医療ニュース
2011年4月18日(月) ビール中ジョッキ1杯で発ガンリスクが上昇・・・
飲酒は絶対的に悪いものではなく、少量のアルコールはむしろ身体にいい・・・。このように言われることがしばしばありますが、では「少量」とはどれくらいなのでしょう。
女性の場合、1日1杯の生ビールで発ガンのリスクが上昇する・・・
このような結果がヨーロッパの大規模研究で明らかになり、医学誌『British Medical Journal』2011年4月7日(オンライン版)で発表されました。(下記注参照)
この研究は、欧州10カ国の約52万人が対象となった過去の大規模研究から、イギリス、フランス(女性のみ)、ドイツ、イタリア、オランダ(女性のみ)、スペイン、ギリシャ、デンマークの37~70歳の363,988人(男性109,118人,女性254,870人)のデータを用いて解析しています。対象者の過去1年間のアルコールの消費量と発ガンの有無との関係を調べています。
その結果、飲酒グループと非飲酒グループを比較すると、飲酒グループのガンリスクは男性で10%、女性で3%上昇しています。特に、上気道および消化器ガン(肺ガン、胃ガン、喉頭ガンなど)は男性44%、女性25%と高い上昇率を示しています。その他のガンでは、大腸ガンは男性17%、女性4%の上昇、肝臓ガンは、男性33%、女性18%の上昇、女性の乳ガンは5%の上昇となっています。
世界がん研究基金(WCRF)および米国がん研究所(AICR)は、1日当たりのアルコール摂取量を男性で24g以下,女性で12g以下にするよう推奨しています。アルコール12gとは、ワインで言えばグラス1杯(120mL)、ビールなら中ジョッキの約半分、日本酒では約0.5合に相当します。今回の研究でこれらの基準を超えた割合は、男性で39.0%、女性で33.2%、1日当たりアルコール摂取量の平均はそれぞれ 33.2g、15.9gとなっています。
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最近、WHO(世界保健機関)は、100ヶ国以上の加盟国におけるアルコール摂取と健康被害に関する報告書「Global status report on alcohol and health」を発表しました。
その報告書によりますと、アルコールの有害摂取により世界で年間250万人が死亡し、これは世界の全死亡件数の4%に相当するそうです。少し詳しくみると、全世界の男性の死亡の6.2%,女性の死亡の1.1%がアルコールに関連しています。また、毎年32万人の若年者(15~29歳)がアルコール関連の原因で死亡しており、これは同年齢層の全死亡件数の9%に相当するそうです。アルコールによる死亡の大半は、アルコールの有害摂取に起因した外傷やガン、心血管疾患、肝硬変による死亡である、とされています。
現在、世界的なレベルでアルコール摂取に対する注意勧告がされており、上記研究結果はその流れを加速させるかもしれません。
タバコはダメで、あぶらものはNG、塩分制限もしつこく言われるようになってきて、ついにアルコールもごく少量しか許されない・・・。住みにくい世の中になったなぁ、とぼやきたくなります。
(谷口恭)
注:この論文のタイトルは、「Alcohol attributable burden of incidence of cancer
in eight European countries based on results from prospective cohort study.」で、下記URLで全文を読むことができます。
http://www.bmj.com/content/342/bmj.d1584.full.pdf?sid=d1190dc0-4284-43a6-b23f-b903b44947bb
参考:医療ニュース
2010年8月23日「飲酒が関節リウマチに有効?」
2010年5月21日「飲酒によりリンパ系腫瘍のリスクが低減」
2010年4月8日「適度な飲酒は女性の体重増加を抑制」
2009年5月15日「お酒弱いのに飲酒・喫煙で食道ガンのリスク190倍」
2008年6月1日「タバコと酒のコンビネーションが肺がんのリスク」
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