医療ニュース
2009年9月15日(火) 救急車現場到着も医療機関搬送も過去最悪
救急車が通報を受けてから現場に到着するまでの時間も、患者を医療機関に収容するまでの時間も過去最悪・・・
このようなことが総務省消防庁の調査で明らかとなりました。(報道は9月9日の共同通信など)
調査によりますと、救急車が通報を受けてから現場に到着するまでにかかった時間の2008年の全国平均は7.7分で、これは前年(2007年)より0.7分遅いことになります。7.7分というのは、データがある1984年以降最悪(最長)の数字となっています。
また、通報から患者を医療機関に収容するまでの時間は過去最悪の35.1分で、これは前年より1.7分遅くなっています。1998年には26.7分でしたから、過去10年間で8.4分も延びていることになります。
救急車の出動件数自体は5,095,615件で、これは前年より3.7%減少しています。搬送人数も4,677,225人で、こちらは4.6%の減少です。これらの減少は2年ぶりということになります。
救急車を要請した人を年代別でみると、65歳以上の高齢者が48.2%で最多となっています。
また、救急車が到着するまでに、その場に居合わせた人が心臓マッサージなどの応急処置をしたケースは、心肺停止状態の患者の40.7%に相当する46,149人で、これは前年より1.2ポイント増加しています。
心肺停止に対しては、2004年からAED(自動体外式除細動器)の一般の使用が認められるようになっており、心臓疾患にAEDを使用した428人の1ヶ月の社会復帰率は38.8%と高い数字を示しています。これは前年から3.3ポイント増えていることになります。
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これらのデータをまとめていきましょう。
まず、救急車が現場に到着する時間も患者を医療機関に収容するまでの時間も過去最悪となったことの理由として、消防庁は、「搬送先が決まらないと、救急隊が待機場所である消防署へ戻るのが遅くなり、結果的に次の出動や現場到着が遅れる悪循環が起きている」、と指摘しています。これは、救急患者を医療機関が迅速に受け入れることができていないことを示唆しています。
この問題に対して、10月に施行される改正消防法では、「救急と医療の関係者が事前に搬送のルールを取り決める」ことなどを定めており、この取り決めが上手くいけば搬送時間の短縮が少しは実現するかもしれません。
しかし、医療機関側としては人員や施設の問題から救急患者の受け入れはすでに限界にきているのが現状です。したがって、単に「救急と医療機関の搬送のルール」を定めただけでは抜本的な解決にはならないのではないかと思われます。
次に、救急車の出動件数が減ったことの理由については、軽症の場合は救急車を使わないといった適正利用の呼びかけが浸透している、ことが考えられます。これまでは、軽症の人でも救急車を(気軽に)要請していることが問題となっていましたから、適正利用が浸透しているとすれば評価されるべきと思われます。しかしながら、このような呼びかけがいきすぎると、本当に救急車が必要な人まで要請を躊躇する可能性もあり、このあたりについては充分注意する必要があると思われます。
AEDの普及については、成功していると言えるでしょう。AEDがもしもその場所になければ命を失っていたかもしれない人が大勢いるということです。
太融寺町谷口医院の院内に置いてあるAEDはまだ一度も使用する機会がありませんが、いずれ活躍する日が来るかもしれません・・・。
(谷口恭)
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