医療ニュース

2026年3月8日 数週間の脳トレーニングで認知症発症リスクが25%減少!?

 2月15日の医療ニュース「レッドライトセラピーで慢性外傷性脳症が防げる!?」で、信じられないような慢性外傷性脳症の予防法の話をしました。今回紹介する話も俄かには信じ難い報告です。なんと、わずか数週間の簡単な脳トレーニングで認知症発症リスクが25%も減少するというのです。

 この報告は医学誌「Alzheimer’s Association」2026年2月9日号に掲載された論文「20年間にわたる認知トレーニングが認知症に及ぼす影響:ACTIVE研究からのエビデンス(Impact of cognitive training on claims-based diagnosed dementia over 20 years: evidence from the ACTIVE study)」にまとめられています。

 研究の対象者は米国の65歳以上の2,802人です。対象者はACTIVE研究と命名された認知トレーニングを受けた人(対照含む)です。対象者は次の4つのグループに分けられました。

#1 視覚による情報を処理する能力に焦点を当てた処理のスピードトレーニング
#2 言語エピソード記憶の向上に重点を置く記憶訓練
#3 推論する能力の訓練
#4 対照群(何もしないグループ)

 #1~#3のグループは、5~6週間にわたり、小グループで60~75分のトレーニングを最大10回受けました。その後、8回以上トレーニングを受けた被験者の一部のグループは、11ヶ月後と35ヶ月後に、追加トレーニング(各セッションは最大4回の75分間)を受けました。この研究が開始されたのは1998年で、その後20年間追跡調査がおこなわれました。

 結果は驚くべきものとなりました。#1のなかで追加トレーニングを1回以上受けたグループはアルツハイマー病を発症するリスクが25%減少していたことが分かったのです。興味深いことに、#1のなかで追加トレーニングを受けなかったグループでは認知症リスクの低下は認められませんでした。

 #2、#3のグループもリスクの低下は認められませんでした。

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 この研究は米国では相当大きなニュースとして捉えられているようで、NIH(米国国立衛生研究所)は「数週間にわたる認知スピードトレーニングは、認知症の診断を数十年遅らせる可能性がある(Cognitive speed training over weeks may delay the diagnosis of dementia over decades )」というタイトルで、論文が公表された翌日の2月10日、ニュースリリースを発表しました。

 認知症の予防に役立ちそうなトレーニングがあるとすれば、なんとなくスピードトレーニングよりも#2や#3のじっくりと頭を使うトレーニングの方が有効なイメージがないでしょうか。それが、#2や#3では認知症のリスク低下につながらず、スピードトレーニングのみが有効というのです。

 ここまでくると、#1の「視覚処理のスピードトレーニング」とはどのようなものかが気になります。調べてみると米国メディアNMR(National Public Radio)に興味深い解説記事がありました。

 この研究で実施されたスピードトレーニングでは、ユーザーはコンピューター画面を見つめます。ある時点で、画面中央で車かトラックが点滅し、周辺に道路標識が表示されます。正しい車両を識別し、道路標識がどこに表示されたかを覚えておくことが課題となります。ゲームが進むにつれて、車両は見分けにくくなり、周辺にも注意をそらすものが現れ始めます。

 このトレーニングなら、例えば学校で習うような基礎知識や文章作成能力や高度な数学の能力などはまったく不要です。求められるのはゲームセンターでよくあるようなゲームで高得点を獲るような能力であり、このような能力であればたいてい繰り返し実践すれば上達します。

 ということは、近いうちに「認知症予防ゲーム」が市場に登場するに違いありません。それにしてもわずか数週間のトレーニング(+追加トレーニング)でアルツハイマー病のリスクが25%も低下するとは驚きです。近いうちに、「65歳になれば国民全員がこのゲームに参加することが義務付けられる」といった社会になるかもしれません。

 

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