医療ニュース
2013年6月28日(金) 新型コロナ(MERS)の最新情報
日本では発症例がないからなのか、あまり報道されていませんが、現在世界中の医療者にとって最も注目されている感染症がこのサイトで過去に何度かお伝えしている新型コロナウイルスです。あれほど騒がれていた鳥インフルエンザA(H7N9)がすっかり鳴りを潜めているのとは対照的です。
新型コロナウイルスは、国際ウイルス分類委員会により、病原体名を「Middle East respiratory syndrome coronavirus(MERS-CoV)」と命名することが決まり、これをWHO(世界保健機関)が承認し、日本の厚生労働省も追随しました。(今後このサイトでも、病原体名をMERS-CoV、病気の名称をMERSとします。尚、これらを日本語にすると、病原体名は「中東呼吸器症候群コロナウイルス」、病気の名前は「中東呼吸器症候群」となります)
MERSは、2012年9月から2013年6月26日までの間に、WHOに報告された全症例は77人で、このうち40人が死亡しています(注1)。(つまり感染者の2人に1人以上が死亡しているというわけです)
これまでの感染地域は、サウジアラビア、ヨルダン、カタール、UAEなど中東が多いのですが、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアなど西ヨーロッパや、チュニジアでも報告があります。中東以外の地域からの報告の大半は、中東から治療のために搬送された症例や、中東から帰国した後に発症した症例です。
しかし興味深いことに、フランス、イタリア、チュニジア、イギリスでは、中東への渡航歴がなく、感染者からの「人→人感染」が強く疑われています。
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今後、中東から帰国してから肺炎症状(高熱、咳など)が出現すればMERSを必ず鑑別しなければなりません。治療開始が遅れれば危険な状態になる可能性が高いですし、人から人への感染も防がなければならないからです。
WHOの発表には、(HIV陽性などの)免疫不全の状態であれば、肺炎症状がなくても、例えば下痢などの症状がある場合にもMERS-CoV感染の可能性を考慮すべき、とあります。
現在WHOは、入国時の特別なスクリーニング検査や渡航の制限、貿易の制限などを推奨していません。外務省海外安全ホームページ(MOFA)でも現時点では渡航の制限はおこなっていないようです(注2)。
(谷口恭)
注1:WHOはこの詳細を「Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV) – update」というタイトルで公表しています。下記のURLで閲覧することができます。
http://www.who.int/csr/don/2013_06_26/en/index.html
注2:この件については外務省の下記ページで詳しく知ることができます。
http://www2.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo.asp?infocode=2013C277
参考:医療ニュース
2013年5月27日「新型コロナ、人から人への感染がほぼ確実…」
2013年2月15日「新種のコロナウイルス、世界10例目と11例目」
2012年9月28日「重症化する新型コロナウイルス」
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