医療ニュース
2010年4月12日(月) やせていてもメタボには注意を
腹囲が基準値未満でも、血圧、血糖、血中脂質の検査値の異常が重なると、脳卒中や心筋梗塞を発症しやすくなる・・・
これは、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の腹囲の基準を検証している厚生労働省研究班が発表した研究結果です。(報道は4月4日の読売新聞)
現在の日本のメタボリックシンドローム(以下「メタボ」)の診断基準は、腹囲(男性85センチ以上、女性90センチ以上)が必須で、血糖・脂質・血圧の3項目のうち2つ以上に異常があればメタボという診断がつきます。要するに、腹囲が正常であればメタボにはならないわけです。
今回の厚生労働省の研究では、全国の40~74歳の約31,000人を対象とし、腹囲と脳卒中や心筋梗塞発症の関係が調べられています。その結果、腹囲が大きくなるほど、発症のリスクは高くなる傾向にありましたが、腹囲が基準値未満であっても、血糖・脂質・血圧の検査値の異常が重なると、メタボと同じようにリスクが高くなることが分かりました。
血糖・脂質・血圧の検査値が3つとも異常であれば、腹囲が基準値未満でも、リスクは男性で2.2倍、女性で3.0倍になっています。腹囲が基準値を超えている場合のリスクは男性で2.5倍、女性で3.2倍ですから、あまり差がないことになります。
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腹囲をメタボの絶対的な診断基準にすることが反対される他の理由として、「腹囲が基準値を超えていても健康な人は少なくない」というものもあります。
腹囲が基準値を超えていればいるほど心疾患や脳卒中のリスクが上昇するというのは、”おしなべて言えば”正しいと言えるでしょう。実際、肥満というものを甘くみてはいけません。メタボ以外にも、肥満があれば事故に合いやすい、あるいは事故をしたときの重症度が大きいという報告もありますし、腰痛や膝の痛みなど整形外科的疾患のリスクにもなります。
しかし、腹囲をメタボの絶対的な基準にしてしまうことは見直しをすべきかもしれません。もとより、アメリカのメタボの診断基準は、腹囲は絶対的な指標ではなく、5つの指標のうちの1つに過ぎません。(他の4つは、中性脂肪、HDLコレステロール、血圧、血糖値です)
すでに国際糖尿病連合は、2009年10月、腹囲を必須条件とせず、総合的にメタボを診断する方式に基準を変更しています。
当分の間、メタボの診断基準をめぐって様々な議論が重ねられることになるでしょう。
(谷口恭)
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