそうです。
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50歳以上のジョギングは膝関節などの故障がおきやすいのではないかと考えられることもありますが、今回の調査結果ではそのようなこともなかったそうです。
いいことばかりのジョギングですが、最も大変なことはやはり”継続”でしょう。
今回の調査は50歳以上ですが、若いうちにジョギングを”習慣”としてしまうのがいいでしょう。
(谷口恭)
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|2013年7月27日 土曜日
2008年8月25日(月) 日米でHIV感染が増加
8月19日に厚生労働省が発表したデータによりますと、2008年3月31日~6月29日の3ヶ月間に報告されたHIVの新規感染は276人で、これは1985年の統計開始以来、前々回(2007年10月1日~12月30日)の277人についで過去2位の人数となります。
一方、同日(8月19日)に、米国疾病管理予防センター(CDC)は、米国内のHIV感染状況が予想をはるかに上回り、2006年には5万6,300人が新規に感染したうえ、HIV陽性者は累計123万人に達していると公表しました。
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HIVの新規感染が多いのはアジアやアフリカだけではありません(これらの地域では減少傾向にあります)。今回の報道が示すように日本とアメリカでは感染者は増えていますし、ドイツ、イギリス、オーストラリア、韓国など他の先進諸国でも増加傾向にあります。
数年前に言われた「先進国でHIVが増えているのは日本だけ」というのはとっくに過去の言葉になっています。
(谷口恭)
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|2013年7月27日 土曜日
2008年8月29日(金) 鹿児島で日本脳炎注意報
8月25日、鹿児島県は2年ぶりに日本脳炎注意報を発令しました。これは日本脳炎ウイルスに感染した豚が基準値を超えたことによります。(報道は8月27日の毎日新聞)
鹿児島県では1995年に日本脳炎の感染者が1人報告されているのが最後ですが、今後、蚊にさされないよう、県は長ズボンの着用や防虫スプレーの使用を呼びかけています。
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日本脳炎ウイルスを媒介するコガタアカイエカは、水田や沼地付近に棲息し、日没後に活動すると言われています。ワクチンをうっていない人はそういう地域に近づかないことが必要でしょう。
参考:はやりの病気 第60回「虫刺されにご用心」
医療ニュース 2008年8月1日「日本脳炎の新ワクチンは2009年以降に」
(谷口恭)
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|2013年7月27日 土曜日
2008年9月9日(火) 保険のない子供が20都市で7333人
国民健康保険(国保)の保険料を滞納して保険給付を差し止められ、医療費の全額自己負担が必要になった世帯の子ども(中学生以下)が、都道府県庁所在地と政令市計51都市中20都市で7,333人以上に及ぶことが、毎日新聞の全国調査で明らかとなりました。(報道は8月31日の毎日新聞)
この調査は、2007年から2008年にかけて、全国の各自治体に対し、給付差し止めで保険証の返還を求められ、代わりに資格証明書の交付を受けた世帯に義務教育年齢以下の子どもが何人いるかを尋ねることによっておこなわれました。
人数を把握できたのは、横浜市3,692人、千葉市838人、大阪市748人、和歌山市407人、大分市379人、など20都市です。無保険の子どもが「いない」と回答したのは山形、大津など5つの市のみです。18市が「子どもは含まれるが統計がない」とし、8市が「不明」と回答しており、実際の人数は51都市で判明分の数倍に上る可能性があるようです。
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世界には病気になっても病院にかかれない子供がたくさんいて、むしろ世界的には病院にかかれる子供の方が少ないかもしれませんが、この日本でこれだけ多くの子供たちが保険証がなく医療機関にかかれないというのは異常に思えます。「国民皆保険制度」はどこにいったのでしょうか・・・。
参考:医療ニュース 2008年7月31日「大阪府、無保険の子供が1620人」
(谷口恭)
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|2013年7月27日 土曜日
2008年9月13日(土) 子宮体癌の予防にコーヒーを
このウェブサイトでは、コーヒーがいかに体にいいかということを頻繁に紹介していますが、これは私(谷口恭)がコーヒー好きだからというわけではありません(確かにコーヒーは好きですが・・・)。ここ数年の間に発表されているコーヒーに関する研究が、病気の予防になるとされているものがほとんどなのです。
コーヒーを1日3杯以上飲む女性は、ほとんど飲まない女性に比べ、子宮体癌になる危険度が約6割も低い・・・
このような研究結果が、厚生労働省研究班により9月1日に発表されました。(報道は同日の共同通信)
この調査は、岩手、大阪など9府県の40から69歳の女性約5万4000人を1990年から最長で15年間追跡しています。この間に117人が子宮体がんと診断されています。
調査開始時にコーヒーを飲む習慣について聞き取り、飲む量によって4つのグループに分けて子宮体がんとの関連を調べています。コーヒーを飲む頻度が週に2日以下というグループと比較すると、毎日1~2杯飲む人で約4割、毎日3杯以上飲む人では約6割、発症の危険度が低いという結果がでています。
コーヒーをよく飲めばなぜ子宮体癌が防げるのか。この理由について、研究班は、「コーヒーが血糖値を下げたり、女性ホルモンの働きを調整したりすることで、危険度を下げているのではないか」と述べています。
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一般に子宮体癌は、肥満や糖尿病のある人、女性ホルモンの働きが活発な人におこりやすいと言われています。コーヒーがこれらに影響を与えることが原因かもしれません。
参考:2008年6月30日「コーヒーはいいことばかり」
(谷口恭)
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|2013年7月27日 土曜日
2008年9月20日(土) 妊婦の予防接種は赤ちゃんにも効果?
妊婦にインフルエンザの予防接種をすると、母親だけでなく新生児にも高い予防効果がある・・・
これは米国とバングラデシュの共同研究チームが、バングラデシュで臨床試験をおこなった結果で、詳細は「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」という医学誌(2008年9月17日号)に発表されています。(報道は9月18日の読売新聞)
臨床試験では、妊婦316人のうち、約半数にインフルエンザのワクチン、残りの半数に肺炎球菌のワクチンを接種しています。子供は接種の8時間から3ヶ月後に生まれています。
生後6ヶ月まで健康状態を追跡した結果、母親が肺炎球菌のワクチンを受けた子供は、157人中16人がインフルエンザにかかりました。一方、母親がインフルエンザのワクチンを受けた子供の発症率はおよそ3分の1という結果になっています。
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この結果を受けて、日本の厚生労働省は、「可能な限り危険性を排除するため、国内では勧めていない」としています。
参考までに、米国や世界保健機関は妊婦にインフルエンザのワクチン接種を勧めていますが、すてらめいとクリニックでは、現時点では日本の厚生労働省に従い、妊婦へのインフルエンザワクチン接種をおこなっていません。
(谷口恭)
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