医療ニュース

2017年8月31日 韓国の加湿器殺菌剤、死亡者は1,200人以上

 昨年(2016年)5月にこの「医療ニュース」でお伝えしたように、UKを拠点とした他国籍企業オキシー・レキット・ベンキーザー社が韓国で発売していた殺菌剤が原因で、同国では多数の犠牲者が出ています。昨年紹介したBBCの報道では「約100名が死亡」とされていましたが、韓国のメディア(注1)によると、2017年7月の時点で、被害者総数は5,657人、うち1,212人が死亡しています。

 この事件で最も問題なのは、この殺菌剤が肺を損傷させることはすでに2011年にはその可能性が指摘されていたのにもかかわらず、同社がそのまま販売を続けたことです。製品は結局20年近く販売されていたようです。

 また、当初の報道ではこの会社だけが問題なのかと思われていましたが、最終的に同社の「Oxy」と呼ばれる製品の被害者は181人のみ(死者は73人)です。同社のこの製品による被害者数が最多なのは事実ですが、全体の被害者数はその30倍以上になります。これは同社だけではなく、スーパー大手の「ロッテマート」や「ホームプラス」も同類の製品を販売していたからであり、これらの業者も有罪判決を受けています(注2)。

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 この事件を医学的に検討した論文を探してみましたが見つかりませんでした。BBCなどの一般メディアから得られる情報を総合的に勘案すると、おそらくこの薬剤で起こる肺疾患は「肺線維症」ではないかと思われます。

 韓国メディアは、文在寅大統領が2017年8月8日、政府の責任を認めて大統領として初めて謝罪したことを伝えています。政府と企業のどちらが悪いかを論じてもあまり意味がないと思いますが、オキシー・レキット・ベンキーザー社はこの製品をなぜ韓国のみで発売していたのでしょう。同社は日本にもありますが、日本では一切販売されていません。

 ですが日本人も安心はできません。過去20年間で韓国のホテルに複数回宿泊した日本人は大勢いるはずです。最近、息苦しさや原因不明の咳が続いている人で韓国渡航歴のある人は、ホテルの部屋に加湿器がおいてなかったかどうかを思い出すべきかもしれません…。

注1:韓国の英字新聞「Korea JoongAng Daily」が報道しています。

http://mengnews.joins.com/view.aspx?aId=3036910
 
注2:UKのメディア「Independent」が報道しています。

http://www.independent.co.uk/news/business/news/reckitt-benckiser-executive-shin-hyun-woo-south-korea-toxic-humidifier-disenfectant-100-dead-jailed-a7512446.html

参考:医療ニュース2016年5月30日「韓国、加湿器の殺菌剤で100人の死亡者」

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