医療ニュース

2010年5月13日(木) 米国西部、致死的な真菌が蔓延する可能性

 クリプトコッカス症という病気をご存知でしょうか。

 クリプトコッカスという真菌による感染症で、この真菌は通常、土壌や鳥(ハトが多い)の糞中に生息しています。土や糞が乾燥すると、空気中に真菌が飛散して、ヒトが口から吸い込んで肺炎などを起こします。

 しかし、一部には健常人にも発症することがあるものの、大半は免疫不全にある人に起こる感染症で、エイズの合併症としても有名です。

 そのクリプトコッカス症が、米国オレゴン州で流行し死亡例もでています。医学誌『PLoS Pathogens』4月22日号(オンライン版)によりますと、死亡率は25%にも上るそうです。研究者によりますと、従来のクリプトコッカス症が免疫不全者に起こりやすいのに対して、現在流行しているタイプは、特に病気をもっていない健康な人にもかかりやすいようです。

 そして、この真菌は空中に浮遊し、まもなくカリフォルニア州に拡大する可能性があることを研究者らは警告しています。

 症状が出現するのは、真菌が感染してから数カ月後に現れることもあり、数週間続く咳や胸の痛み、息切れ、頭痛、体重低下などが起こりえます。治療薬はありますが、現在ワクチンはありません。

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 まだ分かっていることが少なく、今後の研究結果を待ちたいところです。

 クリプトコッカスには様々なタイプがあり、従来ヒトに感染しやすいとされているのは、Cryptococcus neoformansというものですが、今回流行しているのは、Cryptococcus gattiiというタイプだそうです。現在のところ、適切な治療をおこなえば治癒しうるようですので、渡米する人で風邪症状が出た人は疑ってみるべきかもしれません。

 この論文のタイトルは、「Emergence and Pathogenicity of Highly
Virulent Cryptococcus gattii Genotypes in the Northwest United
States」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://www.plospathogens.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.ppat.1000850

(谷口恭)

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