医療ニュース
2012年3月13日(火) ビタミンE過剰摂取で骨粗しょう症に
ビタミンEの取りすぎで骨粗しょう症に・・・。
サプリメント愛好家にはショッキングなこの研究は日本人によるものです。慶応大学の竹田秀(Shu Takeda)氏らの論文が医学誌『Nature Medicine』2012年3月4日号(オンライン版)に掲載され話題を呼んでいます(注1)。
この研究の概略を紹介すると、ラットに通常のビタミンE摂取量の5倍にあたる量を8週間与えたところ、破骨細胞という骨を壊す働きのある細胞が活性化し、骨を壊す働きが4割強まったそうです。正常のラットと比較すると骨量が減少して骨粗しょう症になっていたとのことです。
研究者によると、今回のラットの実験に用いたビタミンEの量は、ヒトに換算すると1,000mgに相当するそうです。
*************
骨のイメージからは、皮膚や筋肉のように細胞分裂をしているというのは想像しにくいですが、実際には、骨をつくる「骨芽細胞」という細胞が次から次へ新しい骨をつくり、骨を壊す「破骨細胞」という細胞がせっせと骨を壊していって、全体としてバランスがとれています。骨芽細胞が骨をつくるのをサボっても、破骨細胞ががんばりすぎても、結果として骨がもろくなり骨粗しょう症が起こります。今回の研究では、ビタミンEを摂りすぎることで破骨細胞が働きすぎて、結果として骨粗しょう症がおこってしまうというものです。
しかし、ビタミンE1,000mgというのはそれほど過剰とは思えない量です。厚生労働省が定めるビタミンEの摂取上限は、年代・性別で異なりますが、最大は30~49歳の男性で1日当たり900ミリグラムとされています(注2)。これから考えると1,000mgというのは、通常の食事からでも摂れる程度のものであり、少しのサプリメントで簡単に超えてしまう可能性があります。
ビタミンEは90年代の頃は「若返りサプリメント」として脚光をあびていましたが、最近では発ガンリスクも指摘されていますし(下記医療ニュース参照)、以前は心臓疾患を予防すると言われていましたが、実際には予防どころかビタミンEのサプリメントが逆にリスクになるとの研究もあります。さらに骨粗しょう症のリスクがあるとなれば、ビタミンEを食事からしっかり摂るべきことには変わりありませんが、サプリメントを飲む意味はもはやないのではないでしょうか。
(谷口恭)
注1:この論文のタイトルは、「Vitamin E decreases bone mass by stimulating osteoclast fusion」で、下記のURLで概要を読むことができます。
http://www.nature.com/nm/journal/vaop/ncurrent/full/nm.2659.html
注2:独立行政法人国立健康・栄養研究所が運営している「「健康食品」の安全性・有効性情報」というサイトに、1日あたりの摂取量などを含むビタミンEに関する詳しいことが書かれています。下記URLを参照ください。
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail176.html
参考:医療ニュース
2011年11月14日 「ビタミンEの発ガンリスク」
2011年8月26日 「ビタミン剤で発ガンのリスク上昇」
最近のブログ記事
- 2024年11月17日 「座りっぱなし」をやめて立ってもメリットはわずか
- 2024年10月24日 ピロリ菌は酒さだけでなくざ瘡(ニキビ)の原因かも
- 2024年10月11日 幼少期に「貧しい地域に住む」か「引っ越し」がうつ病のリスク
- 2024年9月19日 忍耐力が強い人は長生きする
- 2024年9月8日 糖質摂取で認知症のリスクが増加
- 2024年8月29日 エムポックスよりも東部ウマ脳炎に警戒を
- 2024年8月4日 いびきをかけば認知症のリスクが低下?
- 2024年7月15日 感謝の気持ちで死亡リスク低下
- 2024年6月30日 マルチビタミンで死亡率上昇?
