医療ニュース
2010年7月14日(水) 悪玉コレステロールが高い方が長生き!?
7月13日の読売新聞に驚くべき記事が報道されました。
同紙によりますと、日本脂質栄養学会は今年9月に、「LDL(悪玉コレステロール)が高い方が長寿に結びつく」との内容の指針を発表する方針だそうです。
また、「(総)コレステロール値が高く、高脂血症と診断された人の方が、そうでない人よりも脳卒中の死亡率が低く、症状も軽くなる」、という調査結果を、東海大の大櫛陽一教授がまとめた、とも報道されています。
今のところ、他のマスコミは同様の記事を報じていないようですし、この読売新聞の記事にしても論文に関する情報が述べられていないため、真偽の程を充分に検証することはできませんが、同紙はかなり断定的な表現を使っており、複数の専門家の声も載せているため、信憑性に高いのではないかと思われます。
同紙の報道をもう少し詳しくみてみましょう。
東海大の大櫛教授のグループは、動脈硬化が一因とされる脳卒中(脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血)で入院した患者計16,850人を対象に、高脂血症の有無と死亡率、症状の強さを比較しています。
その結果、脳梗塞で入院した患者のうち、高脂血症でない9,851人が入院中に死亡した割合は約5.5%、一方、高脂血症の2,311人の死亡率は約2.4%にとどまっていたそうです。脳内出血や、くも膜下出血でも、高脂血症があるグループで、死亡率は半分から3分の1だったそうです。
また、脳卒中で入院した患者と患者でない人を比較した調査では、患者のほうが高脂血症の割合が低かったそうです。(高脂血症があれば入院しにくいという意味でしょうか・・・)
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コレステロールのなかでも、LDL(いわゆる悪玉コレステロール)が高ければ動脈硬化を起こしやすい、そして動脈硬化があれば脳卒中や心疾患をおこしやすく寿命を縮めやすい、というのは我々医療従事者からみれば<常識中の常識>です。今回の報道はそれを根底からくつがえすものですから、私はこの報道を見たとき、私が記事を読み間違えているか誤報に違いないと感じました。しかし、文章をよく読めば読むほど「総コレステロール(もしくはLDLが)高い方が長生き・・・」、とはっきりと述べられています。
しかし、これまで国内外でコレステロール(とりわけLDL)の危険性については何度も信頼性の高い研究が報告されています。メタボリック・シンドロームの診断基準で、高脂血症の指標になっているのは、HDL(善玉コレステロール)が低すぎないか、あるいはTG(中性脂肪)が高すぎないか、です。メタボの診断基準にLDLが入っていないのは、「LDLが高いとそれだけで動脈硬化のリスク上昇は自明だから」、です。
果たして今後、コレステロール、とりわけLDLについてはどのように解釈すべきなのでしょうか。現在、LDLが高い患者さんに処方している高脂血症の治療薬はやめてもらうべきなのでしょうか・・・。
今後の報告を待ちたいと思います・・・。
(谷口恭)
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