医療ニュース
2013年5月14日(火) 米国のファイザー社がバイアグラの通販開始
バイアグラを含むED改善薬の「ニセ物」がインターネットで大量に出回っていることが以前より指摘されています。これに対抗するためなのか、米国ファイザー社は、なんと、バイアグラのネット通販を開始することを2013年5月6日に公表しました。
同社のウェブサイト(注1)によりますと、インターネットでバイアグラなどの売買をおこなっている業者は1万件以上あり、そのなかで合法的なサイトはわずか3%しかないそうです。
同社の調査によれば、「buy Viagra」のキーワードで検索上位に表示された「オンライン薬局」からバイアグラを購入したところ10件中8件がニセ物だったそうです。また、米国内で2012年に押収されたニセ物の薬の総額は約8,300万ドル(約83億円)にものぼり、さらに、こういったニセ物からは、殺鼠剤、道路用の塗料、床用のワックスやホウ酸なども検出されるそうなのです。
そこで同社がとった対抗措置が、バイアグラ通販の専用サイト(注2)というわけです。ユーザーは必要事項を入力するだけで”本物の”バイアグラを通販で入手することができるようです。ただし、実際にサイトをみてみると、医師の発行する処方箋は必要になるようです。
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同社のサイト(注1のURLです)には、ニセ物のバイアグラの写真も掲載されているのですが、横に掲載されている本物とまったくと言っていいほど見分けがつきません。これでは消費者(患者)が本物かニセ物かの見分けがつかないのも無理はありません。
インターネットで簡単に買える医薬品にニセ物が多いというのは随分前から指摘されているとおりで、太融寺町谷口医院にも患者さんから被害の声を聞くことがしばしばあります。幸いなことに、バイアグラなどのED改善薬の副作用で入院が必要になったという話はありませんが「まったく効かなかった」という声は少なくありません。
しかし、ニセ物のED改善薬が効かなかった、という「被害」であれば健康を損ねるわけではありません。困るのは副作用に苦しめられるときです。谷口医院では経験がありませんが、ファイザーの報告にあるように、殺鼠剤や道路用の塗料が検出されるなら、バイアグラのニセ物で致死的な副作用が出ることも起こりえます。
バイアグラなどのED改善薬は初回処方時には充分な問診と、場合によっては心臓の検査(心電図やエコーなど)も必要になりますが、特に持病もなくて副作用も出ない人であれば、毎回の診察は不要ではないかと私は考えています。(この考えに反対する医師もいるかとは思いますが…)
このバイアグラ通販のサイトを実際にみてみると、医師の名前を入力したり医師の発行する処方箋を送ったりしなければならず、すごく手軽に購入できるというわけではありません。しかし、それでもインターネットで購入できるなら多くのユーザーに喜ばれることは間違いないでしょう。医療機関を受診する手間が省けて、なおかつニセ物をつかまされるリスクがゼロになるわけですから、このウェブサイトは大変ありがたいものとなるに違いありません。
私個人としては、日本でも同様のシステムを取り入れるべきだと思います。今のところ、日本のファイザー製薬は、こういったウェブサイトに対するコメントを発表していませんが、今後の動向に期待したいと思います。もっとも、現在の法律(医師法及び薬事法)ではメーカーがインターネットを通してユーザーに直接販売することはできないでしょうから、法律の改正から考えなくてはならず、相当時間がかかるかとは思いますが…。
(谷口恭)
注1:この発表は下記のURLで読むことができます。ページの下の方にはニセ物のバイアグラの写真や、ニセ物を製造するときの様子をうつした写真も掲載されています。
注2:バイアグラ通販の専用サイト「Viagra.com」のURLを下記に記します。ただし、日本からは購入できないと思います。
参考:医療ニュース
2008年2月18日 「ニセ薬がインターネット上に大量に流通」
2007年2月20日 「ネット販売薬の半分はニセモノ」
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