医療ニュース
2012年12月28日(金) 筋力が低いと早死にのリスクに
10代のときに筋力が弱いと早死にのリスクになる・・・
これは、スウェーデンのカロリンスカ(Karolinska)研究所のFinn Rasmussen氏らの研究結果で、医学誌『British Medical Journal』2012年11月20日号(オンライン版)に掲載されています(注1)。
この研究では、16~19歳のスウェーデン人の男性1,142,599人が対象とされ、24年間追跡されています。研究開始時に筋力テストが実施され、早死に(早期死亡)の定義は「55歳前の死亡」とされています。24年の追跡期間中に全体の2.29%にあたる26,145人が死亡しています。
死因で最も多かったのが「自殺」で22.3%、「ガン」14.9%、「心血管疾患」7.8%と続きます。
筋力別の数字をみてみると、全死亡者では、最も筋力の低いグループは1年間で10万人あたり122.3人、最も筋力の高いグループでは86.9人となっています。心血管疾患による死亡率でみると、それぞれ9.5人、5.6人、自殺による死亡率ではそれぞれ24.6人、16.9人とされています。
筋力が高かったグループでは、血圧やBMIに関係なく(注2)、早期死亡のリスクが20~35%低く、自殺による早期死亡のリスクも20~30%低かったようです。また、統合失調症や気分障害といった精神疾患の診断を受ける可能性は15~65%低かったそうです。
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この研究から、「若い頃に筋力が高い(強い)人は死亡リスクが少なくなる」、ということは言えると思います。しかし、「筋力が高いことが原因で死亡リスクが減る」とか「筋力が低いことが原因で早死にしやすくなる」、とまでは言えないと思います。
つまり、若い頃にしっかりと筋肉がついている、ということは、定期的にスポーツをしており、規則正しい生活を心がけていて、健康に関心を持っている可能性が強いわけで、そのような人たちが長生きするのは当然といえば当然だからです。
この研究を読んで次に知りたいと思ったのは、女性ではどうなのか、ということと、(病気などで)10代の頃には筋力がさほどなかったけれど成人になってから、あるいは中年期になってから体を鍛えて筋肉をつけた場合はどうなるのか、という点で、これらは将来の研究に期待したいと思います。
現時点で確実に言えることは、性別や年齢に関係なく、運動習慣があり、ある程度の筋肉量を維持することが(身体的にも精神的にも)健康で長生きするのに有利である、ということだと思います。
(谷口恭)
注1:この論文のタイトルは、「Muscular strength in male adolescents and premature death:
cohort study of one million participants」で、下記のURLで全文を読むことができます。
http://www.bmj.com/content/345/bmj.e7279
注2:10代の頃に血圧が高い場合や、BMI(Body Mass Index)が高い場合(要するに肥満があるとき)に早期死亡するリスクがあることはこれまでの研究からあきらかとなっています。
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