医療ニュース

2011年10月31日(月) 過去最大規模の研究で携帯電話と脳腫瘍に関連なし?

 2011年5月31日、WHO(世界保健機関)は、携帯電話の使用は発ガン性があるかもしれない(possibly carcinogenic)との見解を公表しました。(下記医療ニュースを参照ください)
 
 このWHOの見解は、これまでの「携帯電話に発ガン性はない」と言われていた言説をくつがえす、いわばショッキングなものだったわけですが、このWHOの見解を否定する研究がデンマークの研究者により発表されました。論文は医学誌『British Medical Journal』2011年10月20号(オンライン版)に掲載されています(注)。
 
 この研究はデンマークの約36万人を対象者としています。対象者の条件は1925年以降にデンマークで生まれ、1990年の時点で生存していた30歳以上のデンマーク人です。対象者を1990年から2007年まで追跡調査し、携帯電話の使用と脳腫瘍発症との関連が分析されています。
 
 その結果、脳腫瘍を発症したのは、男性5,111人(携帯電話加入者714人、未加入者4,397人)、女性5,618人(加入者132人、未加入者5,486人)で、統計学的に携帯電話の使用と脳腫瘍の発症に関して関連性は認められなかったそうです。WHOの発表で最も問題視されていた神経膠腫という脳腫瘍という腫瘍については特に綿密に調べられていますが、やはり関連性はなかったそうです。
 
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 WHOが「発ガン性があるかもしれない」という発表をおこなった研究の対象者は約13,000人で、今回のデンマークの研究の対象者は約36万人ですから、数字だけを比較すれば、たしかにデンマークの研究の方が高い信憑性を有しているように思われます。
 
 しかし、この結果をもって「発ガン性なし」としてしまっていいのでしょうか。このデンマークの研究結果を踏まえたWHOの見解を聞きたいところです。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「Use of mobile phones and risk of brain tumours: update of Danish
cohort study」で、下記のURLで全文を読むことができます。
 
http://www.bmj.com/content/343/bmj.d6387.full?sid=37885ddb-a456-4c41-8407-82446d092ca6

参考:医療ニュース
2011年6月3日 「WHOが携帯電話の危険性を公表」
2010年7月12日 「寝る前の携帯電話はNG」
2010年5月31日 「携帯電話で発ガン性は一応認められず・・・」
2010年1月23日 「携帯電話がアルツハイマーを予防?」

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