医療ニュース
2023年3月6日 昼寝はうつ病のリスク因子
2007年の谷口医院の開院以来、「睡眠」の相談は数えきれないくらいに聞いています。「寝付けない」「途中で目覚めてしまう」「睡眠時間は長いが熟睡できない」といった狭義の不眠の悩み以外にも、「いくら寝ても寝足りない」「日中すぐに寝てしまう」なども少なくありません。数年前からは「精神科で処方された睡眠薬をやめたい」という訴えが目立ちます。
様々な睡眠の悩みのなかで「昼寝」についての相談も少なくありません。ただ、昼寝についてはよく分かっていないことが多く、私自身も通り一辺倒に回答しているわけではありません。ある患者さんには昼寝を推奨し、また別の患者さんには昼寝をしないよう助言することもあります。ですが、長時間の昼寝は原則として「やめる」ように話をしています。今回紹介する研究はその私の方針を裏付けることになるかもしれません。
昼寝はうつ病のリスク因子である……
医学誌「Frontiers in Psychology」2022年12月15日号に掲載された論文「昼寝とうつ病のリスク:観察研究のメタ分析(Daytime naps and depression risk: A meta-analysis of observational studies)」はそのように結論づけています。
この研究はこれまで発表された論文を改めて検討し解析しなおす「メタ分析」によっておこなわれています。2022年2月までに発表された良質の研究9件をピックアップし、合計649,111人を対象として解析を加えました。
結果、昼寝をする人は、しない人に比べて抑うつ症状をきたすリスクが15%高いことが分かりました。
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この研究が少し残念なのは、昼寝の時間でリスクがどれだけ変わるかが分からないことです。
谷口医院の経験でいえば、短い時間の昼寝、例えば「5~10分程度の昼寝」であれば健康に寄与していることが多く、うつ病のリスクが上昇するなどとは思えません。その逆に、この短時間睡眠で再び集中力が生まれてきます、運転中どうしようもなく眠くなったときに路肩に車を止めて5分眠ればすっきりしたという経験がある人も多いでしょう。
では昼間に1時間寝るという人はどうでしょうか。1時間以上昼寝をする人はたいてい生活が乱れてきます。特に、一日中家にいる人がこういう昼寝をするとどんどん体調が悪化して、この論文が示すとおり抑うつ状態が進行します。
例外があることは認めますが、ほとんどの人は「朝早く起きて昼寝は最小限(5~10分)とする」が理想だと思います。夜中に仕事をしている人の場合も、「起きる時刻を一定にする」が基本であり、好きなときに眠る、というライフスタイルではやがて心身が病んでいきます。
調子が悪くならない「例外」としては、「3時間睡眠を1日2回とる」「2時間睡眠を3回とる」などの方法でうまくいっている人がいます。こういう睡眠パターンの方が生活のパフォーマンスが上がるという人もいます。それは否定しませんがやはり例外的だと思います。
また自称「ショートスリーパー」の人もたくさんみてきましたが、そのうちに心身が疲労してくる人がほとんどです。「睡眠は〇時間が理想」というのは人によって異なりますが、谷口医院の患者さんを大勢みてきて「ほとんどの日本人は6~7.5時間くらいが適しているのではないか」と感じています。
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