医療ニュース
2013年6月7日(金) 近所にファストフード店が多いと肥満リスク増大
自宅の近くにファストフード店があれば肥満のリスクが上昇する・・・
このような研究結果がアメリカで報告され話題を呼んでいます。医学誌『American Journal of Public Health』(2013年5月16日号オンライン版)(注1)に詳細が報告されています。
この研究の対象は、米国テキサス州ヒューストン在住の黒人成人約1,400人で、自宅から、0.5マイル(約800m)、1マイル(約1.6km)、2マイル(約3.2km)、5マイル(約8km)内にあるファストフード店の数が調べられています。その結果、対象者の自宅から800m以内に2.5軒、1.6㎞以内に4.5軒、3.2㎞以内に11.4軒、8km以内に71.3軒のファストフード店があったそうです。
ファストフード店の数と肥満の程度を分析した結果、自宅から店までの近さと肥満には有意な関連が認められ、ファストフード店からの距離が1.6㎞離れるごとにBMI(注2)は2.4%低下したそうです。
興味深いことに、この研究ではファストフード店の数だけではなく対象者の所得も調べられています。年収が4万ドル(約400万円)以上かそれ未満かで2つのグループに分けて解析すると、低所得群(年収4万ドル未満)では、自宅から800m、1.6㎞、3.2㎞の範囲内にあるファストフード店の数が多ければ多いほどBMIが高かったそうです。
一方、高所得群では、このように近距離にファストフード店が多いほど肥満になるという傾向は認められなかったそうです。
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この研究をまとめると、「自宅近くにファストフード店があれば肥満になりやすい。さらに低所得者の場合は、近くにファストフード店の数が多ければ多いほどそのリスクが高くなる」、ということになります。
なぜ年収でこのような差がでるのかについて推測すると、ひとつには低所得者の活動圏は自宅近くに限られている可能性があります。この理由としては、低所得者は労働が不安定で(つまり仕事がなく)、自家用車などの移動手段を持っておらず、休日にも遠くに出かけることができない、といった理由が考えられるでしょう。
この調査は黒人に限ってのことですが、同様のことが白人やアジア人にも言えるのでしょうか。アメリカでは、ファストフード店での食事が肥満や糖尿病に影響を与えるのは白人よりも黒人で顕著であると言われています。そして、これは黒人だけでなくアジア人でも同様です(注3)。
この次引越しするときはファストフード店から遠いところを選ぶ・・・、そんなことを考える人がこれから増えてくるかもしれません。
(谷口恭)
注1 この論文のタイトルは、「Density and Proximity of Fast Food Restaurants
and Body Mass Index Among African Americans」で、概要を下記URLで読むことができます。
注2 BMIとはBody Mass Indexの略で、体重(kg)÷身長(m)の2乗で算出します。例えば体重120kgで、身長2mなら、120÷2の2乗=30となります。この人がファストフード店から1.6km離れたところに引っ越すとすると(この仮定が、最寄りのファストフード店から1.6km離れるという意味なのか、複数のファストフード店から平均1.6km離れるという意味なのかは論文からはよくわかりませんが)、BMIが2.4%減少するということは、体重は2.88kg減って117kgになることになります。(120kg-30x(1-0.024)x2x2)=2.88)
注3:アジア人を対象とした研究で、「週2回のファストフード店の利用で、糖尿病発症リスク、心筋梗塞による死亡のリスクが上昇する」、というものがあります。興味のある方は下記コラムを参照ください。
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