- 2024年6月5日 15歳老けてみえる人は大腸がんかも
月別アーカイブ
- 2024年11月 (1)
- 2024年10月 (2)
- 2024年9月 (4)
- 2024年8月 (1)
- 2024年6月 (2)
- 2024年5月 (2)
- 2024年4月 (2)
- 2024年3月 (2)
- 2024年2月 (3)
- 2024年1月 (1)
- 2023年12月 (2)
- 2023年11月 (2)
- 2023年10月 (2)
- 2023年9月 (2)
- 2023年8月 (1)
- 2023年7月 (3)
- 2023年6月 (2)
- 2023年5月 (2)
- 2023年4月 (2)
- 2023年3月 (2)
- 2023年2月 (2)
- 2023年1月 (2)
- 2022年12月 (2)
- 2022年11月 (2)
- 2022年10月 (2)
- 2022年9月 (2)
- 2022年8月 (2)
- 2022年7月 (2)
- 2022年6月 (2)
- 2022年5月 (2)
- 2022年4月 (2)
- 2022年3月 (2)
- 2022年2月 (2)
- 2022年1月 (2)
- 2021年12月 (2)
- 2021年11月 (2)
- 2021年10月 (2)
- 2021年9月 (2)
- 2021年8月 (2)
- 2021年7月 (2)
- 2021年6月 (2)
- 2021年5月 (2)
- 2021年4月 (4)
- 2021年3月 (2)
- 2021年1月 (2)
- 2020年12月 (3)
- 2020年11月 (3)
- 2020年9月 (2)
- 2020年8月 (2)
- 2020年7月 (1)
- 2020年1月 (2)
- 2019年12月 (2)
- 2019年11月 (2)
- 2019年10月 (2)
- 2019年9月 (2)
- 2019年8月 (2)
- 2019年7月 (2)
- 2019年6月 (2)
- 2019年5月 (2)
- 2019年4月 (2)
- 2019年3月 (2)
- 2019年2月 (2)
- 2019年1月 (2)
- 2018年12月 (2)
- 2018年11月 (2)
- 2018年10月 (1)
- 2018年9月 (2)
- 2018年8月 (1)
- 2018年7月 (2)
- 2018年6月 (2)
- 2018年5月 (4)
- 2018年4月 (3)
- 2018年3月 (4)
- 2018年2月 (5)
- 2018年1月 (3)
- 2017年12月 (2)
- 2017年11月 (2)
- 2017年10月 (4)
- 2017年9月 (4)
- 2017年8月 (4)
- 2017年7月 (4)
- 2017年6月 (4)
- 2017年5月 (4)
- 2017年4月 (4)
- 2017年3月 (4)
- 2017年2月 (1)
- 2017年1月 (4)
- 2016年12月 (4)
- 2016年11月 (5)
- 2016年10月 (3)
- 2016年9月 (5)
- 2016年8月 (3)
- 2016年7月 (4)
- 2016年6月 (4)
- 2016年5月 (4)
- 2016年4月 (4)
- 2016年3月 (5)
- 2016年2月 (3)
- 2016年1月 (4)
- 2015年12月 (4)
- 2015年11月 (4)
- 2015年10月 (4)
- 2015年9月 (4)
- 2015年8月 (4)
- 2015年7月 (4)
- 2015年6月 (4)
- 2015年5月 (4)
- 2015年4月 (4)
- 2015年3月 (4)
- 2015年2月 (4)
- 2015年1月 (4)
- 2014年12月 (4)
- 2014年11月 (4)
- 2014年10月 (4)
- 2014年9月 (4)
- 2014年8月 (4)
- 2014年7月 (4)
- 2014年6月 (4)
- 2014年5月 (4)
- 2014年4月 (4)
- 2014年3月 (4)
- 2014年2月 (4)
- 2014年1月 (4)
- 2013年12月 (3)
- 2013年11月 (4)
- 2013年10月 (4)
- 2013年9月 (4)
- 2013年8月 (172)
- 2013年7月 (408)
- 2013年6月 (84)