医療ニュース
2015年9月5日 立ちっぱなしも健康にNG?
「座りっぱなし」が生活習慣病の大きなリスクとなり、規則正しい生活を心がけようが定期的な有酸素運動をおこなおうがそのリスクが減るわけではないとする研究もある、という話を過去に何度かおこなってきました。
ならば立ちながら仕事をすればいいのでは?となるわけで、私もそのように思っていたのですが、「立ちっぱなしの仕事が健康に被害をもたらす」という研究がでてきました。
医学誌『Human Factors』2015年6月5日(オンライン版)に掲載された論文(注1)によりますと、1日5時間の立ちっぱなしの仕事をおこなうと下肢筋肉の疲労を引き起こし、腰痛や筋骨格障害のリスクが高まる可能性があるとしています。
この研究はスイス連邦工科大学(ETH, Eidgenössische Technische Hochschule)の研究チームによっておこなわれています。対象者は男性14人、女性12人で、半分が18~30歳、残りの半分は50~65歳です。過去に神経障害や筋骨格障害がないことが条件で、前日の激しい運動は控えてもらっています。
対象者全員に工場でおこなうような軽作業をシミュレートしてもらっています。5時間の立ちっぱなしの業務の間、何度かの5分間の休憩と30分の昼食休憩が設けられています。
姿勢の安定と下肢の筋力を計測し、対象者には不快度を答えてもらっています。結果、年齢・性別にかかわらず、作業日の終了時に著しい疲労を感じていることがわかりました。
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この研究、きちんとした医学誌に掲載されたこともあり興味を持ったのですが、対象者が少なく、長期間での検討がなされていません。日頃、立ちっぱなしになる習慣のない人が5時間も立ったままの仕事をやらされれば不快感を自覚するのは当然のことであり、日頃使っていない筋肉に負荷をかけることになるでしょうから、筋力低下が生じるのも十分理解できることです。
座りっぱなしの危険性が指摘されるのは、生活習慣病のリスクが上昇するということ、食事や運動を改善させても座りっぱなしのリスクが軽減されない可能性があること、です。立ちっぱなしに健康被害があることを証明するには、長期間の観察が必要なのは当然であり、さらに一時的な筋肉の疲労などではなく(これらは慣れると改善する可能性が高い)、生活習慣病の罹患率や死亡率との関連を調べなければなりません。
一方で、今回の論文では触れられていませんが、「下肢静脈瘤」が立ちっぱなしの仕事をしている人に多いのは自明です。つまり、立ったままじっとしていれば下肢にたどり着いた血液が戻りにくくなりうっ滞し、その結果下腿がむくみ心臓に戻れなくなった血液が静脈を太らせるようになるのです。これを解消するには、足踏みをする、(可能なら)そのあたりを動き回る、などの工夫が必要です。
立ちっぱなしの健康被害を総まとめする必要がありそうです。
注1:この論文のタイトルは「Long-Term Muscle Fatigue After Standing Work」で、下記URLで概要を読むことができます。
http://hfs.sagepub.com/content/early/2015/06/05/0018720815590293.abstract
参考:
メディカルエッセイ第129回(2013年10月)「危険な「座りっぱなし」」
医療ニュース
2014年8月22日「運動で「座りっぱなし」のリスクが減少する可能性」
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