医療ニュース
2010年6月20日(日) 白米→玄米で糖尿病のリスクが低下
白米は糖尿病のリスクとなり、もしも白米をすべて玄米に替えると糖尿病のリスクは16%減少する・・・
これは、米国ハーバード大学公衆衛生学教室のQi Sun氏らの研究結果で、医学誌『Archives of Internal Medicine』2010年6月号に論文が掲載されています。(下記参照)
研究者らが今回おこなったのは、過去の疫学データを検証するという方法です。米国の32~87歳の男性医療従事者を対象とした研究(HPFS)と、米国の37~65歳及び26~45歳の女性看護師を対象とした研究(NHS Ⅰ及びⅡ)のデータを検証しています。今回の研究の対象者は、これらの過去の研究の対象者から、元々糖尿病のあった症例、心血管障害やガンの罹患者、1日当たりのカロリー摂取量が極端に低い例や高い例を除いた合計197,228人で、14~22年間追跡調査をおこない、糖尿病を発症したかどうかを調べています。
その結果、追跡期間中に糖尿病を発症したのは合計2,648例で、白米及び玄米の摂取量から糖尿病の発症率を算出すると、1日50グラムの白米を玄米(brown rice)に切り替えると糖尿病発症のリスクを16%下げることができるという結果が導かれています。また、白米を精白されていない穀物(whole grains)に切り替えることで36%下げることができるとされています。
**********
この研究は米国人を対象としています。当然ながら、米国人は日本人ほど米を食べません。この研究では、「1日50グラムの白米を・・・」という仮定で試算されていますが、白米1合でだいたい150グラムです。ということは、この研究を悲観的に捉えると、「毎日白米を大量に食べている日本人はそれだけで糖尿病のリスクを抱えている」、ということになってしまいます。実際、日本を含むアジアでは白米の高量摂取が糖尿病やメタボリックシンドロームと関連するという研究が発表されたこともあります。
しかし、我々日本人は白米なしで生きていくことはできないでしょう。(こう決めつけてはいけませんが私個人としては無理です・・・) 私は一度、健康のため、と考えて主食を玄米に替えてみたことがあるのですが、1週間で断念しました。その後、白米と玄米を半分ずつにして炊いてみたのですが、やはり1週間で断念しました。
マクロビオティックという健康法(というか食事法)がありますが、これを厳格にすれば白米は食べられなくなります。実際、マクロビオティックを本格的に実践している家庭で育てば、白米の味を知らないまま生涯を過ごすことになりかねません。私は以前ある雑誌で、マクロビオティックで育てられた子供が小学校の卒業文集に「白いご飯を食べたい」と書いた、という記事をみたことがあります。この小学生は現在成人していますが糖尿病は発症していないものの、いまだに白米は食べさせてもらえないそうです。
話がそれましたが、白米を食べ過ぎるのはよくないにしても、すべてを玄米や精白されていない穀物に替えるべき、という運動が起こらないことを祈りたいと思います・・・。
(谷口恭)
注:この論文のタイトルは、
「White Rice, Brown Rice, and Risk of Type 2 Diabetes in US Men and Women」で、下記のURLで概要を読むことができます。
http://archinte.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=416025
最近のブログ記事
- 2024年9月19日 忍耐力が強い人は長生きする
- 2024年9月8日 糖質摂取で認知症のリスクが増加
- 2024年8月29日 エムポックスよりも東部ウマ脳炎に警戒を
- 2024年8月4日 いびきをかけば認知症のリスクが低下?
- 2024年7月15日 感謝の気持ちで死亡リスク低下
- 2024年6月30日 マルチビタミンで死亡率上昇?
