医療ニュース

2007年2月11日(日) アジア渡航者はデング熱にご用心

 デング熱という病気をご存知でしょうか。

 この感染症は主に東南アジアでよくあるもので、ネッタイシマカと呼ばれる蚊がデングウイルスを人から人に媒介することによって発症します。

 最近は、東南アジアの急速な都市化もあってなのか、デング熱が東南アジアで流行しています。2月9日のチャンネル・ニュース・エイジアによりますと(報道はバンコクポスト)、現在この感染症が急増しているそうです。

 このデング熱の大幅な減少に成功しているのがシンガポールです。シンガポールの2005年のデング熱罹患者は14,200人でしたが、昨年(2006年)は3,100人にまで減少しています。

 先週は、シンガポールでWHOの地域会議があり、シンガポールの公衆衛生学者が、「デング熱の対策は国ごとではなく東南アジア一体で取り組むべきだ。シンガポールはネッタイシマカの棲息地域を明らかにすることによってこの感染症の減少に成功している。今後はこの対策を東南アジア全体でおこなうことが必要である」、と述べました。

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 デング熱は感染してから数日から2週間くらいの間に、高熱、皮疹などが出現します。(ときに患者さんは急性HIV感染症を疑って医療機関を受診します)

 特別な治療法はなく、点滴と解熱薬のみで経過をみるのが標準的な治療です。感染者のなかには、いったん解熱してから体中から出血がおこり危険な状態になる場合があるので(これを「デング出血熱」と言います)、入院治療をおこなうのが原則です。

 日本にはネッタイシマカが棲息しておらず、感染者のほぼ全員がアジアの旅行から帰った後に発症しています。インドやネパールで発症したという話も聞きますが、私の経験で言えば、特に多いのが、サムイ島やプーケットといったタイのリゾート島です。

 デング熱はワクチンもなく、ときに致死的な状態になりますから、予防対策をしっかりとおこなわなければなりません。アジアのリゾート地に行くときは、蚊よけのクリームや蚊取り線香を忘れないようにしましょう。

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