医療ニュース

2013年7月27日 土曜日

2008年12月1日(月) 老舗の入浴剤「ムトーハップ」が製造中止に

 今年の4月頃から硫化水素を発生させた自殺が急激に増えており、これを受けて老舗の入浴剤「ムトーハップ」が10月末で製造中止となりました。

 実際に硫化水素を発生させるには、ムトーハップの他にも別の薬液が必要ですが、こちらについては現在ごく簡単に入手できる状態が続いており製造中止になるとの発表はありません。

 硫化水素による自殺が相次いだことで、日本チェーンドラッグストア協会は5月、加盟店にムトーハップの販売自粛を要請しました。同協会は7月末にこの自粛を解除しましたが、敬遠される傾向は変わらず、売り上げは通常の4割以下にまで落ち込んでいたそうです。

 問題はムトーハップを製造していた武藤鉦(むとうしょう)製薬が工場閉鎖に追い込まれるということです。別の事業をおこない、なんとか倒産は避けるようにつとめるそうですが、同社にとってムトーハップが唯一の商品でしたから従業員の一部が解雇され収入源のほとんどが断たれることになるようです。

 約80年の歴史を誇る看板商品が汚された悔しさと苦境から、同社の武藤社長は「この思いをどこにぶつけたらいいのか」と話しているそうです。

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 ムトーハップは、疥癬(かいせん)というダニの病気の治療に使うこともできるため、疥癬にかかった(あるいは疑いのある)患者さんに対して、私は医師としてこれまで推薦してきました。

 医師の立場からしても大変有用な入浴剤で、私自身が疥癬(疑いも含めて)の患者さんと接したときには、ムトーハップを入れた風呂に入るようにしています。また、別に疥癬の疑いがなかったとしても、ムトーハップは大変気持ちのいい入浴剤でついつい長湯をしてしまう程リラックスさせてくれます。(あとの風呂掃除に時間がかかるのがちょっと面倒くさいですが・・・)

 武藤鉦製薬の従業員の方はさぞかし悔しい思いをされているだろうと察します。「医療機関での処方限定」というかたちにして、従来どおり疥癬の患者さんに利用してもらえるようにはならないものなのでしょうか。

(谷口恭)

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2013年7月27日 土曜日

2008年12月15日(月) 女性の喫煙は14.5年も短命に

 先月(11月)は米国では肺がんの月だそうです。米国産婦人科学会(ACOG)が、これを機会に女性は喫煙をやめるように呼びかけました。(報道は11月27日のHealth Day News)

 同学会のSharon Phelan博士は「女性が喫煙によって受ける障害は広範にわたり、生涯観察される。喫煙は有害な習慣であり、体内のほぼすべての臓器に悪影響を及ぼす」と述べているそうです。米国では女性の喫煙は寿命を14.5年も短縮させると言われていますが、18歳以上の米国人女性の5人に1人は喫煙者です。

 女性の喫煙は、肺癌の他、乳癌、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、食道癌、膵癌、腎癌、膀胱癌、子宮体癌、子宮頸癌などのリスクを上昇させると言われています。

 また、心筋梗塞など心疾患の発症率は2倍、肺気腫など慢性閉塞性肺疾患の死亡率は10倍にもなると言われています。さらに、気管支炎、骨粗鬆症、関節リウマチ、白内障、閉経後の骨密度低下、股関節骨折、早期閉経、歯周病、歯の喪失、皮膚の早期老化などとも原因があることがわかっています。

 若い女性の場合、妊娠への影響も見逃せません。未熟児や低体重児となることもありますし、肺機能不良や気管支炎、喘息をもった新生児が生まれるリスクも高まります。避妊薬(ピル)を服用している女性では、血栓症(血が固まりやすくなる病気)のリスクもあります。

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 私自身も元喫煙者なので、タバコを吸いたくなる女性の気持ちも分かるのですが、それでもこれだけの病気のリスクがあることを考えると「やっぱりタバコはやめましょう」と言いたくなります。

 実際、ピルを服用していてタバコを吸っている女性の血液検査をすると、血が固まりやすくなっている状態になっていることがときどきあります。(当院では喫煙者にピルを処方する場合、半年から1年に一度くらいの割合で血液検査をしています)

 今は、保険を使って禁煙に取り組むこともできますし、やめたい女性(もちろん男性も)がいれば応援させていただきます!

