医療ニュース

2016年10月8日 対馬での日本脳炎「集団感染」の謎

 すでにマスコミで報道されているように2016年9月末に対馬で合計4人の日本脳炎発症者が確認されました。対馬は、地理的には福岡県または佐賀県と釜山の中間くらいに位置した島ですが、行政上は長崎県になります。その長崎県の発表によれば、感染した4人には行動範囲などに共通性がないことから、集団感染や院内感染は否定されています。

 4名の患者は、70歳代の男性2人と80代の男女1人ずつです。

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 この報道がとても不可解なのは、対馬には豚がいないはずだからです。日本脳炎ウイルスは豚→蚊(コガタアカイエカ)→ヒトと感染します。感染者がいるということはコガタアカイエカは必ず対馬にいます。たとえまだ蚊が発見されていなくても確実に存在します。しかし、豚は(まさか野生の豚はいないでしょうから)養豚場がなければ存在しているはずがありません。

 にもかかわらず日本脳炎が発症したのはなぜなのでしょう。一部の報道ではイノシシ(野生のイノシシはいるでしょう)が豚の代わりとなったのではないかと言われていますが真相はわかっていません。

 ところで、私はこのコラムのタイトルに「集団感染」という言葉を入れました。長崎県が正式に「集団感染」を否定しているのに、です。この理由を述べたいと思います。報道されているように確かに4人の患者には共通点がありません。しかし、日本脳炎は感染しても、発症するのは、100人から1,000人にひとりくらいです。そして対馬の人口は3万人程度のはずです。仮に1,000人に1人発症したとすると、4人の発症者は感染者4千人を意味します。人口3万人のうち4千人が感染したとすると、感染率は10%を超えます。これは立派な「集団感染」です。

 過去の医療ニュースでお伝えしたように、2016年7月11日、韓国保健福祉部は、韓国全土に「日本脳炎警報」を発令しました。イノシシが感染源になっているかどうかは別にして、コガタアカイエカが朝鮮半島から対馬にかけて大量発生しているのは間違いないでしょう。

参考:
医療ニュース2016年7月13日「韓国全土に日本脳炎警報」
はやりの病気第63回(2008年11月)「日本脳炎を忘れないで!」

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