医療ニュース

2009年1月15日(木) ガン患者は「死後の世界」を信じない?!

 ガン患者はガンでない人に比べて、死後の世界や生まれ変わりなどを信じない傾向にある・・・

 これは、東京大学が2008年におこなった大規模調査の結果です。(報道は1月14日の毎日新聞)

 調査は、ガン患者の死生観を知るために東京大学の研究チームが、2008年1月から1年間かけて実施しています。東大病院放射線科に受診したことのある患者310人と、同病院の医師109人、看護師366人、さらに無作為抽出した一般の東京都民353人の合計1,138人が調査に協力しています。ガン患者は、75%が治療済みで、治療中の人は20%でした。

 「死後の世界がある」と考える人の割合は、ガンでない人が34.6%なのに対して、ガン患者は27.9%、「生まれ変わりがある」と考える人は、ガンでない人29.6%に対して、ガン患者20.9%で、いずれもガン患者が低い傾向にあります。

 一方で、「生きる目的や使命感を持つ」割合は患者の方がガンでない人より高く、「自分の死をよく考える」という人も患者に多いという特徴があるようです。

 この調査ではもうひとつ、興味深い結果がでています。

 「望ましい死」に関して、ガン患者の多くが健康な時と同様の生活を理想とし、「(死ぬまで)身の回りのことが自分でできる」(93%)、「意識がはっきりしている」(98%)などを望んでいます。一方、医療関係者はこれらについての期待がそれぞれ30~40ポイント低い結果となっています。「最期まで病気とたたかうこと」を望む患者は8割に達していますが、医師は2割にとどまっています。

 研究班は、「ガン患者は死と正面から向き合っているようだ。望ましい死に対する認識の差は、医師らが終末期の現実や治療の限界を知っているのに対し、患者は死の経験がないため生じるのだろう。生きている時間を大切に過ごしたいという患者の思いに応える医療が必要だ」とコメントしています。

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 終末期の希望について、ガンの患者さんと医療従事者で大きな差異があるのは、おそらく多くの医療従事者が、「あのガン末期の痛みと戦ってもそれほど長く生きられないのなら、少々意識がぼーっとしても痛みを取り除く治療をしてほしい」と思うからでしょう。

 この研究で私が気になったのは、ガンになったから死を現実のものととらえ死後の世界や生まれ変わりを信じなくなるのか、もともと死後の世界や生まれ変わりを信じない人がガンになりやすいのか、ということです。

(谷口恭)

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