(谷口恭)

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2013年7月27日 土曜日

2008年12月15日(月) WHOの予測、ガンが世界の死亡原因第1位

 日本の死亡原因トップ5をご存知でしょうか。正解は、ガン、心疾患、脳血管障害、肺炎、不慮の事故です。

 では世界ではどうでしょう。現在は、1位が心疾患、2位がガン、以後、脳血管障害、肺炎、周産期の事故、エイズ、結核、交通事故、マラリア、と続きます。

 ところが、12月9日、WHO(世界保健機構)は、現在途上国の間でがん患者が急増していることを指摘し、世界の死亡原因の第1位が2010年までに心疾患からガンにとってかわるとの予測を発表しました。

 WHOによりますと、世界のガン患者数は2008年中に1,200万人、ガンによる死者は700万人に達する見通しで、今後も年間1%の割合で増加が見込まれます。途上国を中心に喫煙習慣が拡大していることが主要因で、特に世界の喫煙人口の40%を占める中国とインドでは大幅な増加が見込まれるようです。

 さらにWHOは、2030年には、年間の新規ガン患者は2,700万人、ガンによる死者は1,700万人に達し、患者数と死者数の両方とも現在の倍以上になると予想しています。
 
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 これらをまとめると、喫煙人口の多数を占めるインドと中国でタバコが原因のガンが急増し、その結果世界全体でみたときの死亡者数はガンがトップになる、ということになります。

 ということは、中国とインドで禁煙対策を徹底すれば、ガン罹患者が大幅に減少する可能性があるということになります。

 世界の死因2位の心疾患、3位の脳血管障害も喫煙が原因になっていることが多いですから、いかにタバコが人類の寿命を縮めているかということがわかります。

(谷口恭)

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2013年7月27日 土曜日

2008年12月15日(月) やせ薬「ソロスリム」で体調不良

 以前にも、インターネットなどで出回っているやせる健康食品で被害が生じたというニュースをお伝えしたことがありましたが、またもや同様の事故があったようです。

 12月11日の毎日新聞によりますと、滋賀県の50代の女性が「ソロスリム」と呼ばれる健康食品を購入し、服用後動機や発汗などの体調不良を訴えていたことがわかりました。

 国民生活センターが調査したところ、この健康食品からシブトラミンと呼ばれる肥満治療で使われる医薬品が検出されたようです。

 シブトラミンは、海外では肥満治療の目的で医薬品として使われることがありますが日本では承認されていません。血圧上昇や頭痛などの副作用が起こりやすく、米国の死亡例は50例以上になるそうです。

 また、国民生活センターは、中国からの輸入品である「御秀堂第3代養顔痩身カプセル」「唯美OB蛋白痩身素第3代」について調べたところ、やはりシブトラミンが検出されたそうです。

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 「インターネットで売ってるやせ薬を飲むと動機がした」と言って当院を受診する患者さんがときどきいますが、これは大変危険なことです。

 シブトラミンは海外では死亡例もあるようですし、一緒に飲んではいけない薬もたくさんあります(特に抗うつ薬)。

 それに、海外で処方されるのは極めて重度の肥満がある人に限ってです。安易にこういったものに手をだす危険性はいくら強調されてもされすぎることはありません。

(谷口恭)

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2013年7月27日 土曜日

2008年12月28日(日) 日本、糖尿病患者が2千万人以上に

 予備軍も含めると糖尿病の患者が2,210万人に上る・・・

 これは、厚生労働省の「2007年国民健康・栄養調査」で明らかになり同省が12月25日に発表した内容です。(報道は12月26日の共同通信)

 2,210万人というのは、1997年からの10年間で約1.6倍、国民の4.7人に1人が該当することになります。2006年と比べても340万人の大幅増加です。

 この調査は、2007年11月、無作為に抽出した約6000世帯を対象に実施され、回答者のうち、成人男女計約4000人の血液検査結果などを基に推計されています。

 糖尿病の診断指標であるHbA1C(ヘモグロビンA1C)の値(正常値は5.6%未満)が6.1%以上の「糖尿病が強く疑われる人」が約890万人(前年約820万人)、5.6%以上6.1%未満の「糖尿病の可能性を否定できない人」は約1,320万人(同1,050万人)で、合わせて約2,210万人となります。

