医療ニュース
2018年3月2日 有酸素運動が過敏性腸症候群を改善する
腸の疾患で最も多いのはおそらく「過敏性腸症候群」で、太融寺町谷口医院(以下「谷口医院」)にもほぼ毎日患者さんが受診しています。過敏性腸症候群には「下痢型」「便秘型」「混合型」があり、程度も軽症から重症まで様々です。重症化すると、いつ便をもよおすか分からないために、外出が困難になり、電車に乗れないという人もいます。
治療にはまずプロバイオティクス(整腸剤)を用いますがこれだけで改善するケースはそう多くありません。下痢型の場合には便を固める薬や、お腹の動きを止める薬も用います。また、イリボー(ラモセトロン塩酸塩)と呼ばれる薬や、精神症状も出現している場合はやむを得ず精神安定剤を用いることもあります。
過敏性腸症候群はよく「ストレスで悪化する」と言われ、これは正しいとは思いますが、精神的ストレスのみで説明できるわけではありません。谷口医院の患者さんには運動、特に有酸素運動を勧めることがあり、それなりに有効であるように思われます。今回、それが正しいことを裏付けるかもしれない研究が発表されたので紹介したいと思います。
有酸素運動が女性の過敏性腸症候群を改善させる…。
医学誌『Cytokine』2018年2月号(オンライン版)にこのような研究が発表されました(注1)。
研究の対象者は、診断基準を満たした過敏性腸症候群の女性患者109人から60人を選び出し、有酸素運動を実施するグループ30人と、運動をしないグループ30人に分けられました。調査期間は24週間。つまり約半年間、有酸素運動をすればしない場合に比べてどの程度症状が改善するかが調べられました。主な指標とされたのが、サイトカインと呼ばれる免疫に関与する物質や抗酸化物質などです。そして、症状の改善と相関関係が認められました。
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一昔前は過敏性腸症候群といえば「ストレスの病気」と簡単に片づけられていました。それが、サイトカインを代表とする物質の関与が判ってきて、さらに最近では腸内細菌との関連も指摘されるようになってきています。
今回の研究は小規模ではありますが、有酸素運動が免疫系を整えて過敏性腸症候群の症状を改善することが実証されたわけです。そして、有酸素運動には一切のデメリットはありません。また、過敏性腸症候群ではなく単なる「便秘」の人も、ジョギングなど有酸素運動をするだけで「完治」することも珍しくありません。
有酸素運動をあえてしない理由など何もないというわけです。
注1:この論文のタイトルは「Low-to-moderate intensity aerobic exercise training modulates irritable bowel syndrome through antioxidative and inflammatory mechanisms in women: Results of a randomized controlled trial」で、下記URLで概要を読むことができます。
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1043466617303873
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