医療ニュース

2009年3月10日(火) メタボ腹の基準をめぐって

 メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の診断基準は、腹囲が男性で85センチ以上、女性で90センチ以上ということになっています。しかし、この基準をめぐって以前から様々な議論があり、専門家の間でも意見がわかれていました。

 この度、「単に腹囲が大きいだけでは生活習慣病の危険要因としては不十分」という調査結果を厚生労働省の研究班が発表し議論を呼んでいます。(報道は3月2日の読売新聞)

 研究班では、無作為に選んだ愛知県内の40~82歳の男女3,253人について、内臓脂肪の断面積をコンピューター断層撮影法(CT)で計測しました。内臓脂肪面積が100平方センチ以上の肥満の人とそれ未満の人で、2000年から6年間、心臓病や脳卒中を引き起こす動脈硬化の進み具合を、心臓の冠動脈や脳血管の梗塞の有無など6項目で比較しています。

 その結果、肥満の人は、そうでない人に比べ、動脈硬化のある人の割合が、心臓の冠動脈は女性では約1.2倍となっていますが男性では差がみられず、脳内の細い血管では男性は約1.2倍となっていますが女性では差はほとんどありません。6項目すべてで差は1.5倍未満にとどまっており、「全体として関連はそれほど強くない」と分析されています。

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 昨年4月から「特定検診」(いわゆる「メタボ検診」)が始まっていますが、この検診の基準は腹囲が重視されており、血圧、血糖値、脂質のすべての異常があったとしても、腹囲が基準を超えていなければ指導の対象にはなりません。

 一方、実際の患者さんをみていると、肥満度はそれほどたいしたことがないのに糖尿病があったり高脂血症があったり、ということがよくあります。

 腹囲の診断基準に関する”論争”が過熱しすぎているような感じがします。

(谷口恭)

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