 年代別の人口に占める割合は70歳以上が37.6%で最も多く、60代35.5%、50代27.3%、40代15.3%、30代6%となっています。

 調査対象者で「強く疑われる」(HbA1C 6.1%以上)との結果が出た人のうち、39.2%が「ほとんど治療を受けたことがない」と回答しています。

 国民の間で生活習慣病の危険が急速に広がっている実態が浮き彫りになったかたちとなり、同省は「食生活の乱れや、運動不足がなかなか改善されていないのが大きな要因」(生活習慣病対策室)としています。

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 太融寺町谷口医院では、30代の糖尿病の人がよく見つかります。たまたまおこなった尿検査が発覚のきっかけになることもありますし、トイレが近い、喉がよく渇く、などの症状から判ることもあります。

 しかしながら、尿糖が見つかったり、喉が渇くなどの症状がでたりしている状態では、糖尿病がかなり進んでいることが多く、できればもっと早い段階で血糖値が上昇していることを知りたいものです。

 気になる人は早めに検査を受けるべきでしょう。

(谷口恭)

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2013年7月27日 土曜日

2008年12月28日(日) 5人に1人が睡眠薬やアルコールを

 成人のほぼ5人に1人が眠るために薬や酒を使うことがある・・・

 これは、厚生労働省が12月25日に発表した「2007年国民健康・栄養調査」から明らかになったことです。(報道は12月26日の共同通信) この調査は2007年11月に全国から無作為に抽出された約6千世帯が対象となっています。

 「眠るために睡眠薬などの薬や酒を使うことがあるかどうか」という質問に対し、「ある」と答えた男性が22.2%、女性が17.4%で、2003年の調査に比べると、男性が2.3ポイント、女性が1.7ポイント上昇しています。これは、厚労省が策定した国民的な健康づくりの計画「健康日本21」で設定した目標「13%以下」を大幅に上回っていることになります。

 年代別では、男性が50代、女性が20~30代を除いて全世代で増加しています。男女とも70歳以上が最も割合が高く、40代も高い伸びでした。頻度の内訳では、男性が「常に」10.5%、「しばしば」3.3%、「時々」8.4%。女性が「常に」7.4%、「しばしば」2.4%、「時々」7.5%となっています。

 ストレスについての質問では、男性の57.9%、女性の63.9%が「ある」と答えています。

 厚労省は「ストレスが多いこととの関連が推測され、研究事業に力を入れる」としています。

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 睡眠障害に悩んでいる人が増えている、ということは医療の現場で実感していることですが、50代の男性と、20~30代の女性が減っているというのは意外です。

 太融寺町谷口医院では、このグループの人たちの「眠れない」という訴えをよく聞くのですが・・・

(谷口恭) 

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2013年7月27日 土曜日

2008年12月28日(日) 「医療費が高いから受診を控えた」が4割以上!

 医療費がかさむから受診を控えた経験のある人が4割を超えていることが、全国の2千人を対象に日本経済新聞社が実施した調査であきらかとなりました。(報道は12月28日の日経新聞)

 この調査は、2008年11月、全国の20歳以上の男女各千人を対象とし、1,407人から有効回答を得ています(有効回答率70.4%)。

 医療費の自己負担について「高い」と感じる人は半数を超え、42.5%は「医療費がかさむために医療機関の受診を控えた経験がある」と答えています。2005年の同様の調査では34.2%でしたから、大幅に増加していることになります。

 この調査では、「医療の優先課題」についても質問されています。最多の回答は「医師不足の解消」で71.5%になります。

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 医療現場で働く立場からは、患者さんが最も困っているのは「お金(医療費)」ではなく、「待ち時間」だろうと思っていました。どこの病院・診療所に行っても、長時間待たされるのが日本の医療の常識になってしまっているからです。

 待ち時間だけでなく、医療費が高いと感じている人がこんなにも多いという今回の結果は我々にとって大変ショックなものです。

 もしも医療費の患者負担が増加するようなことがあれば、今後医師不足が解消され、待ち時間が減ったとしても、お金が払えないという理由で受診できない人が続出するのでしょうか・・・

(谷口恭)

