医療ニュース
2020年11月30日 女性の記憶力低下を防ぐには「働くこと」
意外な研究結果が報告されました。
高齢になると誰もが恐れるのが記憶力の低下、ひいては認知症だと思います。これらのリスク因子としてよく指摘されるのが、肥満を含めた生活習慣病、喫煙、運動不足、などで、さらに「労働」ということもしばしば指摘されます。では、専業主婦と働くシングルマザーではどちらの記憶力が衰えやすいでしょうか。研究によればそれは専業主婦などのです。
医学誌『Neurology』2020年11月4日号(オンライン版)に「 米国の女性における仕事と家庭の有無と中年および晩年の記憶低下との関連(Association of work-family experience with mid- and late-life memory decline in US women)」というタイトルの興味深い論文が掲載されました。
研究の対象者は55歳以上の米国女性6,189人です。16歳から50歳までの勤務状況、婚姻状況、子供の有無からグループ分けがおこなわれました。その結果、未婚で働く女性488人、既婚で子供を持ち働く女性4,326人、働くシングルマザー530人、働かないシングルマザー319人、専業主婦526人となりました。
どのグループも55歳から60歳までは記憶力低下に差はありませんでした。ところが60歳以降では働くことと記憶力低下に顕著な差が表れたのです。出産後に有給で働かなかった人は働いていた人に比べて記憶力の低下がなんと50%以上も認められたというのです。
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この論文を報じた米国の健康情報サイト「HealthDay」は、この研究をおこなった学者Elizabeth Rose Mayeda氏をインタビューしています。
氏は「働くタイミングは重要ではない」とコメントしています。氏によれば、「記憶力の低下率は、一貫して働いている人、数年間子育てをした後に働きに出る人、それよりも長い期間家にいて(専業主婦をして)働きに出る人で差はない」そうです。ということは、いくつになっても「働きに出る」ことが記憶力維持につながることを示唆しています。
古典的なフェミニズムでは「専業主婦業はれっきとした労働」と言われ、それに異論はありませんが、こと記憶力低下の予防という点においては「狭義の労働」に分がありそうです。ですが、ボランティアなど無償の仕事や他の社会活動では記憶力低下を防げないのでしょうか。また、狭義の労働が記憶力維持に有効なのならば、その理由は何なのでしょう。仕事のプレッシャーや人間関係から来るストレスが良きスパイスになっているのでしょうか。
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