医療ニュース

2015年6月6日 フェイスブックで「うつ」になる理由とは

 フェイスブックのサービスが「うつ」を誘発する・・・

 このようなユニークな研究が医学誌『Journal of Social and Clinical Psychology』に掲載されました(注1)。

 なぜ、フェイスブックでうつになるのでしょうか。論文のタイトルがその答えを物語っています。そのタイトルとは、「Seeing Everyone Else’s Highlight Reels: How Facebook Usage is Linked to Depressive Symptoms」、日本語にすると「フェイスブックでうつ状態になるのは他人のいいところを見るから」くらいになるでしょうか。

 ここで興味深いのが、「他人」という表現が「someone else」でなく「everyone else」が使われていることです。おそらく、フェイスブックで他人の情報をみていると、自分以外の「他人全員」に何やら素敵なことが次々と起こり、自分だけが取り残されているという感覚になることを差しているのでしょう。

 Highlight reelsという表現も、ワクワクすること、ドキドキすること、素敵なことなどが、あたかも釣り糸に次々とかかってくるようなイメージを伴います。

 この論文の執筆者は米国ヒューストン大学のMai-Ly Steers氏です。氏は、研究によりうつ状態とフェイスブックの長時間の利用に相関があるとしています。その理由として、通常なら知ることのできなかったプライベートな情報が入ってくることで他人と自分を比較する機会が増える、といったことを指摘しています。

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 この研究についてはヒューストン大学のホームページでも別の学者(著者の指導者でしょうか)により紹介されており、こちらの方がオリジナルの論文を読むよりもわかりやすくまとめられています(注2)。

 私自身はフェイスブックをしていませんが、している友達に少し見せてもらったことが何度かあります。きれいな写真と共に近況報告がなされているわけですが、この論文を読んだときに、そういえば自慢話のようなものが多いな、ということを思い出しました。実際、この論文の著者も、フェイスブックへの投稿は悪いことは取り上げずに良いことを選択する傾向にある、といったことを述べています。

 他人の近況なんか無視すればいいんじゃないの?、と私などは思ってしまいますが、たしかに他人の行動が気になって仕方がない、他人と比較せずにはいられない、という人が多いのは事実です(注3)。私はこのような性格の者は、アメリカ人よりも日本人に多いのではないかと思っていたのですが、この研究はアメリカでおこなわれたものです。日本ではアメリカ以上に、「フェイスブックで他人と比較してうつ状態」が多いのではないでしょうか。

注1:この論文のタイトルは「Seeing Everyone Else’s Highlight Reels: How Facebook Usage is Linked to Depressive Symptoms」で、下記URLで全文(PDF)を読むことができます。

http://guilfordjournals.com/doi/pdf/10.1521/jscp.2014.33.8.701

注2:このニュースのタイトルは「UH Study Links Facebook Use to Depressive Symptoms」で、下記URLで全文を読むことができます。

http://www.uh.edu/news-events/stories/2015/April/040415FaceookStudy

注3:他人のことを気にしない、という考えに興味のある方は下記コラムも参照ください。

マンスリーレポート2015年3月号「競争しない、という生き方」

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