医療ニュース
2024年4月20日 ピロリ除菌の失敗は「虫歯」が原因かも
「日本人の大勢がヘリコバクターピロリが陽性なのに調べていない人が多すぎる」のは周知の事実ですが、一向に検査が広がりません。私自身は「ピロリの検査は自費でも実施すべきだ」と言い続けていますが、そうは言っても自費の検査というのはなかなか勧めにくいものです。
谷口医院の患者さんがピロリ陽性だと分かるのは、たいていは健診や人間ドックでたまたま調べたというケースか、胃の調子が悪くて胃カメラのクリニックを紹介してそこで発覚する事例です。「ここ(谷口医院)で自費でいいから調べてほしい」とリクエストされて陽性が発覚するのは全体の1割程度です。
ピロリは陽性であることが分かっても、必ずしも除菌が必要かは意見が分かります。消化器内科の医師は(おそらくほぼ全員)「除菌しましょう」と言うわけですが、除菌して後悔している人がそれなりに多いのも事実です。除菌前まではまったく症状がなかったのに除菌したことが原因で逆流性食道炎を発症してご飯が食べられなくなった、という人が少なくないのです。
今回は「除菌失敗」の話です。ピロリの除菌はまず一次除菌と呼ばれる標準的な治療(1週間3種類の薬を飲む)をおこないます。当院の経験でいえば、だいたい7割くらいが成功します。失敗した場合は二次除菌(やはり1週間3種類の薬を飲む)を実施します。これでも失敗する人が年に1~2名いて、この場合は三次除菌へと進みます(幸いなことに、谷口医院では三次除菌でも失敗した人はいまだにゼロです)。
どのような人が除菌に失敗しやすかについて、私自身は「これまでの抗菌薬使用量が多い人」という印象を持っています。しかしそれが正しいかどうかはエビデンスがありません。今回紹介したい研究は「ピロリ失敗は虫歯が原因かも」というものです。
研究は医学誌「Scientific Reports」2024年2月号に掲載された「日本人成人におけるヘリコバクター・ピロリの7日間3剤併用療法の除菌失敗と未治療のう蝕との関連性(Association between failed eradication of 7-day triple therapy for Helicobacter pylori and untreated dental caries in Japanese adults)」です。
研究の対象は、2019年4月から2021年3月に朝日大学病院でピロリの除菌と歯科検診を受けた226人(男性150人、平均年齢52.7歳)です。除菌に失敗した人は38人(17%)で、成功した人と比べて、1日2回以上歯磨きをする人が少なく、虫歯のある人が多いことが分かりました。虫歯があればピロリ除菌失敗のリスクが2.6倍となったのです。
興味深いことに、虫歯の本数が多いほど失敗しやすいことも分かりました。虫歯が1本の人の除菌失敗率は24%、2本では40%、3本では67%となり、大部分が失敗することを示しています。
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この問題以外にも、虫歯(齲歯)や歯周病が様々な疾患のリスクになるという研究は多数あります。あまり触れられませんし、医療機関でもあまり指導されませんが、歯科のケアは非常に大切です。谷口医院ではこれまで以上にデンタルケアの注意を促していこうと考えています。
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