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2011年6月17日(金) 精神疾患の労災申請・認定が過去最多

 過重労働や人間関係のトラブルからうつ病などの精神疾患にかかって労災申請する人が年々増えていることがしばしば指摘されますが、2010年の労災申請は過去最多の1,181人となっています。6月15日、厚生労働省が公表しています。

 2009年の申請数が1,136人ですから45人の増加ということになります。認定されたのは308人で、2009年の234人よりも74人増えていることになります。

 厚労省によりますと、精神疾患による労災申請の多い業種は「社会福祉・介護」が85人、「医療」84人、「情報サービス」59人の順で、認定数も同じ傾向にあります。精神疾患になった人のうち、未遂を含む「自殺」は申請段階で171人、認定されたのは65人です。

 認定された308人の発症の原因や引き金となった「出来事」をみると、最も多いのが「仕事の内容・量に大きな変化があった」で41人(うち自殺が12人)、次いで「嫌がらせやいじめを受けた」が39人(自殺は5人)となっています。

 心筋梗塞や脳梗塞など「脳・心臓疾患」で労災申請した人は前年より35人増の802人で、4年ぶりの増加となります。しかし認定数は8人減の285人にとどまっています。そのうち、死亡で認定された人は113人で、こちらは7人の増加となります。

 脳・心疾患の労災認定が多い業種は、貨物運送(宅配やトラック運送)の57人、旅客運送(バスやタクシー)の17人などです。認定された人の1カ月の平均残業時間は80~100時間が92人、100時間以上が148人で、そのうち160時間以上も20人となっています。

 また、当初は労災と認められなかったものの審査請求などを経て逆転認定されたのは、精神障害で15人(うち自殺7人)、脳・心疾患で11人(うち死亡6人)となっています。

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 2010年のすべての労災申請数のなかで精神疾患に占める割合が6割に上っていることになります。精神疾患の労災申請者数を経時的にみてみると、2007年952人、2008人927人、2009年1,136人、2010年1,181人と、着実に増加していることが分かります。認定されたのは、2007年268人、2008年269人、2009年234人、2010年308人ですから、2009年にいったん減少しましたが2010年は再び増加に(それも大幅に)転じたことになります。

 改正された労働安全衛生法では、すべての事業者は、長時間労働者(通常は月の残業が80時間以上)には産業医による面接を受けさせなければならないことになっています。私も医師会などを通じて産業医の仕事をしていますが、従業員の健康管理に熱心な企業とそうでない企業の差がはなはだしい、と感じています。実際、月の残業時間が80時間どころか100時間を優に超えているのに、事業者から面接の話すらしてもらっていない、という人も少なくありません。

 今回の厚生労働省の発表で興味深いのは、精神疾患での労災申請者の業種が「介護」と「医療」で最も多いということです。本来なら、もっとも従業員の健康に注意していなければならないはずのこれらの業種で心の病を抱えている人が多いということにアイロニーを感じます。

(谷口恭)

参考:医療ニュース
2010年7月17日「「心の電話相談」が過去最多」
2009年6月11日「職場のストレスで「心の病」が過去最多」

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