医療ニュース

2011年7月26日(火) 身長が低いと脳卒中になりやすい

 身長が低いほど、脳卒中のリスクが高い・・・

 国立がん研究センターが、このような研究発表をおこない議論を呼んでいます。(注)

 この調査は、岩手、秋田、長野、沖縄の4つの地域の住民約15,000人(40~59歳)を対象とし、1990年から2005年まで追跡調査がおこなわれています。研究開始時に測定した身長に基づき、対象者を4つのグループに分類し、脳卒中の発症リスクとの関連が調べられています。約16年間の追跡期間中に合計565人が脳卒中を発症しています。

 調査結果によれば、脳卒中(脳出血・脳梗塞の双方を含みます)は、身長が低いほどリスクが高いという結果になっています。4つのグループのうち、最も身長が低いグループのリスクは、最も高いグループの1.6倍にもなるそうです。

 今回の研究結果について、研究者は、低身長のグループでは、身体活動量が少なく、肥満や高脂血症、喫煙、飲酒量が多いなどの特徴があったことを指摘しています。さらに、身長は、教育レベルや職業など社会経済要因(socioeconomic indicators)の影響を受けるということが述べられています。

 同様の報告は海外にもあるそうです。また、欧米の研究では、身長が低いほど虚血性心疾患に罹患しやすいというものがありますが、今回の日本人の研究では虚血性心疾患と身長との関連は認められなかったそうです。

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 身長が低い、ということに対してはどうすることもできないわけで、この点が、喫煙や食生活、運動などとの関連を調べた研究とは異なり、この研究結果を知ったからといって行動を変えるべきことはないかもしれません。

 しかし、論文のなかで、「身長が低い人は、身体活動量が少なく、肥満や高脂血症、喫煙、飲酒量が多い」という記載があり、身長が低い人で思い当たることがあるという人は行動の見直しをした方がいいかもしれません。

 もうひとつ気になるのが、低身長と教育レベルや職業との関連性が述べられていることです。このようなことは本当にあるのでしょうか。低身長は教育レベルが低い、などということが言われだすと、背の低い人に対する不当な偏見が蔓延してしまうのではないかと心配になります。

(谷口恭)

 
注1 この研究の詳細については、国立がん研究センターのサイトで読むことができます。下記URLを参照ください。
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/2775.html

また、さらに詳しく知りたい方は、医学誌『European Journal of Epidemiology
European Journal of Epidemiology』に掲載されている「Adult height and the risk of cardiovascular disease among middle aged men and women in Japan 」というタイトルの論文を参照ください。下記URLで全文を読むことができます。
http://www.springerlink.com/content/0303×67514537713/fulltext.pdf

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