医療ニュース

2015年2月2日 寝る前のスマホやタブレットはNG

 ここ数年、産業医学関連のトピックスで最も大きなもののひとつが「ブルーライトによる睡眠障害」です。具体的に言えば、スマートフォン(以下「スマホ」)やiPADなどのタブレットが放つブルーライトが目を疲労させ睡眠を妨げているという問題です。それを証明するような研究も出てきており、今回はそれを紹介したいのですが、まずは「ブルーライト」のおさらいからしておきましょう。

 ブルーライトの定義は「波長が380~495nm(ナノメートル)の青色光」となります。そう言われても、物理が苦手な人などはピンとこないかもしれません。ここでは、すべての光線には「波長」というものがあること、光線は「紫外線」「可視光線」「赤外線」の3つに分類できること、「紫外線」はその波長が最も短いものということの3つを押さえておきましょう。そして、紫外線が身体に有害であるということは聞いたことがあると思います。

 ブルーライトは可視光線のなかで最も波長が短い、つまり紫外線に最も近いという特徴があります。紫外線に最も近いわけですから可視光線のなかでは最も人体に悪影響を与えることになるのです。

 最近は「ブルーライト」という単語を一般のマスコミなどでも聞く機会が増えてきています。これはLEDの普及によるところが多く、スマホやタブレットに使用されることにより、至近距離でブルーライトに暴露されることが増えているからです。

 スマホやタブレットなどの電子書籍で読書をすると紙の書籍に比べ睡眠や生活リズムに悪影響を与える・・・

 これは医学誌『Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)』2015年1月27日号(オンライン版)(注1)に掲載された研究結果です。

 米国ボストンのBrigham and Women’s Hospitalの研究者の研究で、研究の対象者は男女各6人の成人12人(平均年齢24.92歳)です。彼(女)らに就寝前に紙の書籍または電子書籍を読んでもらい、睡眠や生活リズムにどの程度の違いが生じるかを分析しています。

 その結果、電子書籍を読むと、紙の書籍に比べて、入眠までの時間が延長し、熟眠が妨げられ、また起床時にすっきり目覚められなくなるという結果が出たようです。

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 この研究は対象者が少ないですから、これだけでブルーライトの危険性を論じることはできないかもしれませんが、電子書籍を寝る前に読むと、紙の本と比べると眠りにつきにくい、という経験をされた人も少なくないのではないでしょうか。

 最近は企業などでパソコンやiPADのブルーライト対策を実施することが推奨されています。スマホやタブレットは自宅で(プライベートで)用いるでしょうから、各自が対策を立てるべきです。幸いなことに(少々値段は高いですが)ブルーライトカットのフィルムが販売されていますから使用を検討してもいいでしょう。

 ちなみにiPAD用のブルーライトカットのフィルムは私自身も使用しています。フィルムを貼ると全体の色が少し黄色っぽくなりますが文字を読むのに不都合はありません。ただ、私自身は寝る前に本を読むと、それがiPADであっても紙の書籍であっても以前からすぐに睡魔に襲われていましたから、差は感じられませんが・・・。

(谷口恭)

注1:この論文のタイトルは「Evening use of light-emitting eReaders negatively affects sleep, circadian timing, and next-morning alertness」で、下記URLで全文(PDF)を読むことができます。
http://www.pnas.org/content/112/4/1232.full.pdf+html?sid=907ea559-844f-4e03-ad99-1eca5924c568

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