医療ニュース
2018年5月14日 PPI使用で脳梗塞のリスク認められず
これまで安全で有効と考えられていた胃薬PPI(プロトンポンプインヒビター)が最近になり副作用の報告が相次いでいるということをこれまで何度かお伝えしてきました(下記「医療ニュース」参照)。
今回お伝えしたい研究はその”逆”で、「PPIは脳梗塞のリスクにならない」とするものです。
医学誌『Gastroenterology』2018年4月号(オンライン版)に論文(注1)が掲載されています。研究の対象は、「Nurses’ Health Study」と呼ばれるデータベースに登録された女性68,514人(平均年齢65歳)と「Health Professionals Follow-up Study」というデータベースに登録された男性28,989例(平均年齢69歳)です。
調査期間の12年間で合計2,599例(女性2,037例、男性562例)が脳卒中を発症(初発)しています。脳卒中の危険因子を考慮して、PPIと脳梗塞との関係を調べるとリスクが18%上昇していることが判りました。
しかし、PPI使用の「適応」、具体的には、消化性潰瘍、胃食道逆流症、消化管出血の既往歴、H2ブロッカーの使用歴などを考慮して再度、関係を算出するとリスクは8%の上昇のみで、これは統計学的に有意にはならなかったということです。
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この結果は少しわかりにくいです。PPIの「適応」(原文は「potential indications for PPI use」)を考慮した結果(原文は「after accounting for indications」)、リスク増加に有意差はなかった、ということです。
ということは、「適応」(そもそもこれがこの論文では分かりにくい)を考慮しなければ、脳卒中の危険因子だけを考えて比較すると、有意差をもってPPIは脳梗塞のリスクになるということですから、やはりPPIは可能な限り避けるべき、ということになります。
現在PPIは世界中で物議を醸しています。太融寺町谷口医院でも処方していますが、症状が改善すればH2ブロッカーなど他の薬剤に積極的に変更するようにしています。ですが、どうしてもPPIが必要という人もいます。PPIは、脳梗塞だけでなく認知症や骨粗しょう症のリスクも指摘されているわけですから、今後のさらなる研究結果を待ちたいと思います。
注1:この論文のタイトルは「No Significant Association Between Proton Pump Inhibitor Use and Risk of Stroke After Adjustment for Lifestyle Factors and Indication」で、下記URLで概要を読むことができます。
https://www.gastrojournal.org/article/S0016-5085(17)36710-0/fulltext
参考:医療ニュース
2017年4月28日 胃薬PPIは認知症患者の肺炎のリスク
2017年11月15日 ピロリ菌除菌後の胃薬PPI使用で胃がんリスク上昇
2018年4月6日 胃薬PPIは短期使用でも骨粗しょう症のリスクに
2017年1月25日 胃薬PPIは細菌性腸炎のリスクも上げる
2016年8月29日 胃薬PPIが血管の老化を早める可能性
2017年1月23日 胃薬PPIは精子の数を減らす
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