医療ニュース
2014年10月17日 AB型は認知症のリスクが上昇
すでに一般の雑誌などでも取り上げられているようですが、血液型がAB型の人は認知症のリスクが上昇する、という研究が話題になっています。医学誌『Neurology』2014年9月30日号(オンライン版)にこの論文(注1)が掲載されています。
研究では、45歳以上のアメリカ人の被験者約3万人を対象として記憶力・思考力の検査を実施し、3.4年後に再検査を行っています。被験者のうち、認知機能障害(cognitive impairment)があると診断された495人と、スコアが正常であった587人の対照者を比較し、血液型の違いが調べられています。
その結果、血液型がAB型の人は、思考能力の低下が起きる比率がO型の人よりも82%高かったそうです。AB型は米国人口の約4%を占めるそうです。(ちなみに、米国は相対的にAB型の人が少なく、日本では全人口の10%がAB型と言われています)
この研究で研究者らは、第Ⅷ因子にも注目しています。第Ⅷ因子というのは血液凝固に関連する物質で、これが遺伝的に体内でつくられないのが血友病です。血友病の人は無治療でいるとが出血が止まらなくなりますから、定期的に注射で第Ⅷ因子を補わなければなりません。
AB型→第Ⅷ因子高値→血液凝固が亢進→認知機能障害、と研究者らは考えたようですが、結果としてはAB型と第Ⅷ因子高値の相関はそれほど高くなく、AB型で第Ⅷ因子高値による認知機能障害が起こったと推測されるのは18%のみだったようです。
*************
AB型の人はこのような報告を聞くといい気持ちがしないでしょうが、今回の研究だけでAB型は認知症の絶対的なリスクとまで言い切れません。(この研究に影響を受けて、AB型の子どもを避けるためにA型とB型のカップルが出産を諦める、などというのはあまりにも馬鹿げています)
この研究で認知機能障害がみられた被験者は、喫煙率が高く、高血圧・糖尿病・心疾患・高コレステロール血症などを有する比率も高かったようです。
今のところ、認知症を確実に予防できる方法というものは確立されていませんが、基本的な生活習慣病の予防をしていくのが最も現実的な対処法と考えるべきでしょう。尚、私は生活習慣病を防ぐための「10個の習慣」を推薦しています。興味のある方は下記コラムを参照ください。
(谷口恭)
参照:メディカルエッセイ第129回(2013年10月)「危険な「座りっぱなし」」
注1:この論文のタイトルは「ABO blood type, factor VIII, and incident cognitive impairment in the REGARDS cohort」で、下記URLで概要を読むことができます。
http://www.neurology.org/content/83/14/1271.abstract?sid=008bc994-e140-4fe4-896d-b51a15892c57
最近のブログ記事
- 2024年11月22日 アメリカンフットボール経験者の3分の1以上がCTEを自覚、そして自殺
- 2024年11月17日 「座りっぱなし」をやめて立ってもメリットはわずか
- 2024年10月24日 ピロリ菌は酒さだけでなくざ瘡(ニキビ)の原因かも
- 2024年10月11日 幼少期に「貧しい地域に住む」か「引っ越し」がうつ病のリスク
- 2024年9月19日 忍耐力が強い人は長生きする
- 2024年9月8日 糖質摂取で認知症のリスクが増加
- 2024年8月29日 エムポックスよりも東部ウマ脳炎に警戒を
- 2024年8月4日 いびきをかけば認知症のリスクが低下?
- 2024年7月15日 感謝の気持ちで死亡リスク低下
- 2024年6月30日 マルチビタミンで死亡率上昇?
月別アーカイブ
- 2024年11月 (2)
- 2024年10月 (2)
- 2024年9月 (4)
- 2024年8月 (1)
- 2024年6月 (2)
- 2024年5月 (2)
- 2024年4月 (2)
- 2024年3月 (2)
- 2024年2月 (3)
- 2024年1月 (1)
- 2023年12月 (2)
- 2023年11月 (2)
- 2023年10月 (2)
- 2023年9月 (2)
- 2023年8月 (1)
- 2023年7月 (3)
- 2023年6月 (2)
- 2023年5月 (2)
- 2023年4月 (2)
- 2023年3月 (2)
- 2023年2月 (2)
- 2023年1月 (2)
- 2022年12月 (2)
- 2022年11月 (2)
- 2022年10月 (2)
- 2022年9月 (2)
- 2022年8月 (2)
- 2022年7月 (2)
- 2022年6月 (2)
- 2022年5月 (2)
- 2022年4月 (2)
- 2022年3月 (2)
- 2022年2月 (2)
- 2022年1月 (2)
- 2021年12月 (2)
- 2021年11月 (2)
- 2021年10月 (2)
- 2021年9月 (2)
- 2021年8月 (2)
- 2021年7月 (2)
- 2021年6月 (2)
- 2021年5月 (2)
- 2021年4月 (4)
- 2021年3月 (2)
- 2021年1月 (2)
- 2020年12月 (3)
- 2020年11月 (3)
- 2020年9月 (2)
- 2020年8月 (2)
- 2020年7月 (1)
- 2020年1月 (2)
- 2019年12月 (2)
- 2019年11月 (2)
- 2019年10月 (2)
- 2019年9月 (2)
- 2019年8月 (2)
- 2019年7月 (2)
- 2019年6月 (2)
- 2019年5月 (2)
- 2019年4月 (2)
- 2019年3月 (2)
- 2019年2月 (2)
- 2019年1月 (2)
- 2018年12月 (2)
- 2018年11月 (2)
- 2018年10月 (1)
- 2018年9月 (2)
- 2018年8月 (1)
- 2018年7月 (2)
- 2018年6月 (2)
- 2018年5月 (4)
- 2018年4月 (3)
- 2018年3月 (4)
- 2018年2月 (5)
- 2018年1月 (3)
- 2017年12月 (2)
- 2017年11月 (2)
- 2017年10月 (4)
- 2017年9月 (4)
- 2017年8月 (4)
- 2017年7月 (4)
- 2017年6月 (4)
- 2017年5月 (4)
- 2017年4月 (4)
- 2017年3月 (4)
- 2017年2月 (1)
- 2017年1月 (4)
- 2016年12月 (4)
- 2016年11月 (5)
- 2016年10月 (3)
- 2016年9月 (5)
- 2016年8月 (3)
- 2016年7月 (4)
- 2016年6月 (4)
- 2016年5月 (4)
- 2016年4月 (4)
- 2016年3月 (5)
- 2016年2月 (3)
- 2016年1月 (4)
- 2015年12月 (4)
- 2015年11月 (4)
- 2015年10月 (4)
- 2015年9月 (4)
- 2015年8月 (4)
- 2015年7月 (4)
- 2015年6月 (4)
- 2015年5月 (4)
- 2015年4月 (4)
- 2015年3月 (4)
- 2015年2月 (4)
- 2015年1月 (4)
- 2014年12月 (4)
- 2014年11月 (4)
- 2014年10月 (4)
- 2014年9月 (4)
- 2014年8月 (4)
- 2014年7月 (4)
- 2014年6月 (4)
- 2014年5月 (4)
- 2014年4月 (4)
- 2014年3月 (4)
- 2014年2月 (4)
- 2014年1月 (4)
- 2013年12月 (3)
- 2013年11月 (4)
- 2013年10月 (4)
- 2013年9月 (4)
- 2013年8月 (172)
- 2013年7月 (408)
- 2013年6月 (84)