医療ニュース
7/3 長時間1回と短時間3回、有効なウォーキングはどちら?
減量のために歩きましょう、血糖値を下げるために歩きましょう、毎日何度もこのようなセリフを我々医療者は口にしているのですが、ここでしばしば問題になるのが、長時間しっかり歩くのがいいのか、短時間でも繰り返し歩くのがいいのか、ということです。
以前は、少なくとも減量するには長時間歩かなければならない、と言われていたのですが、最近は短時間の繰り返しでもOKとする考えもでてきています。大規模な調査でこの点を検証した研究というのはあまりないと思うのですが、血糖値改善に関する研究結果が発表されましたので紹介したいと思います(注1)。
この研究の対象者は、ワシントンD.C.在住の60歳以上の男女で、空腹時血糖値が105~125mg/dLと、軽度の糖尿病もしくは糖尿病予備軍に該当する合計10人です。この10人に、毎日同じ時間に食事をとってもらい、トレッドミルを使って下記の3つのパターンでウォーキングをおこなってもらっています。食事は8時、12時、6時の3回で、いずれも食事時間は30分間とされています。
①毎食後15分間のウォーキング(食後30分後に開始)
②午前中の45分間のウォーキング(10時45分に開始)
③夕方の45分間のウォーキング(16時30分に開始)
血糖値改善の評価をするために、まず24時間の平均血糖値が調べられています。上記①②③について、血糖値が有意に改善したのが、①と②で、③では運動していない日と比べて血糖値低下が認められなかったようです。
昼食後および夕食後3時間の平均血糖値も検証されています。昼食後3時間では、①②③のすべてのパターンで有意な血糖改善効果は認められていませんが、夕食後3時間では、①でのみ有意な血糖改善効果が確認されたようです。
この結果を受けて、研究者は、毎食後短時間のウォーキングが血糖値改善に有効である、と結論づけています。
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研究の対象者はわずか10人ですが、この手の研究をおこなうのは大変ですから、貴重な研究報告だと思います。
特に、どうせ時間が取れないからムリ、運動は苦手だからムリ、膝が痛いから長時間歩けない、などと言っている人には朗報でしょう。この研究によれば、毎食後15分ですから、食後の気分転換にちょっとした散歩にでかけるだけで血糖値改善が期待できるというわけです。
長時間のウォーキングやさらにハードな運動も可能であれば日常生活に取り入れるべきと考えている人も多いと思いますが、日々の短時間の運動が有効であることを認識するのも重要なことです。つまり、ハードな運動をたまにしているから健康と考えるのは短絡的であり、この研究結果が示しているように、日々のちょっとした運動こそが血糖値のコントロールに有効であり、おそらく体重や中性脂肪など他の健康リスクについても同じことがいえるのではないかと思います。
ただし、この研究の対象者は、60歳以上の軽度の糖尿病もしくは予備軍で、ターゲットを血糖値改善に置いています。例えば、若い人で血糖値改善というよりも減量を考えているという人は、日々のちょっとした運動に加えてもう少しハードなものを取り入れる方がいいかもしれません。
参考:医療ニュース
2010年11月4日「週に10km程度の歩行が認知障害を予防」
注1:この論文は医学誌『Diabetes Care』2013年6月13日号(オンライン版)に掲載されています。タイトルは、「Three 15-min Bouts of Moderate Postmeal Walking Significantly Improves 24-h Glycemic Control in Older People at Risk for Impaired Glucose Tolerance」で、下記のURLで概要を読むことができます。
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