医療ニュース

2007年10月22日(月) ピルは発癌リスクを低下させる

 ピルを飲むと癌(ガン)になりやすいのではないか・・・

 そのような印象をお持ちの方は少なくないようです。実際、ピル(経口避妊薬)を飲むとガンになりやすいかどいうかは、これまでも何度も研究されており、様々なデータがでています。

 ピルを服用すると、乳癌、子宮頸癌、肝癌のリスクが増大するとの研究結果がある一方で、子宮内膜癌、卵巣癌、結腸・直腸癌のリスクが低下するとの報告もあり、全体としての発癌リスクへの影響ははっきりしません。

 今回大規模な研究をおこなったのは、イギリス・アバディーン大学一般医療・プライマリケア科のHannaford氏らのグループです。同グループは、ピルに関する長期試験のデータを用い、非使用者に比べ使用者では全体として発癌のリスクが低下するとの仮説の検証を行いました。(詳しくは、「BMJ」という医学雑誌の9月11日付オンライン版に掲載されています)

 同グループは、1968年に開始された試験のデータを用いて発癌リスクを評価しています。

 その結果、ピルは発癌リスクを増大させず、むしろベネフィット(利益)をもたらすことが分かりました。

 非使用者に比べ使用者では、大腸/直腸、子宮体部、卵巣、部位不明の癌、婦人科癌の併発癌などの発現率が有意に低下していました。使用期間が長くなるに従って、子宮頸癌、中枢神経系あるいは下垂体癌のリスクは有意に増大し、子宮体部癌、卵巣癌のリスクは有意に低下していました。

 これらの知見をふまえ、同グループ代表のHannaford氏は、「ピルは全体として発癌のリスクを増大させず、むしろベネフィットをもたらす可能性が示唆された」と結論しています。

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 実際には、国や地域ごとに検証されなければならないのですが、今回の報告はピル使用者(あるいはこれから使用を考えている人)にとって有益な情報と言えるでしょう。

 子宮頚癌については、原因がHPV(ヒト・パピローマ・ウイルス)であることが分かっており、今後HPVに対するワクチンが普及すれば、いずれ劇的に減少すると考えられています。(ただし現在世界70ヶ国以上で使用されているこの有益なワクチンは、日本では承認すらされていません)

 現時点で、ピルが子宮頚癌や乳癌のリスクを増加させるか否かについてはまだはっきりとしないところがありますが、どちらの癌も定期的な検診で大事に至ることは阻止できます。

 ピルを飲んでいる、いないにかかわらず、これらの癌の定期的な検診が重要であることには変わりありません。

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