- 2024年6月5日 15歳老けてみえる人は大腸がんかも
- 2024年5月31日 インターネットは幸せにつながる
- 2024年5月1日 座りっぱなしの死亡リスクはコーヒーで解消? 30分減らせば血圧低下
- 2024年4月29日 GLP-1受容体作動薬、パーキンソンにもアルツハイマーにも有効か
月別アーカイブ
- 2024年9月 (4)
- 2024年8月 (1)
- 2024年6月 (2)
- 2024年5月 (2)
- 2024年4月 (2)
- 2024年3月 (2)
- 2024年2月 (3)
- 2024年1月 (1)
- 2023年12月 (2)
- 2023年11月 (2)
- 2023年10月 (2)
- 2023年9月 (2)
- 2023年8月 (1)
- 2023年7月 (3)
- 2023年6月 (2)
- 2023年5月 (2)
- 2023年4月 (2)
- 2023年3月 (2)
- 2023年2月 (2)
- 2023年1月 (2)
- 2022年12月 (2)
- 2022年11月 (2)
- 2022年10月 (2)
- 2022年9月 (2)
- 2022年8月 (2)
- 2022年7月 (2)
- 2022年6月 (2)
- 2022年5月 (2)
- 2022年4月 (2)
- 2022年3月 (2)
- 2022年2月 (2)
- 2022年1月 (2)
- 2021年12月 (2)
- 2021年11月 (2)
- 2021年10月 (2)
- 2021年9月 (2)
- 2021年8月 (2)
- 2021年7月 (2)
- 2021年6月 (2)
- 2021年5月 (2)
- 2021年4月 (4)
- 2021年3月 (2)
- 2021年1月 (2)
- 2020年12月 (3)
- 2020年11月 (3)
- 2020年9月 (2)
- 2020年8月 (2)
- 2020年7月 (1)
- 2020年1月 (2)
- 2019年12月 (2)
- 2019年11月 (2)
- 2019年10月 (2)
- 2019年9月 (2)
- 2019年8月 (2)
- 2019年7月 (2)
- 2019年6月 (2)
- 2019年5月 (2)
- 2019年4月 (2)
- 2019年3月 (2)
- 2019年2月 (2)
- 2019年1月 (2)
- 2018年12月 (2)
- 2018年11月 (2)
- 2018年10月 (1)
- 2018年9月 (2)
- 2018年8月 (1)
- 2018年7月 (2)
- 2018年6月 (2)
- 2018年5月 (4)
- 2018年4月 (3)
- 2018年3月 (4)
- 2018年2月 (5)
- 2018年1月 (3)
- 2017年12月 (2)
- 2017年11月 (2)
- 2017年10月 (4)
- 2017年9月 (4)
- 2017年8月 (4)
- 2017年7月 (4)
- 2017年6月 (4)
- 2017年5月 (4)
- 2017年4月 (4)
- 2017年3月 (4)
- 2017年2月 (1)
- 2017年1月 (4)
- 2016年12月 (4)
- 2016年11月 (5)
- 2016年10月 (3)
- 2016年9月 (5)
- 2016年8月 (3)
- 2016年7月 (4)
- 2016年6月 (4)
- 2016年5月 (4)
- 2016年4月 (4)
- 2016年3月 (5)
- 2016年2月 (3)
- 2016年1月 (4)
- 2015年12月 (4)
- 2015年11月 (4)
- 2015年10月 (4)
- 2015年9月 (4)
- 2015年8月 (4)
- 2015年7月 (4)
- 2015年6月 (4)
- 2015年5月 (4)
- 2015年4月 (4)
- 2015年3月 (4)
- 2015年2月 (4)
- 2015年1月 (4)
- 2014年12月 (4)
- 2014年11月 (4)
- 2014年10月 (4)
- 2014年9月 (4)
- 2014年8月 (4)
- 2014年7月 (4)
- 2014年6月 (4)
- 2014年5月 (4)
- 2014年4月 (4)
- 2014年3月 (4)
- 2014年2月 (4)
- 2014年1月 (4)
- 2013年12月 (3)
- 2013年11月 (4)
- 2013年10月 (4)
- 2013年9月 (4)
- 2013年8月 (172)
- 2013年7月 (408)
- 2013年6月 (84)