医療ニュース
2011年9月5日(月) イソフラボンは骨密度にも更年期にも無効
大豆イソフラボンのサプリメント(以下イソフラボン)は、女性ホルモンに似た働きをしてかつ安全であるという理由から、骨粗しょう症の予防や更年期障害の症状軽減を目的として幅広く摂取されています。ところが、骨粗しょう症に対しても更年期障害に対しても治療にも予防にもならない、という研究結果が医学誌『Archives of Internal Medicine』2011年8月22日号(オンライン版)に発表されました(注)。
この研究では、研究開始時点で骨密度が正常の45~60歳の女性248人が対象とされています。対象者を2つのグループにわけ、一方にはイソフラボンのサプリメントを服用(1日200mgを2年間)してもらい、もう一方にはプラセボ(偽薬)を服用してもらっています。尚、対象者は自分の服用するものがイソフラボンなのか偽薬なのか分からないようになっています。
2年後に対象者の骨密度を測定したところ、2つのグループ間に差は認められなかったそうです。
さらに、更年期障害の症状を聞き取りしたところ、顔面紅潮以外は症状にグループ間の差は認められていません。しかも、その顔面紅潮もイソフラボンを服用していたグループに多かったのです。(イソフラボン服用者の48%以上、プラセボ群の約32%に認められています) また統計学的な有意差はないものの、イソフラボンのグループの方が便秘を訴える人が多かったそうです。
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骨粗しょう症の予防や更年期障害の治療にホルモン補充療法というものが注目されていた時代がありました。しかし、有用性と副作用について検証されたWHI(Women’s Health Initiative study)と命名された大規模調査で否定的な結論が出てから見方が変わりました。その否定的な結論とは、「浸潤性乳ガンのリスク上昇と、乳ガン診断が遅れる危険性」です。それでも症例によっては積極的に検討すべきという意見もあり、完全に否定されているわけではありませんが、この調査の結果が発表されてからは、かつてほどホルモン補充療法が積極的におこなわれなくなってきているのは事実です。
その影響も受けて、「天然の女性ホルモン」とも言われるイソフラボンが一躍脚光を浴びだしたという経緯があります。しかし、今回のこの研究ではイソフラボンの有益性は否定されており、今後女性の骨密度対策や更年期障害対策の見直しが必要となるでしょう。
それにしても、サプリメントの有益性を検討した研究では、残念ながら大半が否定的な結果が出されているような印象があります・・・。
(谷口恭)
注:この論文のタイトルは「Soy Isoflavones in the Prevention of Menopausal Bone Loss
and Menopausal Symptoms」で、下記のURLで概要を読むことができます。
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