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2013年7月26日 金曜日

2009年1月13日(火) イタリアが道化師治療に2億5千万円

 「パッチ・アダムス」という映画をご存知でしょうか。ロビン・ウイリアムズが主演をつとめた1998年の米国の映画です。

 パッチ・アダムスは実在の医師で、またプロの道化師(ピエロ)でもあります。臨床の現場にユーモアを取り入れ、現在も医師として、社会活動家として活躍しています。

 パッチ・アダムスが有名になって以降、病院に道化師が出向いて患者さん(主に子供)を笑わせて病気の回復をはかる治療が次第に普及するようになってきました。臨床道化師はオランダで始まり、欧米各国、そして日本でも一部の病院が取り入れています。

 この度、イタリア政府は国家としてこの治療法の有効性を認め、普及のために200万ユーロ(約2億5千万円)を支出することを決めました。(報道は1月5日の共同通信)

 イタリアでもすでにローマなどの一部の病院で臨床道化師が活躍していますが、イタリア政府は、今後希望する病院に補助金を出すことによって全国的な普及を目指すようです。また、ボランティアが臨床道化師になるためのトレーニング費用も補助するとのことです。

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 病気に対する不安や恐怖を道化師のパフォーマンスで和らげることが期待できる治療といえるでしょう。「パッチ・アダムス」は、私は医学生の頃にみて感銘を受けた記憶があります。

 道化師に限らず、心をリラックスさせる試みはどんどん医療に取り入れるべきだと私は考えています。

(谷口恭)

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2013年7月26日 金曜日

2009年1月13日(火) 教師の「心の病」が過去最多

 2007年度にうつ病などの心の病で休職した公立学校(小中高)の教員は、2006年度より320人増加し、過去最悪の4,995人にのぼることが文部科学省により1月5日に発表されました。(報道は1月7日の読売新聞)

 調査は小中高の教員91万6千人余りを対象におこなわれました。2007年度中に病気で休職したのが、全教員の0.88%に相当する8,069人で、このうち心の病が原因だったのは4,995人で、病気休職者の6割を占めます。心の病の教員は、調査項目に加わった1979年度は664人でしたが、ここ2年間は伸び率が鈍化しているとはいえ、1994年度以降は毎年数百人単位で増加しています。

 こうした傾向について、文科省は、①部活動の指導や報告書の作成に追われて多忙、②教員の立場が昔ほど強くなくなった、③同僚との人間関係の希薄さ、などが原因と分析しています。

 同省によりますと、心の病を訴える教員の割合は一般企業の2.5倍だそうです。

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 参考までに、わいせつ行為や飲酒運転などで懲戒処分となった教員は12,887人ですが、北海道で2007年1月に起きた時限ストによる処分者11,899人が含まれていますので、これを除くと988人と、7年ぶりに1,000人を下回ったことになります。わいせつ行為で懲戒処分などを受けた教員は164人で前年度より26人減っていますが、教え子や卒業生の被害者が45%を占めるそうです。

 心の病とわいせつ行為を同じように考えてはいけませんが、これらの数字をみていると現在の教育の現場が相当疲弊しているように思えます。教育者は心の病に対する知識をある程度持っているでしょうが、その知識がかえって受診を遅くしているのかもしれません。

(谷口恭)

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2013年7月26日 金曜日

2009年1月14日(水) 中国、抗生物質の乱用で毎年8万人が死亡

 中国では薬の副作用で年間約20万人が死亡し、その4割は抗生物質が原因である・・・

 このような発表が中国現地新聞に1月12日におこなわれ話題を呼んでいます。(報道は1月13日の共同通信)

 報道によりますと、中国では抗生物質の乱用で毎年約8万人が死亡し、約800億元(約11兆500億円)の医療費が浪費されていることが指摘されています。抗生物質のなかには、海外では安全性に問題があることから使用禁止となっているのにもかかわらず、中国内では広く使用されているものもあるようです。

 抗生物質乱用の理由について、医療水準の低さや投薬による利益獲得があると報道では伝えられています。

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 抗生物質の使用については、日本の消費についても以前から問題視されています。例えば、抗生物質の世界の消費量の約4分の1が日本で使われていると言われています。また、抗インフルエンザ薬のタミフルの70%は日本で消費されているそうです。

 これに対し、他の先進国では、抗生物質の使用は必要最低限に限られ、例えばオランダでは抗生物質は原則として保険適用がなされずに自費の扱いとなるそうです。

 今のところ、今回のニュースのように日本で抗生物質の乱用で大勢が死亡、というようなことはないと思われますが、抗生物質の使用にはもっと慎重になるべきでしょう。

(谷口恭)

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