医療ニュース
2010年6月17日(木) 75歳未満のガン「死亡率」は順調に減少
今月(2010年6月)上旬に、厚生労働省が疾患別の死因を公表し、2009年のガンによる死亡数は過去最多となったことを各マスコミが報道しました。例えば、医療情報を専門に配信しているキャリアブレインは、「昨年のがんによる死亡数、過去最多」というタイトルで6月8日にこれを報じています。(下記医療ニュースも参照ください)
ところが、それから1週間後、今度は各マスコミが、ガン死亡者が減少しているというニュースを発信しています。例えば日経新聞は、「がん死亡者、3年で6%減」というタイトルの記事を6月16日に報道しています。
これらニュースのタイトルだけをみていると、日本のガン患者は減っているのか増えているのか分からずに混乱してしまいます。混乱を整理するために、順を追って説明していきたいと思います。
まず、ガンの総数が増えているのは事実です。日経のいう「3年で6%減」というのは、ガン死亡者の総数ではなく、①75歳未満のガンによる死亡率であり、なおかつ、②6%というのは、単純な死亡率(これを「粗死亡率」と呼びます)ではなく、「年齢調整死亡率」のことです。
「年齢調整死亡率」という言葉は少し専門的ですが、わかりやすく言えば「年齢の影響を除いた死亡率」と考えてもらえばいいかと思います。(それでも分かりにくいですね・・・)
数字をあげて説明すると、75歳未満の2005年のガンによる死亡者は164,553人、2008年が160,192人です。これを単純に計算すると2.65%しか減少していませんが、「年齢調整死亡率」という観点から算出すれば、5.6%(約6%)の減少となるというわけです。
さて、問題はこの5.6%という数字が評価されるべきかどうか、ですが、2007年に制定された「がん対策推進基本計画」の中に記載されている基本計画では「10年で20%減」が目標となっています。厚生労働省は、この目標は「達成できるペース」と考えているようです。
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75歳以上のガン死亡者数は、2005年から2008年にかけて約2万人が増えています。これをどう評価するかというのは議論の分かれるところでしょう。「がん対策推進基本計画」がガン死亡率の減少目標の対象を「75歳未満」としているということは、「75歳までは生きましょう」と考えられているのかもしれません。
75歳までは生きなさい、とお上から言われているようで気分が悪い、と感じる人もいるかもしれませんが、ガンの治療が発達したおかげで適切な治療を受ければ長生きできることが多くなったのは事実です。
逆に75歳以降のガン死亡者も減らすよう目標を定めるべきだ、と考える人もいるかもしれません。将来的には75歳以上のガン死亡率減少も目標に入れられるかもしれませんが、人間はいつか必ず死ぬ運命にありますから、上限なくガン死亡率減少を目標とするというのは非現実的です。
「がん対策推進基本計画」には、未成年者の喫煙率を「3年以内でゼロ」にすることを目標としていますが、2008年の高校3年男子の喫煙率は12.8%だそうです。こちらの対策を急ぐべきでしょう。
(谷口恭)
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