医療ニュース
2021年1月29日 ベジタリアンは骨折しやすい
日本は諸外国と比べてベジタリアン、特にビーガンは少ないと言われていますが、太融寺町谷口医院の患者さんのなかに何人かはおられます。では、その人たちがとても健康かというと、そういうわけではなさそうです。貧血や低蛋白血症を防ぐためにサプリメントを多用して腎臓や肝臓を悪くするというケースはよくありますし、体重コントロールが上手くいかず過体重になっていく場合もあります。
今回紹介したいのは「ビーガンは骨折リスクが4割高い」というイギリスの研究です。医学誌「BMC Medicine」11月23日号に「ベジタリアンとビーガンの食事と骨折のリスク~前向きEPIC-Oxford研究の結果 Vegetarian and vegan diets and risks of total and site-specific fractures: results from the prospective EPIC-Oxford study」というタイトルで掲載されました。
ビーガンは肉、魚のみならず卵も乳製品も一切とらない最も厳しいベジタリアンで、骨折のリスクが上がるのは想像に難くありません。この研究では他のベジタリアンについても調査されています。
調査の対象は「EPIC-Oxford」と呼ばれる研究の参加者約55,000人で、追跡期間は平均17.6年です。参加者の内訳は、通常の食生活をしている人(肉も食べる人)が29,380人、肉は食べず魚を食べる人(これをpescetarianと呼びます)が8,037人、通常のベジタリアン(肉も魚も食べない人)が15,499人、ビーガンが1,982人です。追跡期間中に発生した骨折は3,941件です。
その結果、ビーガンはベジタリアンでない人に比べて、骨折のリスクが1.43倍になることが判りました。特に大腿骨近位部の骨折ではリスクが2.31倍にもなります。また、大腿骨近位部の骨折リスクは、ビーガン以外のベジタリアンでも上昇しています。魚を食べるが肉を食べないベジタリアン(pescetarian)は1.26倍、通常のベジタリアンは1.25倍となっています。
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ベジタリアンになってから(あるいはビーガンになってから)調子がいいという人に、無理に肉を食べろとは言いませんが、私の経験上、ベジタリアンでいい健康状態を維持している人はほとんど見たことがありません。
日本ではベジタリアン専用のレストランはあまりないと思いますが、海外ではよくあります。私は過去に一度バンコクのベジタリアン専門レストランに行ったことがあります。そこは「レストラン」というよりは体育館みたいなつくりで数百人のベジタリアンが集まってビュッフェ形式の食事を楽しんでいました。何人かに声をかけて気付いたのは、ほぼ全員が「ベジタリアンになって日が浅いこと」です。やはり長続きはしないのでは?、とその時感じました。
太融寺町谷口医院の患者さんで言えば、長続きして効果もでていることが多い食事療法は小麦制限です。あるいは極端なものは危険ですが、(小麦以外のものも含めた)糖質制限(低炭水化物ダイエット)やパレオダイエット(caveman diet)も、それなりにいい状態を維持し、かつ長続きしている人が多いようです。一方、ベジタリアンは軒並み上手くいっていません。
きちんとしたことを言うには症例数を増やして統計学的な検討を加えなければなりませんが、私の「印象」としては、(もちろん個人ごとに考えなければなりませんが)おしなべて言えば肉を中心の生活にした方がいいように思えます。
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