医療ニュース
2013年10月28日 超低用量ピルでの2人目の死亡例
以前、超低用量ピル(ヤーズ)の副作用で20代の女性が死亡したという例をお伝えしました。(下記医療ニュース参照) 主治医がヤーズを処方してからわずか13日後、この女性は頭蓋内静脈洞血栓症という、頭の中の血管が血の塊で詰まってしまう病態となり死亡しました。
死亡したこの20代の女性は、肥満や喫煙など血栓症を起こす要因ほとんどなく、ヤーズを含めてピルのリスクは小さかったと言えます。頭蓋内静脈洞血栓症がピル内服で起こるのは内服開始後数週間以内とされてはいますが、血栓症のリスクのほとんどない20代女性が(中用量ピルでなく)超低用量ピル服用開始のわずか13日後に死亡したというのは注目に値します。
そして、1人目の死亡例が報告された4ヶ月後の2013年10月、医薬品医療機器総合機構(PMDA)がヤーズによる国内2人目の死亡を発表しました。
この女性は10代後半で、ヤーズの内服を開始しておよそ1年半後(526日目)に肺動脈塞栓症で死亡しています。女性が外出して下宿に帰宅した後に連絡が途絶え、その3日後に死亡しているところを発見されています。解剖の結果、肺動脈に血栓(血の塊)がみつかったそうです。
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このような事件を聞くとまず気になるのが血栓症を起こすリスクがなかったのかということですが、バイエル薬品株式会社の発表(注1)によると、喫煙はなく、肥満もなく(BMIは22.7)、血が固まりやすくなるような病気をした人が家族にいるわけでもありません。
これまでは死に至るような重篤な血栓症の副作用は、ピルを飲み出して数週間以内に起こることが多いとされていました。しかしこのケースでは飲み出して1年半が経過してからの発症です。しかも血栓症のリスクがほとんどないのにもかかわらず、です。
今後ピルを飲むすべての人は、血栓症の予兆(ふくらはぎの痛みや赤み、胸の痛み、息苦しさ、頭痛など)があれば直ちに主治医に相談すべきでしょう。もちろん禁煙をおこない、肥満があれば減量を試みるべきなのは言うまでもありません。
谷口恭
注1(2019年10月27日):バイエル薬品株式会社は事故があった直後に詳細をウェブサイトで報告していましたが、現在そのページは削除されています。下記は医療サイト「m3」の記事です。
https://www.m3.com/clinical/news/182534
参考:
医療ニュース2013年8月30日「超低用量ピルでの死亡例」
はやりの病気第87回(2010年11月)「超低用量ピルの登場」
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